3rdステージ18:龍族の長たる者
なんと言うか、すごく機嫌が悪い。
幼馴染みをこの手で攻撃してしまったことに罪悪感を抱いているようだ。
後味の悪い、虚しい戦いだった。
なにより、ファイより断然強い長老が何故この場において戦わなかったのか……
それが、非常に腹立たしい。
うちの手で幼馴染みを攻撃した。
それは、ある意味で長老の手の上で踊らされていたに過ぎないのではないだろうか?
だとすれば、長老は許せない。
こんなことになんの意味があるのか。
それを問いただすために、うちはある場所に来た。
封印の間。
龍族最大の聖域にして、長老のみが入ることを許される場所。
過去の英知が集まる場所。
うちは、扉を開く。
封印の間に繋がる扉を。
「おお、待っておったぞエン……」
と、長老は祭壇の上に立っていた。
まるで、儀式でも始めるかのような光景に見えた。
「長老……うちは、今非常に怒っています……なので、単刀直入に聞きますよ……生命針はどこですか?」
「そんなものは知らん……」
「しらばっくれるのもいい加減にしろ!くそジジイ……うちは怒ってるって言ったろ? てめぇを半殺しにしてでも聞き出してやる‼」
「はてはて、そう簡単にいくかのう? お前ごときが儂に刃向かうなんて、100年早いわい……どれどれ、仕置きがてら相手してやるかのう……」
「行きます! 炎龍魔法:紅蓮の焔‼」
うちの身体から、炎の妖精を型どったエネルギー体が5体出て来て、長老に向かう。
この魔法は、炎の妖精による乱舞。
つまりは、魔法自身に肉弾戦をさせると言うものだ。
本来ならば、致命的なダメージを与えられるはずだが、長老は息で炎をかき消した。
すなわち、エネルギー体を吹き飛ばした。
「‼ そんなことが出来るのか!?」
うちは驚きを隠せなかった。
こんな意図も簡単に魔法を打ち破るだなんて、翔琉みたいだ。
というか、長老がこんなにも強いなんてことはあまり知らなかった。
「さて……次は、儂の番じゃな……業炎」
突如長老の身体を炎が包んだと思ったら、長老の身はどんどん若返っていく。
そして、数秒後には長老が全盛期とされていた30代の身体になっていた。
「業炎……龍族に伝わる秘伝魔法。 肉体を若返らせる魔法……これで、儂は……否、我は本気で戦える。 さあて、久しぶりに本気を出すんだ……持ちこたえろよ? エン」
そういって近くの岩に向かって軽く腕を降り下ろす長老。
その瞬間、岩は綺麗に真っ二つに割れた。
なんつー威力だよ……。
「これは、これは……本気で挑まないと勝てないね……」
うちは、いつも以上に緊張していた。
同時に高揚もしていた。
平和になっていた最近、そしてオールドアの解析による長時間のデータ整理など、本気で身体を動かす機会なんてあまり無かったからな。
「さあ、かかってきなさいエン……我が久しぶりに稽古をつけてやろう……そして、躾もな」
長老のこの台詞を合図に、戦いの幕は開けられたのだった……。




