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巻き込まれ幼女召喚〜無人島を拠点に自由気ままな異世界ライフ〜  作者: るあか
第一章 私たちだけの島

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8話 見習い職人の誕生

 ディーナさんは一番右端のカウンターへ行くと、そこの担当をしているイヌ耳のお姉さんに事情を説明してくれていた。

 イヌ耳のお姉さんが「では後は私が引き継ぎますね」と微笑むと、ディーナさんは「お願いします」とお辞儀をし、目の前で待っていた私と向き合う。

「職人の登録はこのカウンターでします。私は入り口の案内係に戻りますので、この“イヌ耳族”のお姉さんと一緒に登録してくださいね」

「分かりました、とっても助かりました。ありがとうございました」

 ペコリとお礼。ディーナさんはカウンター横にあった踏み台をサッと設置すると、笑顔で手を振りながら去っていった。


 ディーナさんの最後の気遣いに感謝しつつ、踏み台に乗ってカウンターから顔を出した。

「それではまずこちらの紙にご記入をお願いします」

 イヌ耳族のお姉さんはそう言って1枚の用紙を差し出す。ちなみにこのお姉さんはブランカさんという名前らしい。

「はい、分かりました」

 “職人登録届”と羽根ペンを受け取って、早速必要事項を記入していく。

「えっと、名前は……ユノ・カグラ……っと。性別、女。種族……!?」

 どうしよう、人間で良いのかな……。すると、ブランカさんが「ユノさんの種族は“人間族”ですよ」と助けてくれた。

「あっ、ありがとうございます。あの、田舎者で分からないことばかりでごめんなさい……」

「先程の案内の者から伺っているので大丈夫ですよ。なんでも気軽に聞いてくださいね」

 うぅ、ブランカさんも優しい……。商人ギルド、優しい人たちばかりで良かった。

「助かります……えっと、早速なんですけど、生年月日が……5歳で、2月2日生まれなんですけど……」

「えっと、5歳と言うことは……“コモン暦1029年”生まれのはずです」

「ありがとうございます。1029年……っと。出身も在住もウルユ島……」

 さっき自分で決めたばかりの島の名前を書くのはちょっと恥ずかしいけど、嘘はついていない、はず。


「あっ……報酬って銀行振込なんですか? どうしよう、私、口座がなくて……」

 口座どころか1C(クレド)も持ってないのよ……。

「口座は開設してから登録することも可能ですので、空欄で良いですよ。その場合報酬は直接手渡しになります」

「そうなんですね。あの、銀行口座って、5歳でも作れますか?」

 私がそう尋ねると、ブランカさんはふふっと吹き出し「銀行口座の開設も年齢制限はないので作れますよ」と答えてくれた。

 笑われてしまった。普通銀行口座の話なんて5歳児がするものじゃないよね……。

「分かりました。また今度作ってきます」

「ふふっ、はい♪」

「えっと……多分全部書けたと思うんですけど……」

「ありがとうございます。確認しますね」

 ブランカさんは1つ1つ丁寧に確認をしていく。


「はい、これで大丈夫です。すぐに会員証をお作りしますので、あちらのソファに掛けてお待ちください」

「はい、お願いします!」

 ペコリとお辞儀をして踏み台から降り、踏み台を元の位置に戻す。

 ルキちゃんとウルはソファで待たせていたので、そこに合流した。

「なんとか登録出来たよ♪ 今ね、会員証を作ってもらってる」

『良かったですにゃ』

『わぁ、楽しみだね♪』

「うん♪」

 ちなみにルキちゃんとウルの念話は周りの人たちには聞こえていないようなので、あんまりしゃべり過ぎないようにした。独りでしゃべってるヤバい奴って思われちゃうし……。


⸺⸺15分後。


 ソファで足をブラブラしていると、ブランカさんがカードを持って目の前まで来てくれた。

「ユノさん、お待たせしました。こちらが商人ギルド、職人会員証になります」

「わぁ、ありがとうございます!」


⸺⸺⸺⸺


 【商人ギルド 職人会員証 No.AC863】

 ユノ・カグラ 女 生年月日:1029年2月2日

 ウルユ島在住 Fランク職人:次のランクまで10


⸺⸺⸺⸺


 いつどうやって撮ったのかは知らないけれど、ちゃんと顔写真付きだ。びっくり。


「こちら身分証としても使えますので、銀行口座の開設の際に他に身分証がなければこちらをお使いくださいね」

「分かりました!」

 この世界の身分証。ちゃんと私はこの世界の住人なんだっていう証。嬉しくなった私はニヤニヤが抑えきれなくてはにかんでいた。


「ふふっ、会員証、嬉しいですか?」

 と、ブランカさん。

「はい! とっても!」

「良かったですね♪ 初めは皆さんFランクの見習いからのスタートです。たくさん依頼をこなして昇格していってくださいね」

「あっ、ランクって言うのがあるんですね。教えてもらっても良いですか?」

「もちろんですよ。隣、失礼しますね」

 ブランカさんはそう言って私の隣に腰掛けた。


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