3rdステージ20:真の力
ハッとなって、目が覚めた。
そこは、封印の間だった。
そして、余裕そうにしている長老が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきている。
「さて、そろそろ身体に刻んでやるとするかのう……躾をな!」
と言って、拳を降り下ろす。
うちは、それを指一本で押さえた。
「なに‼」
そういって長老は、すかさず距離を取った。
うちは、口から血をぺっと、吐き出し。
「さて、これからが本番ですよ……長老」
と言って、拳をパキパキと鳴らす。
さあ、反撃開始だ。
「我の攻撃を指一本で押さえただと!」
「状況説明ありがとうございます……それでは、こちらから攻撃しますよ……」
うちの猛攻が始まる。
激しいスピードで、長老の後ろに回る。
そして、強力な蹴りをヒットさせる。
長老は、油断していたようでそのまま攻撃を受けとめようとした。
しかしながら、それは間違いだった。
長老は受けきれずに、壁に吹き飛ばされた。
封印の間にあった、龍の彫刻にぶつかって、瓦礫とかした。
「あちゃ……やりすぎた……」
と、思わず口から零れてしまった。
瓦礫から飛び出た長老は、目の色が変わっていた。
油断していたときの目から、敵を見るときの威圧感のある目……。
ようやく、敵と認識したようだ。
「ふむ……どうやら、封印が解けたようだな……エン……。 それがお前の本当の力。 本当の実力……」
「臆したか?」
「いやいや、むしろ高揚しておるよ。 沸々と沸き上がるこの感情……久しく感じていなかった、戦闘の雰囲気。 さあ、もっとやるぞ!」
そういって、長老は【炎龍魔法】を発動させる。
うちも同じく【炎龍魔法】を発動させた。
これから行われる戦いは、龍が舞うように。
さながら踊るような戦い。
近接格闘。
激しいスピードと力のぶつかり合い。
その度に、衝撃波が出る。
「はっはっはっ……楽しいぞ、エン‼」
「うちもですよ!」
殴る、蹴る。
激しいぶつかり合い。
魔法による乱舞。
まるで、花火のような美しさ。
しかし、次第に長老の動きが衰え始める。
そして、その身体も……。
「ふむ……どうやら、ここいらで限界のようじゃな……」
そういって長老は、わざとうちの蹴りを受けて、祭壇の方に飛ばされる。
「エンや……」
と、長老は長老の姿に戻っていた。
全盛期の姿から、衰えた姿に。
「生命針……それをお前は求めた……」
「ああ。 うちにはどうしてもそれが必要だ……異世界の友人を助けるためにも……」
「じゃったら、お前……龍族の長になれ」
「は?」
唐突すぎて、あからさまに驚いてしまった。
話が跳躍しすぎていないか?
「待ってくれ。 うちは、生命針は欲しいが、別に長のポジションはいらないよ‼」
「なんともまあ、贅沢な悩みじゃろうか……じゃが、もう無理じゃよ」
「へ?なんで?」
「お前は、最強とまで言われていた全盛期のワシをも凌駕した。 それは、この封印の間におる先代たちも見ておった……それにのう、もう継承の儀は取り澄ませてしまったからのう」
「ふぁ!? え! いつ!?」
「ほら、ワシ最初に祭壇におったじゃろ? あそこで既にな……」
「ふざけんなジジイ‼ なんで、そんなにうちの事をなんでも勝手にするんだよ……」
「若気のいたりじゃろ」
「お前は若者じゃねーだろ!」
はぁ、はぁ……
まったく。
このじいさんは。
勝手になんでもしやがって。
「よしよし、これからはワシの変わりにお前が龍族の長として、この地を守るのじゃよ……」
「ふーん。 分かった。 それで? 生命針は?」
「おお、案ずるな。 生命針は、あそこじゃよ」
と、元長老は祭壇の上にある龍の彫刻を指差す。
よくよく見ると龍の爪には、金色に輝く杖のようなものが光っている。
「あれが……龍族最大の秘宝……生命針。 全てを生み出すことも、全てを壊すことも出来るとされる宝具……扱いには充分に注意するんじゃよ……」
「もちろんだ」
パチン、と指を鳴らすと生命針はうちの手元に来た。
というか、空間魔法を使っただけだ。
実はディルとボルから、少しだが空間魔法を教えてもらっていて。
今は、まだ1つのものや、人しか移動できないがな。
「空間魔法まで……やりおるのう、エン」




