悲劇
「嘘だろ……」
島与はこれが現実とは思いたくなかった。チームは流れを変えることができず、2ー5負けを喫したのである。まさか二軍に負けるとは。それも最悪の2ー5である。これでは医科大の結果次第で降級が決まってしまう。島与は急いで田島の元へ駆けつけた。
「田島! 医科大はどうなってる?」
田島は浮かない顔をしていた。田島だけではない。医科大全員の空気が重い。それで島与は察した。日東に負けたか。
「島与か、うちは死んだよ。次からB級だ」
「そうか……スコアはどうだったんだ?」
「3ー4だよ」
そうか。ならうちは助かったのかもしれない。あれ? でもうちは2ー5で負けた。中邦と医科大の勝ち点差は1。つまり、同点じゃね? この場合ってどうなるんだ?
「古屋、チームはいいのか?」
前田は対局室を見渡す。自チームの対局が終わったというのに、この男は気にならないのか。
「いやーこっちのほうが面白いしな」
「降級争いの真っただ中だというのに落ち着いてるな」
「そりゃそうよ。去年もギリギリ六位で踏ん張ってきたんだ。うちの残留力は半端ないからな」古屋はよくわからない自慢話を繰り広げる。
「そうか、そうなると順位の差ってのはでかいな。もし勝ち数が同点だった場合、ライバルの中奥に一つ順位で上回っている」
「そうそう。頭ハネってやつよ」
順当に考えてみる。日東が医科大に勝ち、慶城が中邦に勝ち、三ツ橋が米大に勝ったとする。すると、勝ち点2のチームが二つできる。
つまり、中邦と医科大だ。
「あれ? もしかしてもしかしてもしかして」
島与は両手で頭を押さえた。もしかして、降級ってうちか?
「おい田島、勝ち数が同点の場合ってどうなるんだ?」
田島は怪訝な顔つきで島与を見る。なに言ってんだこのアホは、と言いそうになるのをこらえ、説明した。
「前年度の最終順位によって決まるんだよ。だからもし医科大と中邦が並んだら、順位六位の医科大が順位七位の中邦に――」
田島は一瞬で事態を察した。
「もしかして、中邦負けたのか?」
「……そうだよ」
慶城の二軍にな。それも2ー5。おかしいだろ? 負けたんだぜ。
おかしい。いつもの調子で言うつもりが、言葉になっていなかった。そうか、もう終わったのか。目から……涙が出てきやがった。
「島与……」
田島はもう何も言えなかった。




