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○月○日

本日よりこの日記をつけようと思う。

俺が何故、こんな日記を書くにいたったかと言うと、今日何故かWHM――WorldHeroManagementに何故か所属する事になったからだ。

というのも、先月の暮、友人――広瀬智明に誘われ、WHMのヒーローコースに申し込んだ、というのが原因だ。

先にWHMについて記載しておくと、所謂正義の味方管理協会、というところだろうか。

<原因不明の怪異>や<悪の組織の怪人>なんかを倒す、正体不明の覆面ヒーロー。そういった存在を育成・管理する組織、と言えばいいだろう。

そして俺は智明に誘われるままその試験を受け、そして何故か試験に合格してしまったのだ。

良くわからないのだが、試験の内容というのは体力、知力、特技とその他諸々の試験が行われた。

手は抜いたのだが。


さて、そういうわけで俺は、準正義の味方に登録されてしまったらしい。

準ヒーローに与えられるのは、パッと見極普通のカードケースだ。が、内容はWHMからの指令を受け取る通信機と、身体強化服を装着する為の変身アイテムだったりと、その他ヒーローに必要な基礎的なシステムが詰め込まれているらしい。

試しに変身してみたところ、全身灰色のなんとも色気の無いスーツと、灰色のフルフェイスヘルメットに変身した。何でも新人はみなこの状態から始まり、指導員監修の元での訓練を経て、漸く“色つき”の一人前になれるらしい。

灰色――色なしは半人前の証なのだそうだ。


さて、そんなわけで登録したその後、早速事件が起こったらしい。

案件レベルE。準隊員の訓練に当てられるレベルだ。という事で、早速出動する事になってしまった。

本当は何だかんだ理由をつけてサボりたかったのだが、用事があると口に出した瞬間、周囲の準隊員の目の色が怖くなったので取りやめた。

ちくせう、正義馬鹿ばっかりらしい。


そんな理由で、(準)正義の味方としての初戦を迎えた。

敵は有象無象のサイコパス。ESP適性があったらしく、黒いもやのようなESP投影体を多数顕現させ、四方八方無差別に攻撃していた。

正直怪我したくないので、黙って遠方から眺める事にした。

アレは面白かった。こう、レミングスの群れみたいに愚直にサイコパスめがけて特攻する灰色の準隊員の群れ。

みんな早く正式な隊員になりたいからか、もう他との連携なんぞ知った事かとばかりに特攻する。

確かに敵を倒せれば高得点なのだろうが、正直見ていて阿呆にしか見えなかった。


で、近場の道路脇のガードレールに腰掛けてその光景を眺めていたのだが、何故か知らんがガキが進入禁止区域に入り込んでいた。

サイコパスに気づかれると厄介なので、こっそりと進入禁止区域から連れ出した。

途中でサイコパスに気づかれて、案の定コッチに攻撃してきたが、俺としては近寄りたくなかったので投石で投影体を攻撃して、その間にガキを連れて逃げた。

サイコパスのほうは、此方に気を取られた隙に他のメンバーがたこ殴りにした様子で、なんとか倒せたらしい。


と言うわけで、俺の初戦は全く戦わずして終わってしまった。

そもそも戦いとか興味ないので問題ない。

一応隊員証であるカードを確認したところ、今回の戦闘で20ポイントの得点が振り込まれていた。

はて?



取得点数:20点

既得点数:0点

合計点数:20点

取得装備:デバイス(カードケース型)

※デバイス=変身端末――WHMから提供される万能ツール。ヒーローとして活動した際に得た点数を対価に、自らの装備を強化したりすることが出来る。

デフォルトで設定されているのは、「変身機能」と「通信機能」。形も様々なものが存在し、ユーザーの希望によって様々な形のデバイスが供与される。


正義の味方は変わった。

理想や思想のためではない。正義や理念のためでもない。

好奇心に釣られた素人部隊と、訓練された熟練兵が、果てしない闘争を繰り返す。

理想を掲げる闘争は、合理的な無駄のないマネジメントに支配された。


正義の味方は変わった。


WHMに登録されたヒーローたちは、WHMに登録されたデバイスを持ち、WHMに登録された変身を使う。

着用したハイパースーツが彼らの能力を助長し、管理する。

遺伝子の制御、情報の制御、感情の制御、戦場の制御。

全ては管理され、統制されている。


正義の味方は変わった。


時代は抑止から制御へと移行し、警察組織による対処停滞は回避された。

そしてヒーローの制御は、社会のコントロールをも可能にした。


正義は変わった。

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