44話 ウルユ島の日常
それから数日は、キッチンの冷蔵庫の隣に冷凍庫を設置したり、各家に冷蔵庫の設置をしにいったりと、電気屋さんみたいな生活を送っていた。
最近の手が空いた時のお気に入りの過ごし方はウッドデッキのカフェテーブルでカフェラテを飲みながら素材図鑑や魔導具図鑑を眺めること。
コーヒーは5歳児の味覚ではブラックでは飲めなかったので、ラカノン牧場で買ったミルクを混ぜまくって飲んでいる。
カラッとして穏やかな気温に、時折周辺の木々を撫でる程度の風が吹く。そんな中で飲むカフェラテは最高だ。
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住民のみんなはと言うと、ランスロットとハリトリオの鉱山組は朝一でエイストンへと出かけていき、昼過ぎに戻って来て各々好きなことをしている。ランスロット曰くハリトリオはソファで団子になって昼寝をすることが多いそうだ。
ラフちゃんとゴブくんの農業組は午前中に収穫を終えてラカノンの農業ギルドへ納品に行き、午後から明日に向けての栽培をしている感じだ。
その作業が終わると、ラフちゃんもカフェテーブルで私と一緒にハーブティーを飲んでいる。
ゴブくんは最近はランスロットと一緒に釣りをしている。
ウルは倉庫の素材が少なくなるとあちこちに素材を集めに行ったり、お城を建設予定の島の北の方の開拓をしている。
ルキちゃんは私の後を付いて回ったり、ウルと一緒に出かけたり、拠点のあちこちで昼寝をしたりしている。たまぁに独りでマルシャンにも出かけており、マルシャンの港を散歩するのが好きなようだ。
女神像の結界を見て回るのもルキちゃんの大事な役目だ。ルキちゃんがこうして女神像の結界を維持してくれているおかげで、私たちは安全に穏やかに暮らすことが出来ている。
最後に長老は、基本的にクラフト台かカフェテーブルの上ですやすやと寝ている。
今も私がカフェラテを飲みながら図鑑を見ている目の前でぐっすりだ。だから私もたまに長老のお腹をもふるのが癖になってしまった。
基本的に朝食は作り置きしておいたパンのバイキングで、昼食は各々自由に。晩御飯はラフちゃんとゴブくんと3人で作って、みんなで揃って食べる、と言うのがこのウルユ島民の日常だ。
ちなみに五右衛門風呂は今は屋根付きの塀で囲われて、脱衣所も設けてプライバシーもバッチリ守られている。
毎日お風呂に入るのは私とラフちゃんとゴブくんで、ウルとルキちゃんと長老は気まぐれに水浴びをして遊んでいる。
ランスロットはお湯に浸かるよりもマイクロファイバーのタオルで全身を磨いたりする方が良く、ハリトリオはたまにお風呂場でランスロットに洗われている。
住んでいる家の内訳は私の家にルキちゃん、ウル、長老。ランスロットの家にハリトリオ。ラフちゃんとゴブくんはそれぞれ1人で小人用の小さな家で暮らしている。そんな感じだ。
⸺⸺
「ん〜……!」
図鑑を閉じて椅子から立ち上がり、うーんと伸びをする。そう言えばここ数日商人ギルドの依頼をしていなかった気がする。お金もかなり溜まってきて余裕があるので、そんなに一生懸命働く必要もないのだ。
「たまにはお仕事するか……。長老、マルシャン行ってくるけど、どうする?」
「ほっほー……」
『ワシも行こう』
「おっけー」
リュックを用意するとその中に長老がすっぽりと収まり顔だけ出すので、長老と出かける時は私はそれを背負って出かける形になる。ちなみにエイストンへと行くときはふかふかの魔道ローブのフードに長老を入れている。初めてエイストンに行った時と同じだね。
⸺⸺港町マルシャン、商人ギルド本部⸺⸺
「ユノちゃん、いらっしゃい。この前はありがとうね」
と、ディーナさん。
「ディーナさんこんにちは、こちらこそ楽しかった。またやろうね♪」
「ぜひぜひ!」
ディーナさんと他愛もない話をして、依頼書の壁を眺める。そしてEランクの依頼書を2枚とDランクの依頼書を1枚取ると、一番右奥のカウンターへと向かった。
「ブランカさん、こんにちは。この3枚の依頼を受注したいです」
そう言って3枚の依頼書と会員証を提示した。
「ユノちゃん、こんにちは。かしこまりました。ただいま受注処理を行いますので少々お待ちくださいね」
ブランカさんはテキパキと受注処理をしながら、小声で「この前はお鍋ありがとなぁ」と囁きながらウインクをしてきた。
「うん、またやろ♪」
⸺⸺
「お待たせ致しました。No.Eー30786、No.Eー30789、No.Dー40030の受注が完了致しました。こちら依頼書と会員証のお返しです」
「ありがとう! じゃぁ、お仕事してきます」
依頼書と会員証をポシェットへしまうと、商人ギルドを後にしてウルユ島へと帰還した。
よし、久々にガッツリ働くぞ♪




