3rdステージ6:忌名
「アマギが逃げた!?」
それは私たちにとって、最悪な状況であった。
アマギの目的は"兄によって封じられた肉体を復活させて、完全になること"。
その為には、兄を殺すしかない。
その兄レネンは、現在天野翔琉の魂と一体化している。
つまり、レネンは天野翔琉と同一人物と考えても過言ではない。
なのでアマギは、天野翔琉を殺しに行ったはずた。
自身の肉体を取り戻すために……そして復讐も兼ねて。
「これは非常に不味いことになった……よもやあの封印を破るとは……いや、それにしてもおかしい……」
「何がおかしいんですか?」
「ふむ……まあ、これを見なされ」
と、イミナは檻の熔けた部分を指差している。
一見すると、壊されたというのが正しい。
しかし、気になったのはその熔けている向きだ。
普通、内部から壊したのならば、外側に向かって変形しているはずなのだ。
しかしながら、映像を見る限りでは、外側から内側に向かって熔解している。
「これって……外部から手助けして貰ったってこと?」
「どうやら、そのようだな……しかし、こんなことができるやつなんて、いるのか?」
「どうなんだろう? ねぇ、イミナさん……あなたの意見も……!?」
私がイミナの方を向くと、イミナは目を見開いて映像を見ながらぶつぶつと独り言を述べていた。
「……可能性としては……いやいや、まさかパラノイヤ? いやいや、あいつは昔に滅んだ。 ならば、ヨルヤ? いや、あいつは興味ないことには手を出さないやつだからな……じゃあ、誰が? 考えられる要因としては……」
イミナはぶつぶつと、ひたすら自分の考えを口に出す。
どうやら、考え事が口に出てしまうタイプのようだ。
それにしても、パラノイヤとヨルヤって誰なんだろう?
何処かで聞いたような名前なんだけど、誰だったっけ?
なんか、昔の童話にそんな名前の人物が出てきていたと思ったけど……フルートに聞けば分かるかな?
「イミナさん?」
と、もう一度声をかけるとイミナはハッとしてこちらを向いた。
「すまない、少し考え事をしていた」
「ええ、口に出てたんで分かりましたよ……」
「えへへ、聞かれちゃってたか♪ もう、エッチ♪」
「なぜに!?」
イミナは、明らかに男性だよな?
てか、それより……
「ところでイミナさん、ずっと気になってたことがあるんですけど……」
「む? なに? 私のスリーサイズ?」
「それは、興味ないですけど……イミナさんの顔って、なんで翔琉と同じなんですか?」
「あー、それ? 私の顔が翔琉くんと似てる理由ね……」
そういって、彼は語り始めた。
私の問いに答えるべく、自身の過去を踏まえた物語を……。
"私って、元々科学者やってたんだよね。 それはもう、世界最強最高クラスの天才科学者ってやつ。 でも、ある時に死んでしまってね……1回生き返ったんだけど、また死んじゃった☆ その時にね、始まりの神って、神に【全世界全時間軸に干渉できる扉を作れ】って言われて別の世界別の時間軸にて、死ぬ前と同じ姿で、神として生まれ変わらせられちゃったわけ……それがこの世界だった。 そして、私は言われるがままに扉を作った。 それがオールドアだった。 オールドアができた際に、始まりの神は、私に"概念として扉を守る使命"を与えたんだよね。 始めは断ったよ。 これ以上私に何させるんだよってね。 でもね、始まりの神に、私が概念をしなかった場合のもしもの未来の様子を見せつけられたら、やるしかないって思ったんだ。
もしも、私が概念として役目を全うしなかったら、全世界全時間軸は消滅する……私はここで気がついた。 私は何てものを作ってしまったんだろうってね。 自己責任でもあり、自責の念に囚われた私は、概念として扉を守る使命を全うし始めた。
私は、そこで新たな名前を名乗ることにした。
強くて、格好いい名前。
それがイミナ=ファルコンと言う名前。
本来の私の名前は、天野翔琉……
そう、私は平行世界の天野翔琉なんだよ。
だから、翔琉くんと同じ顔をしているし、同じ気配をしている。
ただ違うのは、ディルちゃんが好きで、ジンライちゃんが愛している天野翔琉とは違うと言うだけ。
つまり、限りなく本人だけど、別の人物ってことだ。
これが真実……これが真相。"




