3rdステージ2:神立時空図書館
私は現在、ボルとジンライを連れて、とある場所へと来ています。
全世界、全時間軸の情報を一手に集めている場所―――――神立時空図書館。
この場所は、一部の神々にしか知られていない唯一無二の場所にして、外界からの干渉は1つを除いて不可能と言う特殊な場所である。
この不可侵にして神聖な場所に入る条件と言うのは、この図書館の司書に許可を得るという事が必要になるのである。
そしてその司書と言うのは私―――――ディルである。
この図書館の司書は代々、時空間魔法を継承された後継者が受け継ぐというのが生業であり、伝統である。
「おい、ディル。 こっちの資料は調べ終わったぞ~次は、どれ調べればいいんだ?」
とボルは、たくさんの資料を抱えながら私の元へと来た。
「えっと……あと、300冊くらいだから、少し休憩してて。 疲れたでしょ?」
「おお、じゃあ少しだけ休ませてもらうぜ」
そういって資料を置いて、近くのソファーに倒れこむように寝てしまった。
無理もない。
ボルはこの図書館に来てから、先ほどの資料を含めた2000冊を数時間で読み切るという、大技をやってのけたのである。
そんだけ本を読んで、情報を蓄積させたら普通は頭がパンクしてしまうものであるのに――――すごい。
流石は、8人の大魔導士の1人である。
あれ?
7人の大魔導士じゃないのかって?
実はあの戦争の後に、ボルは功績を称えられて、新しく大魔導士として世界魔法連合より任命されたのである。
彼は翔琉が帰る前に、彼から光魔法を教わっていたらしく、現在は貴重な”光属性の大魔導士”として活躍をしつつ、もう一人新しく任命された”神魔法の後継者”の指導を行っている。
そして”神魔法の後継者”と言うのは、皆さんご存知、雷の大魔導士ライと異世界の英雄である天野翔琉の息子であるジンライである。
ジンライは、この世界で唯一の”異世界の混血児”である。
この意味することは―――――
「おーいディル。 こっちの本は読み終わったぞ~‼ 俺も休んでいいか? 資料はここに置いておくからな~‼」
そう言って天井までぶつかりそうになるほどの大量の資料を置いて、彼もまた眠りについてしまった。
「やれやれ、翔琉の血縁者は相変わらず凄まじいな……」
不意にそんな声が漏れてしまった。
ジンライがまとめていたのは、約1万冊に及ぶ本のまとめである。
ボルの5倍に及ぶデータ量である。
もしも翔琉がこの作業をやったらどうなるのか、少し見てみたい気がする。
「まあ、流石に翔琉でも、この量を簡単にまとめるのは無理か」
ふう……とため息をつき、資料を置いて私も一休みすることにした。
紅茶を入れて、ひと息ついているところだ。
「今頃みんな何しているのかな?」
紅茶を飲みながら、ふと考えていた。
確か、エンとアニオンとグランは魔の砂漠に眠る古文書探し、フルートとリュウとヒョウはフルートの自宅で異世界の移動の研究、ホルブとトルネとライはオールドアの解析を行っている。
みんな翔琉に会いたいがために必死になって行っていることであろう。
「私たちも頑張らなきゃな……さてと……ん?」
紅茶の入ったカップを置こうと思ったところにあった紙を避けようと持ったのだが、その紙に書いてあることはまさに私たちが調べたいことが書いてあったのだ。
私たちの調べたかった事……それは”オールドアの異変”の原因である。
「やはり……あいつのせいだったのか……あの男……アマギ……」
オールドアの異変の原因は、全知全能の神……否、邪神アマギであった―――――
「やっぱり、あいつのせいで翔琉は変な世界に飛ばされちゃったのか‼」
寝起きのジンライは、寝癖を直しながら言う。
寝起きのくせに良く声が出るな……。
「ふぁ~……それで、どうやればオールドアの故障を直せるんだ? やっぱり、アマギを倒すとかか?」
ボルは大きな欠伸をしている。
まあ、30分くらいしか寝てないからね……
「うーん……現段階では、解決策は見当たってないからね……もう少し、過去の文献について調べてみましょうか?」
「いや、それでは今のと繰り返しになって早急な解決にはならないな」
「もういっそのこと、オールドアを作った人にでも会えれば楽なのにね」
オールドアを作った人と……会う……‼
「それよ‼ ジンライ‼」
私は、がたっと椅子を倒すほどの勢いで立ちあがり、ジンライを指さした。
ジンライは自分の言ったことに気付いていないらしくポカンとしているが、隣にいるボルはどうやら理解ができたようである。
「この図書館には、様々な世界中のデータが蓄積されている。 その中にはもちろん、神様の世界の事情ですら保管されているわ。 ならば、オールドアを作った人物の情報も当然……」
「存在するって事だな‼」
「じゃあ、それが分かれば……」
「後はその人物を、時空間魔法で召喚するだけ‼」
こうして私たちは、オールドアを作った人物について調べ始めたのであった―――――




