3rdステージ13:フルートの考察
「以上が、私の知る限りのパラノイヤとヨルヤに関する情報よ……」
ふう……
と、一息ついて彼女はハーブティーを飲む。
すっかり覚めてしまっていたようで、新しいものを店員に注文している。
「そんな協力な2人の怪物が、この世にいるだなんて……イミナはアマギが逃げた檻を見て、その2人の名前を呟いていた……まさかとは思うけどその2人が今回の黒幕?」
私は驚きを隠せていなかった。
ジンライは遊んでいた角砂糖のタワーを崩してしまったし、アニオンの顔からは一筋の汗が流れていた。
2人とも、内心動揺しているようだった。
そんな中でフルートは、冷静に言った。
「いいえ……その2人が黒幕になし得ることは、まず無いでしょう……」
「何故そう言いきれる?」
と、フルートの意見に反論するかごとくアニオンが言った。
「うん、それはね……」
と、フルートはアニオンの意見に答えるべく話を続ける。
「パラノイヤ、ヨルヤ共に神話の時代よりはるか昔の旧世代の童話の登場人物。 まず、この2人が今回の事件の裏にいる可能性が少ないわ……そして、イミナ……この時点で怪しいのは彼ね」
「何故そうなる?」
ジンライは不思議そうにフルートを見つめた。
コホン、と軽く咳払いをしてフルートは話を続けた。
「だって、オールドアの創造主だなんて……聞いたことがない。 オールドアを作ったのはあくまでも始まりの神であるとされてきた。 なにより、ディル。 神立時空図書館には、彼のデータはあったの?」
「あったにはあったけど……読む前に、燃えてしまって……」
「燃えてしまった……それは、人為的な工作じゃないの?」
「それはありえないわよ! あの場所は、絶対的な領域。 神様でさえ侵入出来ないような仕掛けが施されているのよ。 そんなところに、1つの概念であるイミナが入ることなんて出来やしない。 そもそも、あの場所は私の許可がないと立ち入れないわよ」
「ふむ……なるほど」
フルートは目をつぶり考え事をし始めた。
彼女の癖なのかどうかは知らないけど、物事がうまく進まなかったりすると、決まって彼女は目をつぶって考え事をする。
そのあとに出てくるのは、必ず正攻法ではなく、裏からの侵略。
即ちは、奇策が飛び出てくるものだ。
実際、彼女のお陰で勝てた戦いも幾つか存在する。
天野翔琉いない今は、彼女がこの世界で最も頭のいい人間であることは間違いないだろう。
次の瞬間、彼女は両目を開いた。
どうやら、何か閃いたようだ。
「よし分かった。 とりあえず、例の道具魔法を集めましょう……それでもし、イミナが敵なら戦うまで……。 力で物言わせてやるしかないでしょう♪ 異論は?」
「「「ありません」」」
策何も思い浮かんでなかったみたい。
仕方がない。
いつも通り、成り行きにあるがままに進むしかないようだ。
こうして、私たちは癒しの泉へと向かうことになった。
そこにあるとされる道具魔法を手にするために―――




