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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ファントムソウル編:第7章-氷の乙女と最後の魂記憶-
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2ndステージ50:夢の中で

結果的に町の住人たちや、仲間たちは救われた。

それもこれも、仲間や急成長した息子であるジンライが頑張ってくれたおかげである。

 そしていよいよ残る1人である、氷の大魔導士ヒョウを救い、時限城のロギウスを倒せば、めでたしめでたし、といった感じである。

 だが、冒険というのは必ずしも、簡潔ですんなり、というわけにはいかないことが多いことがあるのを、俺は知っている。

 先の戦いにおいて現れた、謎の青年。

 表記が長いので、無難にXという風に表しておこう(実に数学的な表記だ)。

 このXの正体は、俺は知っている気がする。

 というか、たぶんあいつだろうという推測は立ててある。

 俺が次に目覚めたときに仲間たちには、そのXの存在について議論しようと思う。

 今俺は、まさに夢の世界を漂っている状態といっても過言ではない。

 あの戦闘の直後、俺は意識を失った。

 正確には過度な疲労と精神的ダメージの影響で、眠りについてしまった。

 体感時間にして3日ほど経過したような気がする。

 この3日間何をしているかといえば、魔法の力の源の復元をできるかどうかを試している。

 あの時Xに消されてしまったから、ぜんぜんといっていいほど魔法の力が使えない。

 そして、神魔法の化身アマデウスを奪われた以上、神魔法は使えない。

 依然使えたのは、アマデウスと密接にかかわっていた俺自身の魔法の力の源(ぶっちゃけいえば魔力)があったからこそ、弱弱しいものではあるものの、使用することができたのだ。

 今は、自分で言うのもなんだが、少し頭の良い人間の子供というのが俺である。

 この先の戦いには俺は直接参加できるなんてことはあるのだろうか?

 とまあ、こんな感じに悩んでいると、あいつがさっそうと現れて俺を殴った。

 夢の世界で直接攻撃ができる奴といえば、俺と同じ精神世界にいるもの―――つまりは、もう一つの人格ということになる。

 そう、殴ったやつとは煉である。


「まったく、おまえってやつは面倒くさい性格してやがるな! そんな自分自身の悩みに押しつぶされるほど、本当はやわじゃねーだろ? ああ、やわだから俺様に? わたくし様に? 僕ちんに? いやなことを押し付けているんだっけ?」


 まったく面倒くさいやつが来てしまったな……と考えると再び殴られてしまった。


「おまえ頭いいの? それともバカ? ここは精神世界なんだから、おまえの考えは俺様に伝わるんだぞ。 悪口とかなんて言うと、全部聞こえてしまうんだぜ」

「そうでしたそうでした。 あーあ、残念残念」

「おまえ俺様をバカにしているのか?」


 若干嫌味に言ったところ効果抜群なようで、苛立ちを見せる煉である。

 しかし、嫌味を感じるということは、俺の負の感情からできた煉にも、それなりに感情があり行動する――――つまりは心があるということなのだろうか?

 心があるということは即ち、別人格とは言え、1人の人間として認めなくてはならないのではないだろうか?

 と考えていると、煉は頷き


「そりゃあ、当り前だわ。 だって人間だもの!」


 と、どこかで聞いたフレーズを使った。


「なあ、煉。 お前は俺の代わりに戦うなんてことは出来るか?」

「突然どうしたんだ? 俺様に頼み事したいんでちゅか?」

「まあね」

「あのさ、スルーするの止めてもらえるかな」


 煉のボケには突っ込み切れない。

 だから、ここはスルーするのが一番なのだ。


「んで? 俺様に用事ってのは?」

「さっきも言ったけど、俺の代わりに戦ってくれないか?」

「嫌だ! だって……」

「だって?」

「だって怖いんだもん!」


 ……は?


「……ん? 今なんて言ったのかな?」

「怖いの嫌いだから、戦わないの☆」


 ……うざし。


「……うざし、とか思うの止めてもらえる?」

「戦う気ないんなら、頼み事もくそも無いな」

「いやいや、待ってくれたまえよ。 俺様は戦わないけど、翔琉自身に力を貸すことは出来るよ」


 ここに来てまさかの展開!

 煉はまさか、アマデウスみたいなことができるのか?


「力を貸すとは具体的にはどういうことだ?」

「うーんと、まあ俺様が君と人格を交換することによってだね……」

「いつもと同じじゃねーかよ!」


 ビシッと煉にツッコミを入れてしまった。

 不覚!


「でも、そうするとまた暴走しちゃうんじゃないのか?」


 あの時のように――――あの修行の時や、隠匿森でのシャドウ戦の事……


「その辺は大丈夫! 安心して。 君と俺様が話ができてるってことは、お互いに調和してるって事さ。 前回の時は、アマデウスの強力な力と、君自身の潜在魔力のせいで、力加減ができなかったんだ。 でも今回はその邪魔者が消えたわけだから、安心して身体を明け渡してくれて構わないぜ」


 言い回しにすごく不安があるものの、現状はこの方法を受け入れるしかないのか?

 そんな時、不意に思った。

 何故だか知らないけど、閃いた。


「じゃあさ、こういうのはどうかな? 例えば――――」




 ふと目が覚めると、そこは隠匿森だった。

 隠匿森―――――傷をいやすために訪れた場所。

 そして、煉がシャドウを倒した場所。

 今ここには、7人の大魔導士中6人ものが集まっている。

 そして、3人の太古の魔導士は3人と見事にそろっている(1人は霊体だけど)。

 元暗黒賢者のボルや、急成長したジンライ。

 この中で一番強いのは誰なんだろうとか思うときもあるが、それは平和になった時に力比べでもなんでもやればいいと思う。

 今は世界を救うこと――――ひいては、俺が元の時代、元の世界にちゃんと戻るために、努力を惜しまなくてはならないのであろう。


「あ、翔琉! 気が付いた? あれから、3時間くらい気絶してたみたいだよ、大丈夫?」


 と、近くでどうやら看病していてくれたリュウが言う。

 服装が変わっていて、どうやら日本風の巫女の服に着替えたようである。


「看病してくれてたの? ありがとう」


 そういうとリュウは優しく微笑む。

 3時間……俺にとっては3日に感じてしまっていたようだ。

 実際な話、気絶したら時間の流れがかなりたったと勘違いする人もたまにいるらしい。

 今回はどうやらそんな感じなようであった。


「他のみんなは?」

「泉で傷と精神を癒しているわ。 あそこの水はあたしも認めるほどの最高の癒しの力を持っているからね」


 リュウが話しをしていると、ジンライが部屋の扉を勢いよく開け、中に入ってきた。

 そして、俺のそばに駆け寄り、涙ながら言う。


「ママ! 大丈夫? もう大丈夫? 本当に大丈夫?」


 と心配してくれている。

 俺は安心させたくて、笑顔で


「うん。 大丈夫だよ、ありがとうジンライ」


 そういって頭を撫でた。

 すると、ライやボルのように幼児体型(ジンライの元の姿)になってしまった。

幼児体型の姿の時は、ライやボルと同じような姿だ。

人間というよりは、虎獣人の姿である。


「あれ? これどういうことなんだ?」

「あはははは。 流石、虎の獣人の一族の血を持つものだね。 ライやボルとおんなじ能力を持っているようだね」


 そういってリュウは、みんなに翔琉が起きたことを知らせてくると、部屋を後にした。

 部屋にジンライと2人きりになってしまった。


「ねえねえ、ママ」

「何だい?」

「ママはこの世界が平和になったら元の世界に帰っちゃうの?」

「うーん……まあ、そうなるね。 この世界での出来事は確かに面白いけど、俺にとってはこれは現実ではなくて、冒険ファンタジーって感じなんだよね。 どうしてそんなこと聞くんだい?」

「僕はママと一緒がいい。 だから一緒に行きたいなーって」

「うーん……俺はいいけど、ディルとライが許さないんじゃないかな?」

「どうして?」


 ウルウルっとした目で俺の顔を除くジンライに、厳しい現実を突きつけるわけにはいかず、俺はただただ黙ってしまった。

 泣かせたくない……けど、いずれ話さなければならないのだろう。

 この後待ち受ける、別れと言うものを――――自分の子供に教えるときは自ずとやってくる。

 だけどそれは今じゃないと思うんだ。

 きっと今言っても、ジンライには完全に理解することができないと思う。

 だから、今は黙っておこう。

 いずれ俺がこの世界からいなくなるという現実を……そして、2度と会えなくなるということを――――

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