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第7話 噂

 コヨミはクワを手に取ってそれを振り、先っぽを畑に突き立てていた。乾いた土がえぐれて中から黒い土が顔を出す。コヨミは何度も何度もクワを畑に突き立てて、それを繰り返している。権作がコヨミに話しかける。

「コヨミちゃん、お疲れ様。今日はもうええで。兄ちゃんにもよろしくな」

「はい、お疲れさまでした」

「これ、今日の分じゃ」

「ありがとうございます」

 コヨミは権作から野菜をいくつか貰うと、それを持って畑を後にした。そしてむき出しの太陽が空に見えている中、その下の乾いた道を歩いていく。コヨミが村に着くと、村の子供たちが遊んでいる。コヨミより一回り小さい子供だった。子供たちがコヨミに気が付くと、彼らはコヨミに話しかけた。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんはどうしたの?」

「ダメ太郎、ダメ太郎!」

 子供たちは無邪気そうに太郎のあだ名を呼んでいる。彼らにはダメ太郎というあだ名に込められている意味もわからないのだろうとコヨミは思った。

「うーん、お兄ちゃんはね、今ちょっと出てるの」

「出てるってどこへ? 家出?」

「ダメ太郎! ダメ太郎が家出!」

「違うの。ちょっと、やることがあって、家を出てるのよ」

 子供たちは顔を見合わせると笑いながらコヨミの元から走り去っていった。コヨミは再び歩き出すと中年の女がコヨミに話しかけてくる。

「ちょっとコヨミちゃん。お仕事終わったの?」

「あ、はい。さっき終わって、これからまた別の仕事に……」

「あらそう、大変ねぇ。あの人、今はどうしてるの?」

「兄はちょっと家を出てまして……」

「家を出てるの? 山にでも籠ってるのかしら?」

「はあ、そんなような感じです」

「あらそう。いやね~。わざわざ山までご飯届けに行ってるんでしょ?」

「いやー、どうでしょう」

「大変ねぇ。仕事だって掛け持ちして、山にご飯届けに行って。自分の時間なんてほとんどないでしょ?」

「失礼しますね」

 コヨミはそう言うと、女を置いて歩き始めた。しばらく進むとコヨミたちのボロ小屋が見えてきた。コヨミはその家に入ると、せまい居間の上に野菜を置いた。板で出来た壁のすきまから、外の村人たちの様子も伺うことはできたが、コヨミはしなかった。そんなことをしたところで、村の噂好きな連中を黙らせることなど出来はしないと知っているからだ。コヨミは髪を整えると、再び家から出て仕事に向かった。

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