3rdステージ8:扉を直すには?
あのメス豚が……。
おっと、口調が荒くなっちゃった。
まったく、最近の私ったらどうしたのかしら。
これも、ロギウスが身体の中に居たときの影響なのかしら?
嫌だわ~。
もう少し、私っておしとやかで、大和撫子的な女の子のはずでしょ?
「イミナさん……翔琉の元に向かって、あのメスクソ豚どもを駆逐したいのですが、扉を修復してもらっても構いませんか?」
完全に野蛮人と化した私は、イミナに詰め寄る。
ジンライも、私ほどではないけど詰め寄っている。
だって、心配だもんね翔琉のこと♪
「分かった!分かったから、1回離れろ! 落ち着け!」
イミナにそう言われたので、私とジンライは深呼吸をして、ようやく落ち着きを取り戻した。
いけないな、感情的になっちゃダメなのに。
ついつい翔琉のことになると、無我夢中になってしまうわ。
これも、大和撫子的な乙女だからかしらね。
「ふぅ……まず、扉を修復するには3つの道具魔法が必要なんだよ」
「3つの道具?」
「如何にも。 まず1つ目は、火山の龍が持つ【生命針】。 2つ目は、古の森にある【時年樹】。 そして最後に、癒しの泉にある【起源泉】。 この3つを揃えて、再びオールドアの前に立つがよい……さすれば、私が扉を修復して君たちを天野翔琉の元へと連れていこう……」
言い終わると同時に、イミナは指をならす。
パチン、と辺り一面に音が響いたと思ったら深い深い霧に私たちは包まれた。
「なにこれ!」
「ちょ……‼」
「イミナさん!!?」
と、私が言うと声が聞こえた。
姿は見えないが、イミナの声だった。
"案ずるでない……お前たちを元の世界に返すだけだ……眠ってる連中もそちらに返そう……では、急いで道具を集めてきてくれ……天野翔琉に危機が迫っている……"
そう聞こえたのを最後に、私の視界は真っ黒になった。
次に目を開けるときは、オールドアの近くの石の柱の近くだった。
「イミナ? あれ?」
目覚めたジンライは、辺りを見回している様子だったけど、もちろんイミナはいなかった。
眠ったままだった4人も無事に目覚めていて、何が起こったのか分からずにいたようだった。
私は立ち上がり、オールドアに触れる。
しかし、なにも起こらない。
イミナの言っていたこと。
それを信じるには、まだ情報が少なすぎる。
平行世界の天野翔琉と、イミナは自分自身で言っていた事を、立証する何かを見つける必要もある。
それに、パラノイヤとヨルヤと言う名前。
私はどこかでこの名前を聞いたことがある。
急いで調べておく必要がある、と直感が言っている。
やることが多過ぎて、パンクしてしまいそうだ。
「……ちょっと、みんな聞いてくれる?」
と言って、私は彼らの元に向かった。
そして、あの時に何が起こったのか……それを彼らに説明した。
精神世界、イミナ=ファルコンという名の扉の創造主、アマギの逃走、天野翔琉の現在と居場所。
そして、イミナ=ファルコンの正体とオールドアの修復方法。
最大なのは、天野翔琉の側に怪しい男女の影があったことだ。
話を聞いている最中でさえ、ライは血走った目をしていた。
よっぽど嫌なんだろうな……翔琉が、自分以外の獣に近寄られるのが。
「……というわけで、扉を直すには3つの道具魔法が必要みたいなのよ」
「なるほどな……」
とボルは頷く。
「……火山の龍が持つ生命針って、やはりうちの故郷なのかな?」
と、龍族のエンは首を傾げている。
確かに、思い当たるのは"あの場所"しか思い当たらない。
地獄炎瑠。
龍族神聖の地にして、かつて暗黒賢者だったころのボルに1度襲われた土地。
「じゃあ、エンは地獄炎瑠に向かって、生命針を探してきてくれる?」
「おお、了解。 早く、翔琉くんに会いたいしな」
そういって、エンは地獄炎瑠に向かって飛んだ。
あそこは龍族のエンだけが行った方が安全だし、安心だろう。
間違ってもボルは連れていけないし……。
「次は、古の森にある時年樹か……この世界最古の森と言えば……」
「地の大魔導士の神殿近くの、迷子森唄だな。 では、そこは我輩とライとトルネの3人で行くとしよう……あの森を攻略するには、闇と雷と風の属性が必要だからな」
そういって、彼等は迷子森唄へと向かい飛んでいった。
「じゃあ、ディル。 最後の癒しの泉には俺たちが行くんだな?」
「そうよ、ジンライ。 でもその前に、フルートのところに行くわよ」
「え? なんで?」
「癒しの泉……そこにかつて居た女に話を聞きにいくのと、フルートに聞きたいことがあるからね……」
私はジンライを自身に寄せて、指をならす。
空間転移魔法を使用。
そして、フルートのいる場所に移動した。
ビックリしたのは、ここがフルートの家ではなくて、別の場所だったことだ。
世界魔法連合本部のある首都【シャインスター】。
そして、本部のある巨城【光神殿】。
その前に私たちは居たのだった。




