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プロローグ―②






 前触れなく、魂の咆哮いきますっ!!



 異世界に召還(?)された僕たちは、世界征服をするために頑張ってるぜぇっ!



 いや、マジで。

 僕たちが召還(?)された異世界。


 幻想世界(フアンタジア・ワールド)


 命名・僕。

 いい感じだなと自画自賛。


 さくらも信長も褒めてくれたしね。


 いや。それはさておき。


 この世界では現在進行形で二つの勢力による激しい戦いが繰り広げられている。


 ………。

 ………………。


 ………いやいや、激しいか?

 うぅむ。そこはちょっと議論が入る余地があるな。


 爆発とかのエフェクトは過剰なぐらい激しいし、人がゴミのように舞い上がって、雨のように落ちてはいるけれど、絶対に(・・・)死んだりしないように手加減(せつてい)してるしなぁ……。


 少なくても僕たちは。

 その外側にまでは関与しきれないから、確実とまでは言い切れないけども………。


 まあ、いいか。


 とにかく、戦っている二つの勢力とは、大陸制覇を掲げた帝国に率いられた連合国家勢力と魔王(代理)が率いる魔王軍なのである。


 言うまでもなく、僕たちは魔王軍側(・・・・)である。


 まったく、なんでこんな事になってんだかね。

 ………いや、理由ならわかりきっている。


 根本的なところで、そもそも僕たちを異世界に連れてきたのは、隣で鞘に納めたままの『聖剣』を肩に担ぐようにしている幼なじみだもんなぁ……。


 そこから始まった成り行きが、全ての根源だ。


 つまりは、責任の所在を求めるなら幼なじみにあるのであり、その思い付きに付き合った僕たちも悪い。


 連帯責任。

 誰か一人に責任を擦り付けなくて済むいい言葉だよね?


 僕は内心で、はふぅとため息を一つ。


 なにはともあれ、今日も今日とて大軍相手に戦争だ。

 それなりに長い旅路を経て、僕たちはこんな日常茶飯事に辿り着いた。


「さて、と――ようやくここまで来たね」


 僕は少しばかり感慨深く思いながら呟いた。


 中天に輝く太陽。

 視線の先には都市を囲む外壁と巨大な門。


 ここ最近に定めた当面の目的地であった連合国家勢力の三番手――アウグースト王国の首都カルナックの街である。


 そして、そのやや手前に展開された精強として知られたアウグースト王国軍の兵士の皆様がお揃いになっている。総数五千にも及ぶ軍勢であるのだが、悪名の知れ渡った魔王軍を迎撃するには些か数が足りないというべきだろう。


 実際に戦場に赴くのが、とりあえずはたったの八人ぐらい(・・・・・・・・・)といえども。


「長かったような………」


 幼なじみの一人であり、ここまで一緒に旅をしてきた仲間でもある真部(まなべ)桜花(さくら)――さくらは、むしろこれから先の展開が待ちきれないという風情である。


 艶やかな長い黒髪の美少女だ。これは幼なじみの贔屓目なしでの評価。


 聖騎士(パラデイン)みたいな鎧に身を包みんで、盾も装備。その他いろんな効果のあるアクセサリーや護符なんかで完全武装。


 非武装時の単騎の能力もええ感じにぶっ飛んでるけれど、そうした諸々も含めると都市を灰燼に還すのも簡単なのだから、いろんな意味で凄まじい人間兵器になってしまった。


 普通は幼なじみの美少女は『お姫様』ポジションなんだけど、僕らの幼なじみは『勇者』ポジションなんだよねぇ……。


 ………いや、まあ、そうしたのは僕なんだけどね。


 考えるよりも先に動けがモットーの猪突猛進タイプなのに、不思議と最良の結果を導き出すのだから『ヒロイン』よりも、『ヒーロー』の素質があるんだ。


 翡翠色のカラーコンタクトをした瞳でウインクしながら、僕に軽く投げキッス。


「短かったような………」


 さくらの言葉を継いだのは、もう一人の幼なじみ――尾田(おだ)信長(のぶなが)だ。


 容姿平凡。頭脳壊滅。腕っ節もからっきし。けれど土壇場の勇気は人一倍で、およそ落ち込むということも知らない。


 底抜けの明るさと前向きさで、君は今日もムードメーカーさ。

 こんなやつが友達だと毎日が楽しそうと思わせてくれるタイプの親友だ。


 漆黒の闇を固めたようなマントを身に纏い、腰に巻いたホルスターには白と黒の二丁拳銃。

 額にはバンダナを巻いている。


 こんな時でも変わらないバカみたいに(最高の褒め言葉です)明るい笑みを絶やさずに、僕の肩の上に肘を乗せている。


「そんな慌しい日々でしたねぇ………」


 さくらの肩にはぬいぐるみのような竜が一匹。


 その正体は、とある洞窟の奥に棲んでいた齢千年を超える古竜(エンシエント・ドラゴン)の一匹で、長老級(エルダーズ)にすら名を連ねられるほどの『力』の持ち主らしいのだが、僕らからはペットのような扱いに等しく、当人(?)もまたそれを受け入れている。


 いや、まあ、初っ端に酷い目に遭ったもんね。

 あれはひどかったと僕も思ってる。


 ヤッたのはさくらだけど。


 ちなみに、僕らは『ドラ』もしくは『ドラちゃん』と呼んでいる。

 威厳の欠片もないね。


 他にも他にも。


 後ろには、これまでの旅路で紆余曲折の果てに仲間になった人たちが続いている。

 最初は三人だった。


 ………いや、最初に遭遇した脅威にして、その後のマスコットという意味では、三人と一匹というのが相応しいと思う。


 他のみんなの紹介は、またの機会ということで。


「でも、これが世界征服への道のりだからねぇ~」


 言っていて違和感満載の言葉である。

 な~んで、こんなことになってるのかなぁ~と。


 これから五千人弱を相手に大立ち回りを演じなければならないというのに、そんな些末はさておいて、そんな煮え切らないことを考えてしまう。


 いや、正直に打ち明けると、考えるまでもなく結論は決まっている。

 これまた成り行きの一言で全ては片付く。


 そんなのばっかだな。


 付け加えるなら、『嫌だ(ノー)』と言えない日本人でもあったからだ。


 元の世界に帰る手段は未だにわからず、耳を塞いで知らん振りをするにはどうにも後味の悪すぎる事情を聞かされ、相手の要請に応えられるだけのお膳立てが整っているのに、断れるほどの(つよ)さが備わっていなかったのだから仕方がない。


 まあ、もっとも、仮に僕に言えたところで、さくらが即座に前言撤回を声高に口にしていただろう。

 僕たちの中で最終決定権を有しているのは、他ならぬさくらだし。


「まあまあ、今さら悩んだって手遅れだって。どうせこんな形にはなってたわよ」


「そんな身も蓋もないっ!?」


 最後に背中を押してくれやがった人物の言葉に、いつものこととはいえ思わず叫ぶ。


 つーか、いくら幼なじみでも、心のモノローグを読むなよぅ。

 ちょっとだけ恥ずかしいじゃないか。


「あははは。幼なじみの以心伝心よ。

 まあ、それはさておき、それじゃあ……そろそろ始めますか」


 既に敵軍の大将との前口上は済ませてある。


 貧乏くじご苦労様です、なんて本心からの同情を告げた時のなんとも言えない微妙な顔が忘れられない。


 とはいえ、王国軍も前衛が前に出始めているし、弓兵の矢も今の距離では威嚇にしかならないが放たれ始めた。


 ――さあ、開戦だ。


「そうだね。まずはどうする?」


「それは勿論――」


 ザッと一歩前に出たさくらが、肩に担いでいた『聖剣』を軽く振る。その勢いで鞘が何処かに飛んでいき、その内側に隠されていた刀身が露わになる。


 ――『聖剣』の銘に相応しい黄金色の刃が。


「とりあえず、挨拶代わりに」


 両手持ちした『聖剣』を振りかぶるさくら――って、まさかっ!?


「おい、ちょ、まっ――さくらっ!?」


 黄金色の粒子が、周囲をゆっくりと照らし上げていく。

 まるで蛍が舞うかのように、周辺一帯を包み込むその光の粒子は数え切れないほどだ。


 光が集う。

 光が集う。


 光が集いて、刀身を輝きで染め上げていく。


 そして――



闇祓う聖光の剣(エクスカリバー)―――――――っ!」



 とある『語られなかった英雄』が、最後まで使わなかった(・・・・・・・・・・)伝説の『聖剣』から黄金色の光が放たれる。


 たったの一薙ぎでちょっとした街を灰燼に還せる光線(ビーム)がこちらに向かってくる軍勢の鼻先に突き刺さった。


 足元の地面すら鳴動する揺れと耳が音として認識できないような轟音。


 爆風から目を庇って、それが落ち着いたあとに見た光景は、巻き上がるキノコ雲。直撃はしていないに

しても、生じた余波による衝撃波で軍勢の陣形は、広範囲に渡って崩れているし、この段階で戦闘不能になった者たちが大量に転がっている。


 ………失礼ながら、人がゴミのようだ。

 理不尽って遭遇する側からするとホントに理不尽だよね?


 心の底からすまんと思いながら、合掌する。

 一撃食らわせたのはさくらだけど、責任の半分は僕にある。


「………………」


 自分で設定しておきながらなんだけど、実際に目の当たりにすると笑うしかないような光景である。


「よしっ♪」


「よくねぇよ! 挨拶代わりになにやってんのっ! 対応がなんか世界線を超えてるよ!?」


 信長がオーバーリアクションで突っ込みを入れる。

 全く同じ意見なのだが、僕は言っても無駄だとちゃんと理解している。


「大技での先制攻撃は世界共通の挨拶です♪」


 歓声を上げる後ろの連中に手を振って応えながら、全く悪びれない。

 プロローグでいきなりエンディングに突入したら、いくらなんでも読者が怒るぞ。


 ………まったく。


「それにそのパターンだと、先手で大技かました方は大概負けるんだぞ」


「そんなことないもんっ☆」


 まあ、さすがに速攻で瓦解とかいう戯けたオチはなく、街道に巨大なクレーターが生まれただけで敵軍はまだ健在だ。


 ………一応。


 ちらっと見たところ、半数ぐらいは脱落してるけども。


「いやそーじゃねーだろっ!? 俺はいま常識の話をしてるんであって――」


「まあまあ落ち着け落ち着け。

 ここはまず円周率を唱えてみよう。――さあ、信長」


「約三」


「ゆとり世代っ!?」


 今度はさくらが突っ込んでいた。

 うん。いつも通りの平常運転だね。


「オッケーオッケー。問題無し(オールグリーン)。よーし行こうか再チャレンジだ。

 さあ――さくら、みんなを鼓舞するんだ。大きな声を出してくれ」


「それは二代目の魔王(・・・・・・)に抜擢されたよっしーの役目じゃないの?」


「あくまでも代理だよ。そこは譲らない。

 大きな声を張り上げるのは得意じゃないし、そーゆーの大好きだろ?」


「うん♪」


 にっこりと可愛い笑顔でうなずいてから、みんなの前に出る。


「さあ、みんな! 今日も新生・魔王軍の伝説を更新するわよーっ!

 そして、わたしたちが、改めてこの世界を征服するのよ―――――――――っ♪」


「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」


 信長とドラを筆頭に、数多の仲間が雄叫びのような声で応えた。



 ● ● ●



 さてさて。


 自己紹介と前置きも済んだところで、僕の追憶に付き合ってくれるかな? 僕の口から言うのもなんだけど、ここに至るまではかなり荒唐無稽で無茶苦茶でドタバタした感じだったから、きっと面白いと思うんだ。


 かなり長くなっちゃうけどね。







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