最終ラウンド
運命の一戦のオーダーは大将戦から順に
戸刈―小島、清野―諸星、佐藤―霧江、前田―成瀬、増本―清野、奥村―桐元、西川―木田となった。記録係が東大から四人、法名から三人選出される。前田は倉富、シャイアン、伊藤を選び、大将、副将、三将にそれぞれ配置した。
医科大―日東には、優勝決定戦並みの人だかりができていた。互いの命運を賭けた戦いで、山岡、神野と強豪が全員揃ったからである。
「あなたが山岡さんですか、田井卓志と申します。以後お見知りおきを」
山岡の対局相手になった田井は律儀に自己紹介をすると、深々と頭を下げた。山岡は気味が悪くなり、「どうも」とだけ言ってお茶を濁す。
古屋の相手は阿部。気合いが入っているようで、対局開始前から阿部は集中している。
「阿部、意味ねえ時に考えてると悪い手指しちまうぞ!」
神野は周りをよく見ていたようで、阿部に離れたところから注意した。阿部は無言で頷き、背筋を伸ばした。
中邦は慶城のオーダーを目にして、驚きを隠せないでいた。森の予想が大きく外れ、浅田どころか主力のほとんどが控えに回っていたからだ。
正直、ありがたい。
森は深呼吸して気持ちを落ち着けた。これならむしろ勝てる。チームの残留もいよいよ現実味を帯びてきた。
「それじゃ、よろしくお願いしまーす」
浅田は頭を下げると、出場する一人一人に「一発入れてやれ!」と声をかけた。
準レギュラー達は慣れない動作で将棋盤の前に座る。普段対局しているはずのレギュラー達が、記録取りに回った。
「最終戦ですもん。当然応援しなきゃね」
下田は対局前に一年生を集めた。どうやら最終戦は、一年生は仕事をしないでいいらしい。下田はウインクをして話を続けた。
「その代わりしっかり観戦するの。法名が勝つように念力かけることね」
麻生と川上が頷く。
「雑用は任せてもらえますかな」
「気にしないで観戦してくれよ!」
麻生達はそれぞれの役割のカードの対戦場に向かった。それを見て一年生達は法名のところへ向かう。
「法名奇数先」
「東大偶数先」
戸刈と小島が伝えると、七将まであっという間に伝わった。法名達は特に気合いを入れており、声も力強いものだった。
どの大学も振り駒が終わったようで、対局室がしんと静まり返る。頃は良し。高森が大きな声を上げた。
「それでは対局開始してください」
会場内に最後の「お願いします」の声が響き渡った。




