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パラダスト  作者: りぃーと劉華
第一章
8/12

母さんのために

ども、お久しぶりです。

ささっと書いてささっと投稿しちゃいます


では、セイヤ目線でどうぞ。

~セイヤ~


 あー、とりあえず眠たい。授業というのはこんなにもつまらないものなのか?一、二時限目を逃走でなくしてしまって正解だった。まあ、正確に言うと二時限目は五十分のうち四十分だけボイコットしたことになるか。

 そんなこんなでただいま三時限目中。のそれまた二十分が経とうとしているところ。

 すでにだるい。眠い。めんどくさいし、今すぐにこの教室から出てそこらへんで寝たい。

 わざわざ教室から出るのは女子の目線がうざいから。寝たいのはただ単に寝たいから。そして二十分ですでにだるいのは授業内容が簡単すぎるから。

 授業内容といえば魔法を使えることのできる俺からしたらものすごく簡単な計算式だったりして、一と一を足していることと大差ないほどだ。そんなものを長々と説明されながら解いていてもつまらない。というわけで眠たくなる。

 最初はまあ、適当に受けてやるか、という気で受けていたものの、うざいほどに全ての問題を俺に解かせるクソ教師のせいでその気も失せてしまい、ただ今机の上に足を乗せ腕を組んであくびをしながら外を眺めている真っ最中だ。

 そして、そんな態度をとっている俺に対してセイヤ君ってあんな人なんだーその辺のゴロツキみたいなのにかっこいいああやっぱりセイヤ君ってとってもかっこいいわ、な感じに人気上昇中?なのかはどうか知らんが、俺が言うのもなんだが授業中だというのにたまに喋りかけてくるカイがそう言っている。

 簡潔に言わせてもらうとそんなに過大評価をするな。少し説明を加えると、俺はそんなにかっこよくもないし強くもないし、ほとんどにおいて人並みだ。魔法に関しちゃ母さんが優秀でその血を受け継がせてもらっているおかげで出来る。魔法ができれば人並み以上に計算ができる。歴史に関しちゃ実際にその時代を生きてきたわけだから大概の事も分かるし、この教室内にいる奴らよりは遥かに生きてきているわけで嫌でも知識は豊富にある。頭がいいイコール凄いにつながるわけではなく、俺の場合は長く生きているイコール知識がある、だ。

 そんな事を知るはずもないクソ教師は態度の悪い俺に怒っているのかムカついているのか知らないが全ての問題を解かせてくる。それをいとも簡単に俺が解くもんでまたムカついて解かせる。それをエンドレス的に繰り返し、なんとか授業が終わった。


「セイヤー、お前なんでそんなにも頭がいいんだよ」


「は?お前よりお兄さんだからだ」


「んなわけあるか」


「そう思うならそう思っておけばいい。たとえば俺が実は千五十一歳だと言ってお前は信じるか?どう考えても信じない。俺が実は女でしたとか整形しちゃいましたとかもう初体験は終わらしちゃってますとか言ってもどうせお前が望む答えをお前自身が勝手に決めて勝手に納得してそれがお前の中の俺になる。それぐらいどうでもいい。俺の事は俺が全て知っている。俺がわかっていれば、俺が俺自身をわからなくなったりしなければそれでいい」

 

 さっさと教室を出ようと立ち上がると、心配そうな顔をしながらカイが腕を掴んできた。

 なんだ、その顔は。その顔は俺には向けられてはいけないはずの顔のはずだ。俺は心配されるべき存在などではない。というか、何を心配でそんな顔をする。俺が何かしたのか?それとも何か別に心配ごとでもあるのか?ああ、そうだ。きっとそうだ。何か心配なことがあって俺に愚痴に近い形で話をしたいだけなのだろう。


「なんだ?何か心配ごとでもあるなら話ぐらいは聞くぞ。俺はすごく便利でな、人の愚痴とかを聞くのが凄くうまい。そしてすぐに忘れる。忘れるから他の人に話すこともなければ俺がふいに喋ってしまう事もない。便利な道具だろ?」


 それは、一時期天使につかまって逃げ出すまでに身に付けた技術だ。たまに酒場などでからまれたりしたときは本当に役にたつ。面倒な事はすぐに忘れたりできるのだから。

 自慢げに言ったものの、今度は何故か泣きだしそうになった。


「なんで泣く?」


「お前さ、自分の事そんな風に言うなよ」


 そんな風とはどんな風だ?事実を言ったまでだ。どうせあの天使も俺の事を愚痴を聞いてくれる玩具と思っていただろうし、俺が真実を言っても信じてくれるはずもない。事実、今までそうだった。

 どうせ俺は信じてもらえないし、俺を取り巻く環境の奴らは俺の事を玩具や人形、それから金になる物としか思っていないだろう。


「俺は事実を言っているだけだ。お前が気にすることなんかじゃない。愚痴を言いたかったわけじゃないなら離せ。俺は寝たい。もう授業はごめんなんだ。つまらなさすぎる」


 できるだけ、できるだけ相手を気遣って言ったものの、カイはとうとう泣き出してしまった。

 慣れない事をするからこうなる。人となんてこんなに関わったりしなかった。関わったら、大切になってしまったらだめだからと思って遠ざけていたせいだ。だが、知らない。そんなこと知らない。


「なんなんだお前は」


「だって、自分の事、便利な道具とか、自分が、自分を分かっていれば、良いとか、そんな事言うから。俺は、お前を道具とかそんな風に思ったこともないし、仲良くなりたいから、もう、セイヤは大切な人だから、だから、俺、セイヤの事知りたいのに」


「分かった。分かったから」


 ふいに教室にいる全員の視線が突き刺さってくる。だから嫌なんだ。だから人の中に混ざるのは嫌なんだ。


「とりあえず、次の授業サボるぞ」


 そう言って俺はカイを引きずるようにして教室を出た。

 教室を出てからもカイは泣きやむことはなく、俺は視線から逃げるように裏庭とでも呼ばれそうな場所に来た。そこでもやはり、野次馬みたいなのがついてきて面倒だったので目くらましのために光の魔法を使った。眩しさのあまり目を逸らしているうちにカイを抱き上げると屋上までジャンプした。


「おい、いい加減泣きやめよ」


「だって、セイヤ、自分の事を大切にしないから」


「十分に大切にしてるつもりだぞ。此処に来たのも変な目で見られるのが嫌だからだ」


「嘘つき」


 嘘などついていない。あの目線が、あの視線が気になって気になって気になって仕方なかったのだ。それが自分にぶつけられてそうで否定されているようで、怖くなったのだ。人間だから大丈夫だと思って学校に通う事を承諾したのに、アレはまるで天使が俺に向けてきたものと似ていたのだ。


「勝手にそう思っていればいい」


「またそれだ!よし、セイヤが自分に対してそんな態度をとるなら俺がセイヤを大切にしてやる!」


「俺を、大切にする?」


 思わず聞き返してしまった。

 何故、俺なんかを大切にする?わけがわからない。俺は異端者だ。異端者は処分するべきものだ。たとえ、それをカイが知らないとしても大切にされるべきものではない。


「何の冗談だ」


「冗談なんかじゃない。俺はセイヤの事が大切な友達だと思ってる。あって間もないけど、俺にとってセイヤはもう大切な友達なんだ。それを貶されちゃ俺は黙らない。たとえそれがお前自身でも俺は怒る。だから今も怒る。俺の大切な友達を便利な道具とかどうでもいいとか言うな!」


 タイセツナトモダチ?

 頭の中でその言葉がループする。


「た、い・・・・・せつ?俺が?俺なんかが?生きている価値もないただ追われて殺されるためだけの俺が?」


「だからそんな事を言うな。生きている価値?そんなもんお前が決めるもんじゃない。周りが、この俺が決めるものだ。殺されるため?ふざけるな。誰だって生きる権利が生まれた瞬間についてくるんだ。誰もが自分自身をもっと大切にして、精一杯楽しく、笑って過ごしていけばいいんだ。十人に信じられなくても一人に信じてもらえればそれでいいんだ」


 なんで、こいつは俺に向かってそんな事を言う。

 ただ、ただ俺が思ったのは


「俺は……誰かの大切になっても、誰かを大切にしても、生きていても、心から笑っても、誰かに信じてもらっても、誰かを信じても俺は良いのか?俺は……俺のために生きてもいいのか?」


 何を弱気になっているんだ。そんなはずない。俺は異端者なんだ。異端者は貶されて貶されて貶されて殺されなければならないものだ。俺が必死になって生きているのは母さんのためだ。俺なんかのせいで母さんは殺された。その殺された母さんが俺に向かって生きてほしいといったのだ。天使なんかに負けず生きてほしいと。ならば、生きなければならない。だから俺は必死になって生きている。

 そんな俺が、俺のために生きるなんてことは


「当たり前だろ」


 おかしい、おかしい、おかしい。目から水が出てくる。これは母さんが殺されたときに流したものと違う。なんだこれは。


「なみだがとまらない。どうしてくれるんだ」


 困った。これは非常に困った。こんな顔誰にも見せたくないのに、泣くなんとことは絶対にしないと決めたのに止めたくても全く止まる気配がない。


「そのままずっと泣け。泣いて泣いて泣きまくれ。そんで自分を大切にしろ」


 そう言いながらカイは俺を抱きしめた。

 いつの間にか立場が逆転している気がする。というか、男に抱きしめられるなんて気持ち悪いことをするな。

 そう言ってカイをつき放してやりたかったが、どうも今の俺はおかしくて、人の温もりというものが居心地いと感じてしまって、突き放すことができなかった。

今回はちょっとシリアス?だったでしょうか。

セイヤの中が見れたような気がします。


次回はりぃーさんの番ですね。

頑張っちゃってください!


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