002
○月×日
本日、二度目の訓練生出動があった。
本当は出動する心算なんて無かったんだけれども、如何せん事件現場がその時の俺の現在位置から近すぎた。流石にこの距離で無視してしまうと後々面倒くさそうだったので、仕方無しに参戦する事にした。
さて、今回戦ったのは、初戦と同じくサイコパス。しかし今回の相手は、前回と違いサイコキネシス能力者だ。実際に存在しないものを映し出す投影型の能力者と違い、物質を直接操作してくる、しかも力が不可視であるというなんとも面倒くさいサイコパスだった。
当然の話、俺は後方にて自主見学に励む事とした。
見学といっても、ただ漫然と時間を過していたわけではない。
今回、俺は新たな装備を実装した。その自主見学の時間の間、俺はその新装備のセッティングを行っていたのだ。
前回の経験で手に入れたポイント。アレは色々な事に使えるらしく、例えばスーツの防御性能を上げるだとか、俊敏性を強化するだとか。
戦闘を経て得たポイントを代価に、準ヒーローは自らを強化し、そうして何時か一人前の正義の味方になるのだそうだ。
取得方法は、デバイスを通じて本部から送られてくるカタログに申し込むだけ。お手軽だ。
で、俺が前回のポイントで行ったのが、新装備の実装。
その名も、「エナジーガンD」。サイキック系エネルギーで稼動する、一種のエネルギー武装だ。幸い俺にはサイキック系の適性があったので、この武装も装備可能なのだ。
――うん? もしかして合格はその所為か?
といってもまぁ、正義の味方入門したての素人にも手に入れられる装備だ。性能は殆ど見掛け倒し。一応超汎用型の「インパクトガンE」と違い、サイキック系適性が求められる武器なので、それよりは性能がいいものの、五十歩百歩。共に訓練生向けのランクD以下の装備だ。
あ、そうそう。前回貰った20点という得点だが、どうやらEランクの訓練生の得られる点数としては、かなり大目にもらえていたらしい。
あんまり活躍していなかったのだが、どうやらあのガキを助けたというのが高い評価を得た理由らしい。
うん、怪我の功名? ちょっと違うか。
まぁ、そういうわけで俺の武装はエナジーガンDなのだ。コレにより点数が15点マイナス。残点は5点となった。まぁ、ついでに端末カードにGPS機能をつけたりしたので、更に残点が3点になったりしたが。
さて、そういうわけで装備を弄っていたのだが、ボッとしていたらいつの間にかサイコパスが此方を敵性対象として察知したらしい。俺の脳裏にビンビン走る敵意。
思わず他の訓練生は何をやっているのかと周囲を見回したら、あの連中、サイコキネシスの無差別放出――四方八方にばら撒かれる衝撃波に弾かれ、サイコパス本人に近寄れてないでやんの。
仕方が無いし、攻撃されても面倒なので俺が倒す事に。
幸い相手の攻撃範囲はなんとなく解る。これもESP適性のおかげだろう。
というわけで、相手の攻撃範囲外からこれでもかと言うぐらいにエナジーガンを撃ちまくる。
エナジーガンの威力は精々軽量級のプロボクサー(インファイト系)のストレートパンチくらいの威力しかない。まともな人間相手ならともかく、サイコパスの防壁を抜くには全然足りない。
仕方が無いので撃ちまくる。エナジーガンの弾丸は精神力に由来する。それこそ精魂尽き果てるくらいの心算で引金を引きまくった。
その結果、エナジーガンの弾丸は敵サイコパスの念力障壁を打ち破り、なんとか敵を昏倒させることに成功した。
敵サイコパスは昏倒しているところを専門のチームに護送されていった。
俺もその後友人と約束があったので、指導員の人に一声挨拶をしてから、足早にその場から撤退した。
で、今さっきカードを確認したところ、今回は15点が加算されていた。
平均的な得点が10点前後らしいから、やはり点数は多い。今回は敵と戦ったから、と言うのは解るが、ソレにしては多くないか? 一応今回戦闘が始まる前に、前回ご一緒した訓練生に得点数をさり気無く聞いてみたところ、敵を倒した彼が得た点数は9点ほどだったらしい。
一体如何いう評価基準なのか、激しく問い詰めたい気分になったが、まぁそれをするのも面倒なのでパス。
取得点数:15点
既得点数:3点
合計点数:18点
取得装備:エナジーガン(D)
※エナジーガン(D)――精神力を弾丸とするESP系兵装。装備条件がESP限定である為、同じ初心者用武装である「インパクトガン」に比べ連射性能が高い。
※サイコパス 対処ランクE~D
何等かのショックにより精神的均衡を失い、そのショックにより強力な超能力に覚醒した人間。
相手は戦術的な知識があるわけでも無く、基本的には人間な為、素人でも立ち回り次第で十分戦える。
ただし、精神汚染による被害拡大や広範囲被害による二次災害など、それでも十分な脅威であることには変わりない。