3rdステージ17:女の拳は鋼より強し
「行くわよ!」
ファイはこちらに向かって走ってきた。
そして、飛び蹴りを食らわせてきた。
うちは、それを難なく受け止めたが、彼女の次の攻撃は既に始まっていた。
ガードした腕に、自身の足を絡ませて、そのまま身体をひねり投げ飛ばされてしまった。
なんとか体勢を戻すが、既に彼女は迫っていた。
無情な、かかと落としがうちの頭めがけて降り下ろされる。
とっさに前に飛んでかわす。
彼女の攻撃は既にうちではなく、地面に向かって放たれた。
その一撃は、容易に床に穴を開ける威力だ。
「相変わらずの馬鹿力だな……」
「馬鹿力言うな! 女子力と言え!」
そういって、彼女は勢いつけて飛びかかってくる。
うちは必死にかわすが、猛攻によって次第に壁際に誘導されてしまった。
「食らえ!」
と、彼女は渾身の飛び膝蹴りをしてきたが、うちはそのまんま彼女の攻撃をいなした。
結果、彼女の膝は壁に大きくめり込んだ。
しかし、彼女の膝は折れることなく、むしろ壁をへし折ってしまった。
大きな穴がぽかりと出来ている。
「怖いな……」
と、思わず溢してしまうほどの威力だ。
ファイは、穴からひょこりと出て来てにこやかに笑う。
「あんた、さっきから避けてばっかりだけど……さては、肉弾戦弱いな……所詮は魔法タイプ。 肉体の戦闘では、どうやら分がありそうね」
「いやいや、様子見てるんだよ。 どういう戦闘なのかってのを、観察してるだけだよ」
「ふん、負け惜しみもいいところね……それじゃ、そろそろひれ伏して貰おうかしら‼」
そう言うと彼女の猛攻が再び始まるのだった。
艶やかに、可憐に戦う。
さながら、ダンスでもしているかのように彼女は変則的な攻撃に切り替えた。
先程のような直線的な攻撃では、うちには勝てないと理解したようだ。
その結果、先程のように捌ききれず腹に強力な蹴りの一撃が入った。
「グッ……‼」
と、苦しそうな声が漏れてしまった。
うちはそのまま後ろに飛んで、威力を少し弱めたが、それでも強力なダメージに変わり無かった。
なんともまあ、恐ろしい女だ。
幼馴染みって、こんなにも怖いものなのか?
「いい加減に反撃しなさいよ、臆病者!」
と、彼女は怒鳴り再び猛攻を始めようとした。
流石に頭に来たうちは、反撃することにした。
致し方ない。
「いいよ……もう、キレた……覚悟しろ……」
そういってうちは、向かってきたファイをそのまま後ろに投げ飛ばした。
彼女は壁に激突しそうになったが、なんとか受け身をとる。
しかし、うちの追撃は終わらない。
受け身を取っている彼女に向かって、蹴りを入れた。
流石に予期していなかったようで、そのまま彼女は壁に打ち付けられる。
「がはっ……‼」
と、その場で唾液を溢し、吐いている。
やりすぎたか?
「おい、大丈夫か?」
そう言って近づこうとした時、彼女は手を差し出してこちらに来るな!と言った。
「敵に情けをかけられるなど、戦士にとって恥でしかない!」
と、彼女は蹴られた部分を押さえながら、必死に立ち上がった。
足や手が震えて、とてもじゃないが戦闘出来るのか怪しい状態である。
「それがお前の本気だったのか? ぬるいな、エン……」
「もうやめようぜファイ。 弱いものいじめしてるみたいで気分が悪いんだけど」
「私は弱くない‼私は弱くない‼私は弱くない‼私は弱くないんだぁ‼」
狂気にも感じる台詞を吐き捨て、彼女はボロボロの身体で向かってくる。
痛々しい光景だった。
「ファイ……これで終わりだ、ゆっくり休め……」
そういってうちは、彼女の首筋に一撃を食らわせた。
そして、彼女は意識を失った。
気絶した。
なんというか、後味の悪い勝利だった。




