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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第7章-氷の乙女と最後の魂記憶-
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2ndステージ54:成仏する氷

 氷の中から出てきた女性―――――ヒョウは、その場に倒れてしまった。

 しばらく凍結封印していたため、外界の空気には久方ぶりであったのだろう。

 その場に倒れこんでしまった彼女の元に、彼の実の兄であるコールドは駆け寄り、そのまま抱きかかえる。


「おい、相変わらず寝坊助なのは変わらないのか?」


 そう彼が声をかけると、眠りから目覚めたばかりの彼女は静かに口を開く。


「全く……何が、寝坊助よ……突然私の前から……姿を消したくせに……おかげで一族は……私一人になってしまったのよ……」

「済まないな……我が妹ヒョウよ……。我は先の戦にて、闇に囚われてしまっていてな……洗脳されかけたが、父上の魂が救ってくれた。以来、奴らの傀儡の振りをして、隙を狙っていたのだ。そして、ようやく願いが達成された。 もう一度妹に会いたかったのだ。 よもやその目的が達成された今、この世にもう用はない」


 そういうと、コールドの身体は徐々にだが、光となって消えていく―――――


「やはり……ロギウスの魔法と闇の魔法で無理矢理現世に魂を留めておいたんだね」


 そういうリュウに対して、コールドは言う。


「すまぬな。 だが、お前の願いは聞き入れた。 お前の記憶に、欲しがっていた情報――――時限城への侵入経路と王の間へまでの地図を送っておいたぞ。 まあ、あともう一つできることと言えば……」


 そういいながら、コールドは消えかけた手をヒョウの頭にのせて、光を注ぎ込む。


「これで……我が一族に伝わる最強の秘伝魔法、そして氷の魔法の真の究極魔法、絶対零度滅(ふかしんどう)を継承した。 そして天野翔琉よ、主に一つだけ、言っておきたいことがある」

「はい、何でしょうか?」

「妹泣かせたら殺すから、大事に大事に本当に大事にしろよ」


 ものすごい顔で睨めつけられた。

 そして、コールドは消えていった。

 死の世界。

 違う世界へと旅立ったのだ。


「ありがとう、そしてまたね。 お兄ちゃん」


 ヒョウは空を見上げて、涙を流し、兄の最期を見届けた。

 そして、立ち上がり彼女は言う。


「じゃあ、待たせたねみんな」


 その表情は笑顔だった――――



 氷の大魔導士の神殿の奥に眠っていた魂記憶。

 そしてこれまで集めた魂記憶は、光の神殿を除いて全部そろった。

 闇の魂記憶は失われたと思っていたが、実はホルブのマントの中に縫い付けられていた。

どうやら、ホルブは縫い付けてあったことを忘れていたらしい。

 光の魂記憶を手に入れる方法はいくつか策として練っていたのだが、ここで思わぬ、否嬉しい誤算があった。

 それは氷の中に、光の魂記憶があったということだ。

 それはどうやらコールドが仕組んでいたようだ。

 彼女の氷魔法の上から、更に別の魔法を重ねていたらしい。

 そしてその魔法が解かれるのと、コールドの死が連動して出現する仕組みになっていたようだ。

 これで全ての魂記憶がそろったわけだ……

光の大魔導士の神殿には行かなくてよさそうだ。

なんか、出番無くなった人いるかも知れないけど……ドンマイ♪


「これで、ロギウスを倒せる―――――」


 全員の心はこれで統一されていた。

 そして、魂記憶が全て揃った瞬間、書物は一つになり、中からデイが現れた。


「やあ、皆さん。 こんばんわ。 この書物が揃えられたということは、いよいよその時が来たようだね。 まずはおめでとうと言わせてもらいます」


 ん?

 いつもならふざけるのに……さすがに全部そろうとふざけないのか?


「さてと―――――じゃあ、お教えいたします。 ロギウスを消し去る究極魔法:神之箱(かみのはこ)。 かつて異世界ではパンドラの箱と言うものがあったと聞くけど、今回はそのパンドラの箱を作ってしまうという魔法だ。 この魔法には各属性の魔導士が8つの陣形を組んで、相手を中心にて封印すると言うものだ。 ただし、この魔法には代償がある。 それは光属性の魔法使いの、この世界での記憶をすべて奪ってしまうことだ。 私もこれから、この魔法を使い、記憶を完全に失ってしまうだろう。 だからこそ、慎重に選ぶがいい。 お前らの中の一人は必ず記憶を失う。 これまでの全ての出来事を忘れてしまう、決断するのは今だろう」


 そういい終わると書物は焼き消えて灰になった。

 全員が息をのみ、その場に立ち尽くしていた。

 つまり、光属性の使い手、つまりはここにいる中で、封印を担当することになる光属性の魔法使いは全ての記憶を失う。

 これまでの旅や思いで、思想、感情、過去、現在を――――――

 全て奪われてしまうのだ。



「俺がやるよ」


 その声を上げたのは他でもなく、俺―――――天野翔琉であった。

 記憶を忘れるということは、つまり異世界(俺の世界)の記憶がある俺には、ここで起きたことだけを忘れてしまうだけなのだから。


「そんなのダメだ!」


 そう言い放つのは、ライだった。

 そして、ボルやジンライ、ヒョウ、ホルブ、エン、リュウ、トルネ、ディル、フルート、アニオンも同じく、そういってくれた。

 だけど俺はもう決意したことだと言って、みんなの意見を退けた。


「悪いね、みんな。俺はこの世界の人間じゃないけど、みんなと仲良くできて、友達になれて幸せだった。 だから、俺が記憶を無くしてみんなの事を忘れても、みんなは俺の事を覚えていてくれればいいんだ」


 そういって俺は、時限城へと向かって歩み始めた。

 その覚悟を受けてか、全員が時限城へ向かって歩んでいた。

 外の吹雪はすっかり止んでいて、俺は空を見上げている。

 これが最後の戦いになるだろう。

 そして、この世界の記憶は失ってしまうんだな。

俺の旅の終わりも近い……



~いっぽう其の頃~


 謎の男は隠匿森へ来ていた。

 そしてその隠されていたフードを取り、椅子に座り、手に持っていた結晶を取り出し眺めている。

 その結晶が大きくなったと思いきや、中には鎖で縛られているアマデウスがいた。

 アマデウスは男の顔を見て驚いた表情をしていた。


「お前……何故生きている!」


 そういうと、男は声を発する。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■?」

「やはり、その言葉……間違いないな。 目的は何だ?」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「そうか。 その男は今のお前の?」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「なるほど、やっぱり昔から姑息だな」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!?」

「一つ言っておくけど、翔琉に手を出すなよ、お前の目的は……」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

「だろうな。 やはり、復讐か?」

「……その通りだ」


 じゃあな、と結晶は収縮して、元の大きさに戻った。

 そして男は言う。


「待っているがいい……いずれ―――――」

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