1stステージ12:心温かい
この後2時間くらいずっと風呂にいた。
悪魔達に監禁された、といっても過言ではない。
ひたすら口説いてくるリュウと、俺の身体をじっと見ているディル。
目が赤く光り元の姿に戻って、女性陣を完全に警戒しているライ。
一歩間違えれば、戦闘に発展してしまいそうな空間である。
こんな状態が2時間も続いたのだ。
風呂場で安らぐ予定が、全然安らげなかった。
ようやく風呂場から出ることができた。
監禁されていた状態から、ようやく解放されたのだ――――
風呂場から上がり、着替えているとロリライが
「翔琉! 俺、牛乳飲みたい!」
と言い始めた。
風呂上がりの定番である牛乳を進めてくるあたり、この世界の人も風呂上がりには、牛乳とか、コーヒー牛乳とか、フルーツ牛乳とかを飲むのだろうか?
「いいね―――あ、でも俺お金持ってないや」
「じゃあ、俺がおごるから一緒に飲もうよ―――」
おごってくれるというのでせっかくだからもらっておこう。
浴衣に着替え、番台のおばちゃん(種族は妖精?)に金を払い、牛乳を2本貰い、そして俺はそれを1つ、一気飲みした。
腰に手を当てて、よく漫画とかで見るポーズをとって――――
しばらくして、女子2人が風呂から出てきた。
「ああ、気持ちよかったねディル、あのエステ最高だったね」
「うん。 身体の毒素が全部取り除かれたって感じだね♪―――――あ、翔琉達もう上がってたんだ。 ごめん、待った?」
と俺とライに気が付いたディル達は、こちらに駆け寄ってきた。
よく見れば、2人とも浴衣を着ているのだが、その―――
「2人共、浴衣はだけてるよ―――」
俺はそういって、目をそらした。
2人は慌てて、はだけたところを直して、もういいよ、と声をかけた。
一応、紳士でありたいので、こういった時は目をつむってしまうのが、天野翔琉と言う男なのである。
風呂場で監禁されてしまった時には、きちんと彼女たちはタオルを身体に巻いていたので、特に目をそらす必要はなかったのである(まあ、景色ばかりを見ていたので、あまりディル達を見ていなかったというのが正しい)。
「もう~、翔琉ちゃんったら、エッチね」
「うわーエッチ~」
もう、何というかすっかり仲良しになってしまった2人が若干ウザったくなってきたところで、俺とライは今晩寝る部屋に移動し始めたのであった―――
この温泉にある宿は現在完全貸し切り状態であるので、どの部屋で寝ても問題はないのだが、しかしながら1人で寝るというのも何やら心細い気がするではないか。
どうせなら、みんなで寝た方が楽しい――――という事で、一番高い宿の一番いい部屋に4人まとまって寝ることになった。
ちなみに、この部屋はディルの顔パスで無料になった―――というか、この貸し切り自体もディルのおかげで無料で行ってもらったのである。
どんな事をしたら、こういうことが出来るのか、ぜひ聞いてみたいものである。
その夜の事――――寝る場所で審議が行われた結果、俺は今回一人だけ布団で寝るため畳の上で寝ることになった。
他の人はみんなベットである。
まさかの一人ぼっち……。
一人寂しく眠りへとついたのだが―――――しかし、夜中に目が覚めるとロリライが布団の上、両腕にはディルとリュウが片腕ずつ腕枕にしていた。
結局この状態になるのか――――と思い、少し心が温まりながら、再び眠りについたのであった―――――




