2ndステージ62:帰路に佇む少年
長い長い歴史には必ずしも、終わりと言うものが訪れるものである。
例えどんなに長引こうと―――――必ず終わる日は来る。
俺たちは、戦いが終わった後、各町の復興や、後始末に追われていた。
様々な戦いがあって、そのたびに町は破壊されていた。
だからこそ、このままにしておくわけにはいかないと思って、毎日毎日作業を続けていた。
そして約1か月後にはようやく落ち着きを見せた。
「ではレネン様、我は神の社にて、下界を監視する役を全うしたいと思います」
復興後、ロギウスはレネンが開いた、【神の世界】へ通じる門を通って、下界を監視する場所【伏神殿】にて、アマギの代わりに仕事をするために消えていった。
ロギウスの事は、アマギを倒した後に、世界中に真実を伝えた。
【偽りの歴史】に翻弄された人々は、最初は戸惑いを見せたものの、すぐに理解してくれた。
時限亡者たちは、ロギウスの働きによって、魂を浄化されて、転生できるようになったので、あの戦いの後に消滅した。
ロギウス曰く、「全員が元々、アマギの【偽りの歴史】を改竄した事実を知り、【真実の歴史】に戻そうとした者達」だったらしい。
なんともまあ、ご都合主義と言うか、むしろこれまでの話が”出来すぎていて”気味が悪い気もする。
「翔琉‼ 私たちの挙式はいつあげるのでしょうか?」
とヒョウやリュウ、アニオンは最近やけに言いよってくる。
どうやら、ジンライを見ていて、自分の子供が欲しいと思ったらしい。
「翔琉は私のものよ‼」
「あたしのよ‼」
とまあ、復興作業中にも元気に喧嘩していた彼女たち。
それをフルートが威圧して止めるのだが、毎回全員を巻き込んで喧嘩になってしまうのだった―――――
「ほらほら、喧嘩はやめなさい」
といつもきまって、ディルが最終的に止める。
そして喧嘩後には復興作業が続く――――――
まるで、作業を長引かせているように、長く続いていった。
各神殿は、【負の遺産】として、世界に残されることになった。
そして時限城は、【神殺しの場】として、【真実の歴史】として、遺産として未来永劫残るそうで、ディル達”時魔法”を操る一族達が、歴史と共に守っていくそうだ。
そして暗黒教団の面々は、【これまでの悪事】を帳消しにする代わりに、【復興作業】と【神の護衛】を任された。
それはレネンの考えであった。
暗黒教団は元々、【歴史を正そうとした】だけのカルト教団である。
【世界は過ち】ばかりであり、【世界を一度破壊しつくしてリセットさせる】と言うのがどうやらブラッドの目的であったそうだ。
それももはや【真実の神】によって、偽りと過ちは正された。
彼らも、もはや破壊行為はしないだろう――――――
まあ、不安要素であったので、ロギウスは【悪意以外に魔法や攻撃】をできないように、【約束楔】と言う、神の宝具を使って、彼らの魂に制約を付けた。
これでいよいよ、この世界は平和になったようだ。
これでもう―――――俺は元の世界に戻っても大丈夫だろう――――――
復興作業にも収集がついて、約1か月後――――――俺は、元いた世界へ帰ることになった。
全ての始まりは、理科室の爆発だった。
今思えば、あの出来事はアマギが俺を殺そうとした出来事で、ディルがそれを救ってくれたのではないか? と言う風にまで考えてしまう。
長い長い”全知全能の神”による、悪政は終わりをつげ、世界は安泰となるのだろう。
そして俺は元いた世界へ戻って、元のように学生をして、元いたように実験して―――――――そして人生は終わり、また魂の転生が繰り返されるんだろうな――――――
【オールドア】の前で、最後の別れを告げている。
「じゃあ、俺……元いた世界へ戻るね」
あっさりしたもの言いに、不満をあらわにしている仲間たち。
そしてジンライは駄々をいまだにこねている。
「嫌だ! 翔琉ママと、一緒がいい‼」
容姿は大人と変わらないけど、心は幼いままだった。
ライはぐっとこらえてジンライを抑えているのが伺える。
みんな見送りには、涙を流さない―――――旅立ちや別れは永遠ではない事を、みんなは知っているからだ。
いつかまた必ず会える―――――そう信じて、見送る。
「翔琉―――――【オールドア】に時間魔法をかけておいて、元いた時代、元いた場所に帰れるようにしたから―――――あとね……」
とディルは涙目になりながら続ける――――
「もしも……もしもだよ。 元の世界へ帰っても、こっちの世界へ戻ってきたかったら――――――忘れないでね。 この言葉を、強く念じて唱えてね」
とこっそり”ある言葉”を教えてくれた。
そしてみんなは扉の前で見送り、定番のあの言葉を言う――――――
「またね」
俺は軽くうなずいて、笑顔で扉をくぐった。
こうして、俺のこの世界における長い長い戦いは幕を迎えたのだった。
またいずれ会う時が来るだろう。
案外それはすぐに起こることかもしれない。
でも、そのことはまだ俺は知らないだろう。
何故ならば、この時【元いた世界】が、あんなことになっているなんて知らなかったからだ。




