プロローグ―①
僕の名前は、平坂義弥。
よしやんと呼んでくれ。
中学二年の自他共に認める『普通』の学生だ。
そして、アニメやマンガやラノベやゲームが大好きな現役の中二病。
うん。自覚してる中二病だ。
僕は――つーか、僕たちは昔から思っていたんだ。
ここではない何処かに、こことは違う世界があるんだと。
剣と魔法の世界。
超科学に彩られた近未来。
巨大ロボットが当たり前に存在したり。
広大な宇宙を船で旅したり。
僕たちの世界にありふれている『物語』のような世界が、きっと何処かにあるんだと。
そう思っていた。
別にそんな世界に行きたいと思っているわけじゃない。
いや、行けるんなら一度くらいは行ってみたいとは思うけどね。
………………生命の危険とかないなら、だけど。
チキンと言いたいなら言えばいい。
さておき。
ただ、あるんだと信じていた。
誰にだってそんな時期はあるよね。
テレビや漫画や小説の世界の設定に惹かれて、自分もその一員であるように振る舞ったり、頭の中で独自の『自分世界』を空想したり。
そんな風に遊んだ時期が。
僕は――僕たちは、今がその絶頂期というだけだ。
だって中二だし。
将来的にそうした振る舞いの記憶やノートに書いた設定などを恥ずかしく思う時期が来るのかも知れないけれど。
それでも、今は楽しいから、それでいいんだ。
――とはいえ、僕は自発的に行動するようなタイプではなく、いろんな設定をノートに書き溜めて悦に入るタイプで、いわゆるところの『設定厨』(?)という奴だ。自己解釈なので、もし間違っていても温い眼差しで眺めるに留めてくれるとうれしい。
その方向性に走り始めたのは小四ぐらいだったかな。
それまでは、普通に幼なじみたちと『ドラ○ンボール』ごっことして、周囲から元気を奪い取るために意味もなく学校の屋上で両手を上げたりしていたしな。
………今考えると凄い虚しいな。
日が沈んでいく夕焼け空。
学校の屋上で並んで両手を上げてる子供が三人。
カーカーと空を行く、カラスの鳴き声にさえバカにされていたような気分になるよ。
………………ごめん。ちょっと古傷が疼いた。
立ち直るまで三行くらい待って。
「どうしたの、よっしー?」
「よしやん。急に額に手を当てて俯いたりしてどしたんよ?」
「なんでもない。気にしないでくれ」
――よし。立ち直った。
語り始めると止まらないのが玉に瑕だが、そうした面は知れ渡っており、優しいクラスメートたちは飽きたら自然にフェードアウトしてくれる。そういう方向性でみんなの合意を得ている。誰もいなくなった後も、僕は黒板や壁や窓の外の小鳥さんに向かって語り続けるから誰も傷つかない。
たまに休み時間が終了したのにも気づかずに、先生のチョーク投げの的になるけど。
うん。これがウインウインな人間関係だね。
要するに、僕は自分世界に没入するまで相槌を打ってくれる人がいたらいいみたいだ。
最低だな。
そんな感じで集中力『だけ』は凄いみたいで、勉強はそこそこ出来る。
一夜漬けでも平均点以下に落ちたことがないのだ。
そこはちょっと褒めてほしいかな。
お洒落らしいお洒落に興味がない僕だけど、ちょっとした特徴としてあげるなら十字架のペンダントを肌身離さず『装備』している。
これは昔、幼なじみの女の子にもらったんだけど、ちょっとした『設定』を付与している。
恥ずかしいから、いつか『その時』がくるまで誰にも言わんけども。
さて。
そんな僕の今の境遇を少し聞いて欲しい。
幼なじみが招いた超展開で異世界に召還(?)されて、いろいろとおかしくなっている世界を征服するために魔王(代理)をやってます!
新作です。
完璧な思いつきとその勢いで書き始めました。
それにしても、タイトル長いなぁ……。
でも、この話はこのタイトルが一番合うと思うんだ。
そんなこんなで、超・ご都合主義の異世界冒険物語の開幕です。
『説得力? そんなものはどうでもいい。必要なのはノリと勢いだ』――を合言葉に書いています。
※ どこかで聞いたことのある能力名や装備がたくさん登場しますが、世界観繋がりはないものとお考えください。あくまでもよしやんの脳内設定です。