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関東大学将棋物語  作者: るかわ
88/92

悲劇


「嘘だろ……」

 島与はこれが現実とは思いたくなかった。チームは流れを変えることができず、2ー5負けを喫したのである。まさか二軍に負けるとは。それも最悪の2ー5である。これでは医科大の結果次第で降級が決まってしまう。島与は急いで田島の元へ駆けつけた。

「田島! 医科大はどうなってる?」

 田島は浮かない顔をしていた。田島だけではない。医科大全員の空気が重い。それで島与は察した。日東に負けたか。

「島与か、うちは死んだよ。次からB級だ」

「そうか……スコアはどうだったんだ?」

「3ー4だよ」

 そうか。ならうちは助かったのかもしれない。あれ? でもうちは2ー5で負けた。中邦と医科大の勝ち点差は1。つまり、同点じゃね? この場合ってどうなるんだ?



「古屋、チームはいいのか?」

 前田は対局室を見渡す。自チームの対局が終わったというのに、この男は気にならないのか。

「いやーこっちのほうが面白いしな」

「降級争いの真っただ中だというのに落ち着いてるな」

「そりゃそうよ。去年もギリギリ六位で踏ん張ってきたんだ。うちの残留力は半端ないからな」古屋はよくわからない自慢話を繰り広げる。

「そうか、そうなると順位の差ってのはでかいな。もし勝ち数が同点だった場合、ライバルの中奥に一つ順位で上回っている」

「そうそう。頭ハネってやつよ」

 順当に考えてみる。日東が医科大に勝ち、慶城が中邦に勝ち、三ツ橋が米大に勝ったとする。すると、勝ち点2のチームが二つできる。

つまり、中邦と医科大だ。



「あれ? もしかしてもしかしてもしかして」

 島与は両手で頭を押さえた。もしかして、降級ってうちか?

「おい田島、勝ち数が同点の場合ってどうなるんだ?」

 田島は怪訝な顔つきで島与を見る。なに言ってんだこのアホは、と言いそうになるのをこらえ、説明した。

「前年度の最終順位によって決まるんだよ。だからもし医科大と中邦が並んだら、順位六位の医科大が順位七位の中邦に――」

 田島は一瞬で事態を察した。

「もしかして、中邦負けたのか?」

「……そうだよ」

 慶城の二軍にな。それも2ー5。おかしいだろ? 負けたんだぜ。

 おかしい。いつもの調子で言うつもりが、言葉になっていなかった。そうか、もう終わったのか。目から……涙が出てきやがった。

「島与……」

 田島はもう何も言えなかった。



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