表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

膝が震える。全身から汗が噴き出す。

俺は今、魔王と対峙していた。

「我が魔王城へようこそ、勇者よ。私が全世界の魔族を統べる王、アリシアだ」

漆黒のマントを羽織った美女が階段を降りてきた。一段ずつ段を降りるごとに豊かな胸が上下に揺れる。

光量の少ない魔王城の中では、彼女の青白い肌は光り輝いているようだった。


十数m離れていてもその圧倒的な魔力で肌がひりつく。

剣の柄を握る手が汗ばむ。

「お、お、俺は勇者ハウルだ…。ま、魔王め、覚悟しろぉ…」

「はぁ? なんだって!?」

「な、なんでもありません…」

俺の必死の口上は魔王の一睨みにかき消されてしまった。


魔王が眉をしかめ、ため息をつく。

「こんな情けない男が勇者とは、この私も甘くみられたものだ。人間達はなぜこのような臆病者を救世主に選んだのだろうな」

それはこっちが聞きたいです。

俺は伝説の勇者の血筋ってだけで魔王の討伐を命じられただけだし。

人見知りだから道中で強い仲間もできなかったし。

「しかし、それでもここまで来ることができたということは、実力はあるようだな」

実力?…全然ないよ、そんなもの。

最初の町から魔王城にたどり着くまで、雑魚モンスターはおろか四天王との戦闘さえも回避してきた。

暴力は嫌いだからだ。

そのせいでレベルは1のままだ。


「そんなお前に敬意を表し、私もフルパワーで戦ってやろう」

魔王が拳を握る。やつの腕が青い火花に包まれる

「塵も残さず消えるがいい!!」

次の瞬間、灼熱の鉄の棒で貫かれたかのような衝撃を腹に感じた。

魔王の拳が鳩尾に食い込んでいた。

俺と魔王の体が白い光に包まれている。

目の前が白くなっていく。

遠ざかる意識の中、俺はあっけなく死んでいく自分の運命を呪っていた。




「…様、…シア様!」

「うう…」

誰かが呼ぶ声がする。

俺は目をこすりながら上体を起こした。

「ああ、よくぞご無事で!」

声がした方向を見ると、メイド服を来た女性が目頭に涙をためて俺を見ていた。

お尻には悪魔の尻尾が生え、ご褒美をもらった犬のように、それが左右に揺れていた。

「ま、魔族!?」

「はい! 側近のマリです。ああ、アリシア様、お目覚めになられてよかった」

「ちょ、ちょっと待って! 俺がアリシア…魔王だって?」

「何を当たり前のことを言ってるんですか?」


マリという魔族から手渡された手鏡を覗き込む。

そこには、青白い肌の巨乳美女、アリシアがきょとんとした顔で俺を眺めていた。

俺がやつを見つめるとやつも俺を見つめ返す。

「いや~、アリシア様が倒れられていたのを発見した時はどうなるかと思いましたが、意識が戻って本当に良かったです」

手を合わせて喜ぶマリの言葉が遠くで響く。


どうなってんだ、これ?

俺はその場に座り込むことしかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ