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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第7章-氷の乙女と最後の魂記憶-
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2ndステージ53:氷の中には乙女がいる

 7人の大魔導士は残り1人で全員そろう。

 戦力的にそれで、ロギウスを倒してディルの肉体を奪い返すことができる算段である。

 隠匿森を後にした俺たちが向かっているのは、ヒョウのいる氷の大魔導士の神殿のある禁氷壁(デッドアイスウォール)に向かっている。

 この土地では、生物の成長すら止めてしまうほどの強力な氷の魔法を操る生物がいるという風に伝承されてきたらしい。

 だが実際にやってきて分かったのは、その伝承は嘘で、実際は自然そのものが、強力な氷の魔法を使っているようだった。

 目の前に広がるのは、銀世界。

 そして、猛吹雪。

 雨の境目のように、明確に吹雪の境目がある。

 それも目にくっきりと見えるレベルで――――


「寒いんですけど!」


 そういって身体を震わせているリュウは露出度の高い服を着ているので余計に寒いのだろう。

 じゃあ、露出度の低い服を着ればいいじゃないか!

 と言ったのだが、リュウ曰く”乙女のファッションに寒さは関係ない!”と言い張る。

 女子の服装は男性が思っているほど単純ではないということが思い知らされた。


「じゃあ、恒例のごとく魔法をかけてあげるね。 負極魔法:某寒愚(ぼうかんぐ)。 氷に対する技や効果をゼロにした」


 アニオンが魔法をかけた直後から、吹雪は更に強くなった。

 だけど、アニオンの魔法のおかげで、氷属性の攻撃は完全無効状態であるので、先ほどまで寒がっていたリュウですら。


「寒くない! 行ける!」


 と、露出度の高い服のまま、吹雪の中でかけ回っている。

 犬かよ。

 みんなが神殿の方へと向かっていく中で、俺はふと考え事をしていた。


「……」


 思いつめた顔をしているようだったらしく、ボルが大丈夫か? と声をかけてきた。


「何か心配事があるのか?」

「うん……さらわれたアマデウスの事と、あの謎の青年Xの事がね……」

「その青年は何者なんだろうな? ポセイドンを瞬殺したんだろ?」

「うん。 そして油断していたとはいえ、神魔法を使っていた俺を打ち破ったんだよな」

「普通に考えたらそんなことができるのは、神魔法以上の魔法を使えるものだけだよな」


 ボルは頭をかきながら、俺と同じように考え始める。

 このまま、考えがまとまらないうちに、神殿の入口にたどり着いてしまった。

 しかし神殿内部への侵入は、頑丈な氷の壁によって拒まれてしまっている。


「さてさてっと――――」


 そういいながらフルートはある書物を取り出す。

 タイトルは、解除魔法大全集秘匿編という物。

 そんなものを普段から持ち歩いているなんてすごいな。

 だって秘匿ってついているからには、厳重に保管されているものじゃないか?

 そんな風に思っていたのだが、よくよく見ると、飲み物をこぼした痕が見えた。

 え?

 そんな扱いしても大丈夫な本なの?


「コホン! 翔琉くん、色々考えてるみたいだけど、そろそろ話を進めていいかな?」


 とフルートが本を読み終えて、こちらを見ていた。

 え?

 もう読み終わったの?

 広辞苑の2倍ぐらいの厚さだよ?


「簡潔に述べるのならば、この扉を開くには8属性の力と、魔法を持たざる者の一声が必要と言うことになるわ」


 そういってフルートは、扉の近くの石碑に手を触れる。

 すると、中央の広場から9つの台座が出現した。

 そして各台座には、属性の紋章がある。

 どうやら、その属性にあった場所で各属性の魔法を使えばいいらしい。


「そして、魔法を持たざる者……つまりは、現在魔法が使えない翔琉くんが中央の位置にある台座の上で、あるセリフを言えば扉は開かれるわ」

「え? 俺はじゃあ、中央の台座でなんて言えばいいんだ?」


 そうフルートに聞くと、フルートは俺のそばによって耳元である言葉をささやいた。

 その言葉とは……

 ……

 ……

 ……‼

 このセリフを言わなくてはならないのか!!!!

 俺がフルートからセリフを聞いている間に、みんなは定位置についていた。

 各属性の強い使い手。

 氷属性はアニオンが担当する様だ。


「じゃあ、みんな魔法をその場で使用して!」


 そうフルートがいい、合図すると台座が各魔法に併せた色に輝きだす。

 そして俺は中央の台座にのぼり、例のセリフを小声で言う。


「…………」


 すると扉はすさまじい音を立てて、開いた。

 やった、開けられた。

 しかしながら俺はすごく恥ずかしい気分である。

 なぜかというと、言ったセリフがとても恥ずかしいものだったからだ。


「翔琉、ばっちり聞こえたぜ!」


 そういってこちらに手を振るライに、軽くいらだっていた。

 そしてボルとジンライも、聞こえていたらしいが、ライのようにデリカシーのないことはせず、後でこっそりと教えてくれた。

 あーあ。

 いろんな人に聞かれてしまったな。

 ははは~

苦笑気味なのである。


「ねぇ? 何て言ってたの?」


と女性陣(フルート以外)が詰め寄ってきて聞き迫る。

やれやれ、そんなこと


「秘密!」


しーっと言う指を口の前に突き立てるポーズをやって、早々に神殿へと入っていく。

ちなみに、あとでフルートがばらしてしまったのだが、先程いった台詞とは


「開けてくださいませご主人たま!」


という、現代でも聞く機会がないくらい、恥ずかしい台詞なのだった。

これ考えたやつあとで見つけていっぱつ殴らせろ!



 神殿内部はとても冷え切っていて、中央には巨大な氷の柱があった。

 そしてその中には、ヒョウがいた。

 氷の中にひた静かに眠る女性……そして、そのそばには1人の男が立っていた。

 そして男がこちらをにらむと、辺りは余計に凍えた。

 それもそのはず、壁や床に至るまですべてが凍てついていたのだ。


「君たちは何者なんだい? 人の妹の居城にずかずかと入り込んでさ――――――いや、もしかして君が……否、君たちがロギウスに歯向かっているって言う連中かい?」


 そういいながらこちらに歩み寄ってくる。

 妹?

 さっきこの男、妹の居城って言ったよな?


「あなたはもしかして……」


 とリュウはつぶやきかけるがすぐに、いいえそんなはずは、と話を止めてしまう。


「リュウ? 何か知っているのか?」


 そう俺が尋ねると、リュウは先ほど言いかけたセリフを言う。


「あの人は、コールド。 初代氷の大魔導士にして、氷使い最強の称号【絶対零度魔導士(ダイヤモンドフリーズ)】を与えられた男。そして、ヒョウの兄よ。 でも、たしか50年ほど前に、行方不明になったと聞いていたわ。 それがなぜ?」


 そうリュウが言うと、彼―――――コールドは語りはじめる。

 自身の忌まわしき過去を……


 ”そうさな……君らの前には本来俺と言う存在はいない。 何故ならば、すでに死人だからな。 だがこうして生きて歩いているのは何故だと思う? あのロギウスとか言う奴とシャドウとか言う奴に蘇らせられてしまったんだよ。そして洗脳を受けて、最近までは意識すらない人形同然だった。

 でもね、突然洗脳が解けたんだよ。洗脳をかけていたシャドウが死んだか、消えたんだと思った。

 そしてどうやらその通りだった。

 俺は、急いで妹の元へと向かった。

 この世にいる中で唯一の肉親だった彼女にもう一度会って成仏しようと思ったんだが……俺がついた時にはすでに氷の中に彼女は眠りについていた。

 そして近くにあった石碑に血文字で、彼女の字でこう書いてあったんだ。

 「世界は闇に閉ざされた。 光が現れるまで傀儡になるつもりなどない。 そのために氷の魔法の究極の封印術である氷劫結晶(ひょうさいけっしょう)を自分自身にかけることにした。 この魔法を解けるのは光のみ……その時まで眠る……」

 そう、おそらく光とは君たちの事だろうね。

 だから頼みがある。

 君たちには一切手出ししない。

 そして危害を加えるつもりもない。

 だから頼む……妹と……もう一度だけ話をするチャンスをくれ”


 頼む、とコールドは深々と頭を下げた。

 そして辺り一面を覆っていた氷を溶かした。

 これは魔法を解いたと同義であり、完全に戦意は無いということを表している。


「分かったわ。 その代り、こちらも条件を付けさせてもらうわ」


 とリュウはコールドに言う。

 その条件とはーーーーー



「わかった。 了承しよう。 その条件を飲もう。 それで妹と再び話ができるのなら……」


そういってコールドは条件を承諾した。

氷の魔法究極とまで言われる封印術を解除するには、ヒョウは十分なまでに情報をくれていた。

この場合の光とは、神魔法のことであろう。

そして、光属性の魔法には様々な種類の魔法が存在する。

その中には魔法を強制的に拒否(キャンセル)させる魔法も存在する。 絶対魔法拒否(マジックキャンセラー)という種類で、光属性のみに存在する種類。

そして、発動には莫大な年月と力を要するらしい……

だが、神魔法を用いれば時の魔法と併用して、その長い年月を刹那なほどにまで早めることができる。そして、力に関しては申し分ないほどの出力を発揮できる。

これぞまさしく神魔法だけに許された特権。

先の戦闘にて使用していれば良かったのではないか?と思うが、相手も神魔法を用いてる以上使用するわけにもいかない。そして、この魔法の唯一の欠点は魔法の効果が広範囲におよんでしまうという事であるので、戦闘中は基本的に使えない。

もし使えば、周りの魔法使いが魔法を使うことが出来ない。

それはすなわち、敗北を自ら手繰り寄せてしまうことも当然だろう。

だからこそ、こういう封印を解く場合にしか使えないのだ。


「じゃあ、ジンライ。あとはよろしくね」


俺がそういうと、ジンライは光の神魔法を発動させる。

そして、氷に手を触れて魔法を呟く。


「光の魔法:逆位相(はんかいてん)


その瞬間、氷は夥しい光を放ち砕け散ったのだった……。

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