雨の奇跡─空を眺めて─
「うわっ。雨降ってるじゃん。」
バイトが終わって外に出てみると雨が降っていた。
ポツリポツリと。
天気予報では一日中晴れだと言っていたのに。
雨が降っていると何だかテンションが下がる。
俺は屋根がある部分から足を踏み出す事が出来ずぼぉっと空を眺めていた。
何分経っただろうか。
ふと横を見ると俺と同じようにそこに立ち空を眺めている女の子がいた。
俺は何を思ったのかその子に話かけていた。
「雨すごいですね」
彼女は驚いた顔で俺を見上げた。
そしてまた空に目をやりニコッと笑った。
「ホント凄いですね。」
そう言い微笑む彼女はどこか楽しそうだった。
「雨、嫌ですねぇ。」
俺は何だかもっと彼女と話したくなり再び声をかけた。
「そうですか?私は好きだなぁ。」
『好き』と言う言葉に俺は一瞬ドキッとした。
「雨って何か儚げで綺麗じゃないです?」
そう言って俺の方を見た。
「言われてみるとそうかな。」
雨は依然として止む気配がない。
「雨、なかなかやみませんねぇ。通り雨かと思ったけど違うのかなぁ?」
そう言うと彼女は肩にかけている鞄を探り出した。
「こんな日に限って折りたたみ傘持ってないやぁ。」
彼女は残念そうに俺の方を見た。
「俺もまさか雨が降るなんて思ってなかったから持ってないんだ。どうしよっかなぁ?」
心なしかさっきより雨がきつくなった気がする。
「もうちょっと空、眺めときません?」
彼女はそう言い少し俺に近づいた。
「そうしましょうか。」
なぜこの時そう言ったのか今でもよく分からない。
その後俺たちはお互いの話をしたり、くだらない話をし続けた。
目を合わせず、ずっと空を眺めながら。
そして今彼女は俺の傍でテレビを見ている。
あれから一年。俺たちは彼氏と彼女という関係だ。周りのツレに彼女との出会いの話をすると『運命的な出会いだなぁ』と言われる。
けど彼女は俺たちの出会いの事を運命だとは言わない。
「雨が私たちを導いてくれたんだよ。雨って不思議な力を持ってる気がするんだ。運命とは違うの。うまく言えないけど、しいて言うなら雨の奇跡かな?だから私雨って好きなんだ。」
雨の奇跡のお陰で運命より運命的な出会いを果たした俺たち。
そう思うと雨も悪くないなぁと、窓から空を見上げる。
雲行きが怪しい。
「雨、降りそうだな。」
彼女にそう言うと彼女はイタズラに笑い
「洗濯物取り込んで。」
とベランダを指差した。
『雨の奇跡』にまつわるお話を短編で書いていきたいと思っています(^O^)アドバイスや感想、ダメ出しいただけたら嬉しいです☆