51話 だって赤ちゃんだもん
⸺⸺ウルユ島、拠点⸺⸺
ウルユ島に戻ったらお留守番組にましゅたんの紹介をして、早速稲と大豆を植えた。
ラフちゃんは稲も乾いている土で育てるそう。日本にいた頃もそう言う技術はあったみたいだから、ラフちゃんなら乾いた土でもきっと育てられる。
ましゅたんは、ラフちゃんが面倒を見たいとのことなので、ラフちゃんのお家に隣接するように小人用のログハウスを設置。ラフちゃんのお家と扉で繋げて中から行き来が出来るようにした。
ログハウスの中には原木や瓶を置いて、ましゅたんが好きなようにきのこを栽培して、食べて、味噌や醤油を作れるようにした。鰹を用意すれば鰹節が作れるし、ミルクを用意すればチーズにしてくれる。
ましゅたんのおかげできのこ類や発酵食品の幅が大きく広がった。
そんなましゅたんは拠点の環境が気に入ったのか、ラフちゃんが畑仕事をしている間、拠点中をよちよちコロコロと散歩していた。
⸺⸺
数日経ったある日、ウッドデッキで紅茶を飲んでいるとましゅたんがハリトリオを引き連れてコロコロと転がりながらウッドデッキに乗り込んできた。
『ましゅたん、ころころ、ころころりん♪』
『モモちゃん、ころころ、ころころりん♪』
『アオちゃん、ころころ、ころころりん♪』
『キィちゃん、ころころ、ころころりん♪』
みんなましゅたんを先頭に一列に並んでコロコロと転がっている。
「なんか可愛い侵略者が……」
「ほっほー……♪」
すると、ルキちゃんが1本のメタの木の枝を咥えてカフェテーブルに飛び乗ってきた。
『ユノ、大変ですにゃ。ましゅたんがべちょべちょに舐め回してしまって素材としては使い物になりませんにゃ』
「えっ、そうなの?」
確かに、そのメタの木を見るとシトシトになっている。これ、ましゅたんのヨダレなのか……。
「ねぇねぇ、ましゅたん」
『あい、ましゅたんだよ?』
ましゅたんは転がるのをやめて、その場でお座りをして短いお手手をハイッと挙げた。
ましゅたんが突然止まったためにその後ろではハリトリオたちが玉突きになってポヨンポヨンと跳ねていた。
「ましゅたんは、きのこ好き?」
『きのこのこのこ、だいしゅき♪ たくさん食べうもんね♪』
ましゅたんはそう言って嬉しそうにもぞもぞする。
「食べる……ペロペロって、舐めたりはしないの?」
『あい、きのこのこのこは、ガジガジするもの♪』
「なるほど……じゃぁ、これは?」
私はシトシトになったメタの木の枝をましゅたんに差し出した。
『あーっ、ましゅたん、これちゅっちゅ、だいしゅきだもんね♪』
ましゅたんはメタの木の枝を受け取ると、ちゅっちゅと吸っていた。
「なるほど、こぐまちゃんはきのこを舐めてたけど、ましゅたんはきのこは食べるもので、舐めるのは木が良いんだ……」
「ほっほー……」
『個性じゃな』
と、長老。
『このままじゃ倉庫の木の在庫がべちょべちょ祭りですにゃ』
「分かった、私に考えがある。その木の枝は乾かして火起こしの素材にしよう」
『はいですにゃ♪』
私は倉庫から新しいメタの木の枝と水色の染料を取ってくると、クラフトパネルをピピッと操作してクラフトをした。
「じゃじゃーん! 木のおしゃぶり〜!」
私はクラフトしたものを高らかに掲げた。色は水色の優しいお色。
「はい、ましゅたん。倉庫にある木は大事な素材だから、これをちゅぱちゅぱしてくれる?」
ましゅたんの口におしゃぶりをスポッと入れると、ましゅたんは早速ちゅっちゅと吸い出した。
『ましゅたん、これちゅっちゅしゅる〜♪』
どうやら気に入ったみたいだ。そして絵面が最高に可愛い。
「ましゅたん、それ、他にも色んな色のやつを作ってあげようか?」
『あい、ましゅたん、たくさんちゅっちゅしゅるもんね♪』
早速色んな色のおしゃぶりをたくさん作ると、ましゅたんは全部抱えて嬉しそうに自分の家に置きに行っていた。
それからは倉庫のメタの木が舐められることはなくなり、ましゅたんは毎日違う色のおしゃぶりを咥えてコロコロしていた。
更に、ましゅたんがお気に入りのおしゃぶりをちゅっちゅすることでなぜか味噌等の発酵速度も大幅に上がり、このウルユ島に味噌、醤油、鰹節の在庫が溜まってきたのであった。
『ユノ、見てください! お米がこんなに出来ました♪』
ラフちゃんがそう言って見せてくれたのは、バスケットに山盛りになった殻付きのお米である籾だった。
「わぁっ! すごいね! これならみんなでお米が食べられるよ♪」
『ハイ! だんだん植える量も増やしましたので、これからは毎日このくらいのお米が収穫出来ます♪』
「あーん、ラフちゃん最高っ! ありがとうね、私のお米を食べたいって言うわがまま聞いてくれて」
『良いんです。ウチも食べたいし、みんなにも食べてもらいたいですから』
「そうだね、早くみんなに食べさせたいし、クラフトで精米しよう!」
クラフトパネルでピピッと白米をクラフト。バスケットの中の山盛りの籾だったお米は、粒の大きい白米へと変化したのであった。
よーし、ウルユ島でもお米、食べるぞ!




