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第4話 洞窟

 翌日になり太郎は家を出て村の端で陽に当たることにした。昼の暑い日差しはジリジリと太郎の身体を焼いていく。太郎が板で出来た塀に寄りかかり、ボーっとしていると、後ろから村人たちの声が聞こえてきた。

「聞いた? あの子、またダメだったそうよ」

「聞いた聞いた。漁師のゲンさんところでヘマをやったんですってね」

「それで次は権作さんのところの畑仕事。それもヘマしてダメだったんですって」

「あら~。もうダメダメね。ダメ太郎ね、あの子」

 村人たちの遠慮のない噂話は、太郎の耳に嫌でも入ってきて、太郎はそれを聞いてなんとも表現しがたい感情に襲われるのであった。まるで自分が村という群れの中から排除されるような、そんな錯覚を味わうのである。太郎は村人たちにばれないように立ち上がる。

「それに引き換え、あの子の妹はよくできた子ね」

「ほんとね~。あの兄がいてあの妹がいるなんて、信じられないわよね~」

 太郎は塀からそっと離れると、村を出た。そして道なき道を歩く。左右の林やヤブの中から誰か覗いていて、自分を馬鹿にしているんじゃないかと太郎は思ったが、もちろんそんな者はおらず、太郎は黙々と太陽のぎらつく陽気の中を歩いていった。

 太郎が小高い山を登っていくと、平地とはまた違った景色の植物が目に入るようになった。太郎は山の植物が好きだった。ふと太郎は立ち止まり、紫色のキキョウを手で愛でると、再び歩き始めるのであった。しばらく太郎が山道を登っていくと、小さな洞窟があった。この洞窟は、太郎がこの鬼山を登っているときに見つけたものだった。この洞窟には妹とも一緒に来たことがあって、太郎は愛着を持っていた。太郎は洞窟の中に入る。ぎらついていた太陽は岩の遮蔽に隠れて、洞窟の中はひんやりと涼しかった。太郎は洞窟の奥に進み、後ろを振り返る。洞窟の入り口はまだ大きく、洞窟の長さがそれほど長くないことがわかる。太郎は入り口に背を向けてそこに座ると、壁を見ながらゆっくりと目を閉じた。太郎の背中には洞窟の外で鳴いているヤマガラの鳴き声がわずかに届いていた。

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