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第3話 畑仕事

 翌日になり、太郎とコヨミは朝早く家を出た。そして村を出て、晴天の空のもとしばらく歩くと大きな畑にたどり着いた。畑ではすでに一人の男がクワを持って耕していて、男は二人を見ると声をかけた。

「おお、来たかい。コヨミちゃん」

 男はにこりと笑ってコヨミに挨拶する。そして隣の太郎を見ると、真顔になってコヨミに聞いた。

「こいつがお前さんの?」

「はい、兄の太郎です。今日はよろしくお願いします」

 男はクワを立ててその尻に両手を乗せると、じろじろと太郎の顔を見る。

「ふーん。なるほどねぇ。ま、いいんじゃないか。俺っちとしては畑を耕してくれりゃ、文句はないべ」

 男はそう言うと、クワを新しく二本持ってきて、二人に渡した。

「根が強い雑草なんかも生えちょってるから、そういうの全部抜いちゃってくれり。ここら一帯そんな感じで頼むわ」

「わかりましたぁ」

 太郎とコヨミはそれを合図にしてクワで畑を耕し始める。太郎は耕しながら『今日もまた暑くなるのだろう』と思っていたが、雑草にクワの先がかかると、それを抜くのに思案することになった。かなり深くクワを立てても雑草の根は取れず、太郎は力任せにクワを振り回すのだが、それでも雑草は取れなかった。

「おいおい、そんなクワを振り回したら、壊れるべ」

 男はそう言って太郎に注意する。だが太郎はその注意に一瞬耳を傾けたかと思うと、再び雑草のためにクワをぶんぶんと振り回すのであった。男は眉をひそめながら太郎を見ている。

 次第に時間が経ち、太陽がまたギラギラと陽を照り始める。畑の地面が熱を持ち、だんだんと暖かくなっていく。周囲の草むらからは狸が顔を出し、三人の様子を眺めていた。太郎はその狸を見て『今日の晩飯にできるぞ』と思い立ち、クワを止めて狸に近寄って行く。するとコヨミの声が聞こえた。

「お兄ちゃん、どこ行くの? 仕事の途中でしょ?」

 太郎はコヨミに注意されるとふてくされた表情を浮かべ、再びクワを手にする。狸はすでにいなくなっていた。太郎は畑に生えている雑草にやきもきしながら、クワを振り回して雑草を掘っていた。その時だった。

 太郎の振っているクワがぼっきりと二つに折れたのだ。太郎は呆然と折れたクワの柄の部分を持って眺めている。すると男が叫んだ。

「あ! こりゃ! なにやってんだ! 大事なクワを!」

 男は太郎に走り寄ると太郎の持っているクワの柄を太郎からひっぺはがした。コヨミも太郎のもとに走り寄る。

「だから言ったでねーか! 乱暴に扱ったら壊れるぞって! どうすんだこれ!」

 コヨミはペコペコと男に頭を下げて「すみません、すみません」と謝っているが、太郎は相変わらずぶすっとしている。太郎は『クワの一つぐらいで何を騒いでいるんだ』と思ったが、それを口に出すことはしなかった。『だいたい、このクワにはもともとヒビが入っていた。そんな不良品を俺に渡したのはお前だろう』と太郎は思いながら男を睨む。男は太郎に睨まれながら、次の言葉を吐き捨てた。

「はん。だめだ、おめーは。ダメ太郎だな。もういいぞ、帰って」

「そんなこと言わずに」

 コヨミは男にすがるように言ったが、男は言うことを聞かずに首を振る。太郎は男とコヨミに背を向けて、その場から去っていく。

「お兄ちゃん!」

 コヨミの空しい声が、太陽の照りつく畑に響いた。

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