意識
「池谷君、二人で差し入れ買いに行こ!」
下田が達也の腕を掴む。それを見た長崎が割って入った。
「先輩! 雑用なら一年の私がやりますから!」
「えーながこはオーダーチェックもあるでしょー」
「いえいえ、平気ですっ! 先輩ばかりに迷惑かけられないですから!」
「じゃあわかったーお茶七本分買ってきてね。お金は後で払うからー」
今日は持ってきているんだなと達也は下田を見る。
「行ってきますー!」
二人は一階にある自販機の前まで向かった。夕方に差し掛かり、人の気配は無くなっていた。達也がゴソゴソとポケットから財布を取り出す。
「小銭無いや」
「あっ、持ってるよ!」
長崎が財布を取り出す前に、達也が札を取った。千円のつもりが、間違えて一万円を取ってしまい、慌てて引っ込める。
「一万円でも対応してくれたらいいのにねー」
気の利いたことが言えなかった長崎は、思わず変なことを口走ってしまった。二人は恥ずかしそうにそっぽを向く。
ガコンガコンと流れてきたお茶を見届けると、二人は屈んで同時に手を伸ばし、お茶を取ろうとして手が触れ合った。ビクンと達也が反応する。慌てたように達也の手が、お茶を求めて彷徨う。長崎はお茶を取るふりをして、手を求めた。指と指が絡み合い、手の平が重なる。そっと二人は目を合わせた。達也は息ができなくなり、苦しそうに息をはあはあと吐いた。長崎も、小刻みに震えていた。数秒間、二人は手を握ったまま、見つめ合っていた。




