階段のない屋上にて
ちょっと頑張ってみました
~セイヤ~
くそ、恥ずかしい。どうしようもないぐらい恥ずかしい。
後でカイから記憶なくすぐらいの勢いで殴ってやろうか。いや、今すぐにでも殴ってやらないと気が済まない。
そんな事を思いながらも屋上に寝そべってしまってすでに動く気も失せているので実際にはどうもしない。
すでにやってしまった事だ。仕方ない。あれは、目にゴミが入っただけだ。
よし、言い訳完了。これで俺の中じゃどうにかなる。
わけでもなく、やっぱり恥ずかしい。これからは色々と気をつけて暮そう。人との関係を持つという事はそう言う事なのだろう。今までにやったことがないからよくわからない。本でも買って勉強すべきか?人間関係がどうとかいう本があったはずだ。あるに違いない。今日の帰り……っていうか家はないけど、学校が終わったら探しに行こう。
「なあ、セイヤ」
「なんだ」
「そろそろ戻らないか?たしか、四時間目終了のチャイム鳴ったよな。ってことは、今は昼時、つまりは昼飯だ。俺、昼飯食べたい」
そう言えば、確かに腹が減ってきた。何日食べてなくても大丈夫なのだが、せっかく一日三食食べられるのだ。食べないわけがない。
「そだな。階段どこだ?」
「残念なことにこの屋上に階段がないんだよね……。セイヤがあり得ないジャンプしてここに来たからこられたんだけど……どうするんだよ」
あー、残念。階段でおりたい気分だったのに。階段というものを設備してほしい。
「ちっ、分かった。ほら、早くこい。こないなら一人で飛び降りろ」
「ちょ、待って!?も、もしかして飛び降りる気!?」
「当たり前だろ。他に方法がない」
「…………ィ……ァ」
「ん?なんか言ったか?小さすぎて聞き取れない」
「何も言ってないけど。そして何も聞こえてない」
そんなはずはない。何かが聞こえた。空耳もあり得るけど、やっぱりそんな事はないはずだ。これでも一応天使とかから逃げてきただけの実力はあるつもりだし、そんな俺が聞き間違いをするわけがない。
耳を澄ましてみる。
「セイヤぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ」
えっと、俺を呼ぶ声が一つ。凄く叫んで呼ばれている。誰かに呼ばれるようなことをしただろうか。そんな事をした覚えは全くないのだけども。
「ほら、聴こえた。俺を呼んでる声」
「確かに。そしてその声の持ち主はセイヤの後ろから飛んで来ていて、そしてさらに凄い形相だ。正直怖いよ」
後ろ?言われたとおりに振り返ってみると、すでに学校の敷地内までそいつはきていて、すでに俺に飛びかかってきそうで、っていうか飛びかかってきていて、とっさに俺はそいつをよけた。
「ぐほぉ」
見事に顔面から着地してくれた。
「なんなんだ、お前は」
顔面から着地した女でない女、カイによると美人のルネア・レビレスはわきに何やら小さい者を抱えている。顔面から着地してしまったのはどうやらそいつを抱えているせいだったらしい。
「俺の事忘れたのかよ!」
「忘れるか。朝からいったい何なんだよ。いい加減殺すぞ」
「ちょっと!何物騒な事言って!」
「こちらの事情だ。今は首を突っ込むな」
そう言うと、カイは大人しくなってくれた。とても助かる。できれば込み入った事情の事はこいつやアズには話したくない。
「しょういぃ、いい加減はなしてくださいよぉ」
「おお、悪い。すっかり忘れてた」
「酷いですぅ」
小さい者を優しく地面に置く。不利になったらこの小さい者を人質にとろう。どうやら大事にしているようだ。
「で、なんだよ」
「あのさ……お前、魔獣三体も倒したんだって」
「そうか、あいつらは死んだのか。残念だったな。どうやら生きていく気をなくしたらしい」
そうか、やっと俺の事に気が付いたのか。
「で、なんだ?いったい何がしたい。殺すか?一回助けた俺を殺すか?良いだろう。相手になってやるよ。ほら、かかって来い。俺はお前をいつでも殺せる」
いつでもはちょっと言い過ぎた。ルネア・レビレスの実力がわからない。どうせ今こいつから出てきている威圧感は抑えているものだ。だから正直言って負ける可能性もある。
「ちょっと待てよ!俺と一緒に来い。その、大人しく俺ときたら悪いようにはしないし」
「なんとでも言ってろ。どうせ俺は牢にぶち込まれて実験材料にされたあげく、殺されるんだからな。悪いようにされないというなら永遠と実験材料か。それもごめんこうむる」
くそ、カイの事が気になって仕方がない。無駄に黙りやがるし。確かに首を突っ込むな、といったが、ちょっとは突っ込んでこいよ。じゃないと、お前の状況が分かりにくい。
「そうだ、やっぱりサシでやらないか?観客がいるのはどうも嫌いでな」
「だから、俺はお前と戦う気はない!」
「なら今すぐ消え失せろ。俺は昼飯が食べたいんだ」
「じゃなくて、俺と来たら」
「実験材料にされるだけで済むって?それもごめんだと言ったはずだ」
「セイヤ!!」
今まで黙っていたカイが何故か叫んだ。カイの身に何か起きたのではないかと思って振り向いてみると、目の前が何かに覆われた。次の瞬間には地面に叩きつけられている。
「うぐっ!」
「よくやった。お前が気を引いてくれていたおかげで手間が省けた」
くそっ、仲間がいたのか。俺と来たらとか言っていたくせに仲間を連れて来ていたなんて、もう少し警戒するべきだった。
「メイルニーア!」
「黙っていろ。すぐに片付ける」
次の瞬間、頭に強い衝撃を受けた。殴られたところだけじゃなくて地面のせいで後頭部も痛い。
意識がだんだん薄れていく。頭から血が流れているのがわかる。
カイは、大丈夫なのだろうか。あいつは一応ただの人間だし、危害を加えられたりしないはずだが、昼飯にありつけるかはわからない。
いつの間にか、カイの事が気になっていた。自分の事はもう諦めたのかとも思ったが、それとは何所か違うような気がする。
それでもやっぱり、カイは今まで通りの生活が送れるのかと心配になる。
「てめっ……」
「まだ気を失ってなかったか」
「カイには手を――」
その続きを言う事も出来ず、俺は意識を手放した。
これでも頑張ったんです(汗
えー
次はリぃーですね
よろしくお願いします