2ndステージ59:闇の始まり
現実世界。
といっても、天野翔琉の精神世界から出た場所なので、今は時限城である。
黒い球体を背にしながら戦う、大魔導士たち。
それをあしらうごとく、圧倒的な力を見せつけるのは、全知全能の神アマギ。
彼は現在、メイオウの肉体に宿る亡霊のようなものである。
本来、メイオウは既に死人であるため、肉体を有しない。
しかしながら、全知全能の神の策略によって、メイオウはアマギの作った【限りなく肉体に近い肉体】に宿る事によって、力を増大させていたのだ。
しかしながら、この道具には副作用がある。
それは、使用者の魂1個分を還元して、【普通の肉体】にすることができる能力があった。
メイオウは、それを知らずに使用していた。
その結果どうなったか……メイオウは、生け贄の如くその魂は消化され、浄化された。
魂なくした肉体に、アマギは我が物顔で宿った。
その結果が今である。
本来の肉体ではないので、半分ほどしか力を出せないのが難点だが、それでもここまで圧倒的な力の差が出るものなのだ。
「その程度かい?」
アマギの強力な攻撃の前に、ディル達は神魔法を持ってしてでもなすすべがなかった。
全員ボロボロなうえ、体力・気力ともに限界をむかえていた。
「はあ……はあ……さすがに……神話の神様を相手となると……はあ……はあ……辛いわね」
リュウは愚痴交じりに、言葉をこぼす。
フルートはリュウを支えながら
「ですね……はあ……はあ……しんどい」
といい、全員の様子に目をやる。
しかし、もはや気力も限界の彼女にとっては、周りを見る事しかできないほどに、なっている。
そして、中央にある黒い球体はいまだに、破られない。
「はあ……はあ……もう、だめ……」
そういってフルートはその場に倒れてしまった。
それを気に、トルネやエン、ヒョウやアニオン、ホルブも倒れていった。
そして、立ちあがっているのはリュウとジンライとディルとライの4人だけになってしまった。
「あんたなんかに……翔琉は……殺させないわよ……」
ディルがアマギににらみを利かせるが、しかし彼は笑っている。
「憐れ――――――やはり人などと言うものは、知識はあっても、完全な答えを導くには足りぬ存在か……どれもこれも、同じような結末を迎えるのか……嘆かわしいな。 否、ここまで来ると、いとおしくなる。 ああ、これが愛と言う奴なのか?」
そういいながら、1人で笑い続けている。
ジンライの中からアマデウスが飛び出し、ジンライに言う。
「ジンライよ。 今から僕が、あいつに向かって光の魔法:神之憤怒を全力で放つ。 だから他の者と協力して一瞬でいいから、隙を作ってくれ!」
「分かった!」
ジンライはリュウ・ディル・ライにその旨を伝えて、アマギに立ち向かう。
「何度来ようと無駄だよ」
と言って、アマギは4人を軽くあしらう。
「いまだ! 食らえ!神之憤怒!」
そういって放たれた巨大な光は、アマギを包み込み巨大な衝撃波を生んだ。
結果、時限城は破壊された。
全員吹き飛んだかに見えたが、ジンライたちの張った強力な結界のおかげで、ジンライたちのいる場所だけは吹き飛ばなかった。
「やったか?」
と一同は土煙の中を見るものの、残念ながらアマギに手傷を負わせた程度だった。
「やるね、アマデウス。 流石は兄の友よ。 だが所詮、この程度。 だが、褒めてやろう。 なんせ私に傷を負わせた個体なんて、稀だからね――――――」
アマデウスは愕然としていた。
自分自身の最高の力で放った攻撃が、手傷程度――――――
「打つ手はないのか……」
あきらめている。
もう希望はない―――――
「安心して、一撃で楽にしてあげるから―――――」
そういってアマギは黒い球体を出現させた。
それを勢いよく、アマデウスたちの方へ投げつけこういった
「死ね―――――」
無情で無慈悲な神の攻撃が、ジンライたちに向かって放たれたのだった……




