2ndステージ60:夜明け
まさにその瞬間だった。
俺がこもっている黒い球体が割れて、俺は、アマギの放った球体を弾いた。
弾いた先の山が粉々に砕けたのをみて、思わずゾッとした。
アマギは全く驚かずに、平然と笑顔だった。
「やあ、天野翔琉という実験体くん」
そういうアマギをよそに、俺はみんなの元に駆け寄る。
「みんな大丈夫か?」
そういうと、4人は涙を流す。
"いつもの翔琉だ――――"
そう4人は思った。
そしてアマデウスは、翔琉に近寄り言う。
「翔琉―――――ロギウスはどうしたんだ?」
「ロギウスは今、俺の精神世界でアマギが倒されるのを待っているよ。 あの神話はやっぱり、偽りの物語……つまりは、【偽りの歴史】だった。 アマギによって書き換えられた、歴史改竄後の物語だったんだ。 それを俺はある人物から教えてもらった……事件の当事者にね」
と俺が言い終わると、俺の身体からレネンが飛び出てきた。
「やあ、アマデウス。 久方ぶり~元気してた?」
「え? えええ!!!? レネン! なんで翔琉の体内に?」
「なーんだ、やっぱり知らなかったのか。 私は翔琉の中で”煉”として存在していたんだよ」
「え!!? …………あ……今思えば、あんなチートな能力持ってるのって、お前かアマギくらいだもんな……考えればなるほどって思うわ……てか、お前親友の僕に黙っておくってどういう了見だよ‼」
「ごめん、ごめん。 全ては、あの愚弟のせいさ」
そうレネンが言い終わると、徐にレネンはアマギを見つめていた。
眼の先のアマギは、レネンを見つめ涙していた。
「兄さん―――――無事だったんだね。 よかったよかった、心配してたんだよ、もう一人にしないっていったくせにぃ♪ 死ねよ♪」
「何が良かっただよ。 お前、私を殺したじゃないか……それにどうやら、お前の心は結局あの時から改心してないようだな……決めたよ。 お前を倒すわ」
「倒す? この僕を? 笑える冗談だね。 兄さんをここで完全に殺せば、僕の肉体は封印から解けるんだ。 だから、天野翔琉ごと兄さんを殺してやるよ」
「ふう―――――全く……翔琉! やるぞ」
そういってレネンは俺の中へと戻って行った。
「お前が兄さんを―――――あの時やはり、因果がゆがんだのは兄さんのせいか。 お前は本来死ぬ予定だった。 それなのに、それなのに、兄さんをたぶらかして、挙句の果てに僕を倒すだって? 冗談は休み休みいいなよ。 ガキの分際で、実験体の分際で、僕に逆らうなんて―――――許さない!」
「御託は言い―――――俺は決めたんだ。 夢を追い求め、自分自身の人生を歩むためにも、今日ここでお前を倒す!」
アマデウス!
といって、俺は神魔法を発動させる。
しかし、今2人の神の力を得た神魔法はこれまでの物とは明らかに違った。
「力が――――――みなぎる!」
そして、精神世界にいる【真実の神】となったロギウスを含めて、今3人の神様の力を俺は持っている。
神の魔法……創造の神……真実の神――――――
俺を包む光が、七色に輝く。
その光は、太陽の周りを回る惑星のように、俺の周囲を回転しながら回っている。
そして、背中から生えた翼は神々しく輝いている。
「これぞまさに、究極神魔法‼」
そう俺が言うと、アマギは鼻で笑う。
「究極神魔法? なにそれ、中2病かよ」
「中2病で何が悪い? 本来ならば俺は現役の中学2年せいだぞ。 中2病で当り前だろう」
「胸糞悪いから―――――まとめて死んでね」
アマギは黒い球体を無数、俺の周りに張り巡らせる。
「死神魔法:言霊。 その球体に触れた生物は、命を吸い取られる―――――これで一歩も動けまい」
「甘いな……究極神魔法:命之始」
そういうと、黒い球体の近くに光が現れたと思ったら、球体と衝突し消滅した。
「なんだ? その力は!」
「命之始は、生命エネルギーを増やす魔法。 つまりは、お前の魔法の対極の物だ。 プラスマイナスゼロと言うことだよ――――――全知全能の神のくせして、何も知らないの?」
「うるさい! 実験材料が‼ 僕に口答えしていいなんて言ってない‼」
「口答えしちゃダメだって言われたことも無かったはずだけど?―――――」
「うるさい! 黙れ! 兄を復活させた後に完全に殺して、肉体を取り戻す予定だったが、お前の魂と兄の魂がほぼ融合してしまっているのならば、話は簡単だ。 お前を殺せば兄も殺せる。 そうすれば、こんな実験材料の身体なんかに宿らずとも、本来の身体に宿れば、貴様なんぞ、赤子の手をひねるように倒せるに決まっている‼」
「負け惜しみなんて、情けないね――――――それに、大人が赤子を虐めるとか、幼児虐待で捕まるぜ」
「黙れ! 虫けら!」
しかしながらこの挑発行為すら、アマギにとっては策略の1つだった。
こうしてわざと負けて、隙をついて天野翔琉ごと兄を殺す――――――と言うことをきっとたくらんでいると俺は予想していた。
全知全能の神に創造の神が負けた理由は、油断と知恵の浅いことが起因していた。
つまり、俺という知恵を手に入れ、ロギウスと言う油断のない男が、レネンの手中にあるわけなのだから、今度こそアマギの狂った事を止めさせられるかもしれない。
――――――と言う風に、レネンは俺の心の中で考えている。
だがすまない。
あいつが改心したり、狂ったのを止めるということは決してないと思う。
それはこれまでの行動から考えれば、改心できないことが明白である。
生物を生み出しておいて、愛を持たずに、ただただ実験材料としか思っていない奴にまともな心は無いからだ。
レネンは心は育むもの、と前に言っていたが、俺にはもうあいつにはそんな余裕すらないと思う。
【殺して肉体を取り戻す】という考えを【謝って肉体の封印を解いてもらう】という考えに至ってない時点で、改心なんか絶対しないと思う。
「全知全能の神:アマギ。 お前の野望も、何もかも――――――ここで終わらせさせて貰う‼」




