39話 鉱業ギルド
「ランスロット、やってみない……?」
「俺が……鉱業ギルドに?」
「と言うか、ランスロット、それからモモちゃん、アオちゃん、キィちゃん、良かったらウルユ島ってところで一緒に暮らそう」
「!?」
驚き戸惑うランスロットたちへ、私たちの生活の話を一部始終した。ランスロットだけではなく、鉱員さんたちも「無人島を開拓!?」と興味津々に聞いていた。
⸺⸺
「事情は把握した。ぜひ俺にその城の素材集めを手伝わせてくれ!」
ランスロットは力強くそう言ってくれた。ハリトリオも全員『ウルユ島に住みたい!』と大賛成。私はホッと胸を撫で下ろした。
「ありがとう! お城の素材集めはついでで良いから、みんな、島での生活や鉱業ギルドでの活動を楽しんでね♪」
「分かった、ありがとう。ジェイク殿、早速会員証を発行してくれ。そして、仕事の内容を教えてほしい」
「キュゥ!」
「キュゥキュゥ!」
「キューッ!」
ハリトリオもやる気満々に名乗り出る。
「えっ、モモちゃんとアオちゃんとキィちゃんも鉱業ギルドに入ってくれるの?」
私がそう尋ねると、3匹とも『掘り掘りしたい!』と迫ってきた。
「あはは、ありがとう! ジェイクさん、この子たちの分もお願いします。ランスロットとパーティを組ませますので」
「分かりました、4人分の会員証を発行しましょう。鉱業ギルドの仕事内容は単純明快。依頼のあった鉱石をスネーフ鉱山から採ってくるだけです。その時に余分な鉱石が採れてしまっても、ギルドが買い取ります」
ジェイクさんはそう説明をしてくれた。なるほど、農業ギルドの“鉱石版”だ。
「その時に、自分たちが使いたい分を採掘するのは可能か?」
と、ランスロット。ジェイクさんは大きく頷いた。
「ええ、もちろんです。そのために会員証を発行しますし……。スネーフ鉱山はマナが豊富で特殊な鉱山でして、毎月ダンジョンのように中の構造が変化します。そのため“鉱山再構築日”と呼ばれる日は入山出来ませんが、その代わりまた色んな種類の鉱石がたくさん生み出されます。ですので、気にすることなく好きなように掘っていただければと思います」
「ダンジョン鉱山……すごすぎ……」
スネーフ鉱山がSDGsな特殊な鉱山だから、こんな寒くて孤立したような所に町が出来ていたんだ。確かにそんな掘り放題なら寒くても頑張って住もうって思えるわ……。
「良かったな、ユノ。それなら気兼ねなくウルユ島への土産を掘れそうだ」
「うん、そうだね、ランスロット♪」
ランスロットもめちゃくちゃやる気で助かる。
それから早速鉱業ギルドの会員証を発行してもらい、ここに新たな鉱員パーティが誕生した。
⸺⸺
町の人々がみんな酒場から散って行ったので、私たちも出発することに。
「ユノちゃんたちは、ウルユ島に帰るのかい?」
と、マスター。私は首を横に振る。
「ううん。せっかくだからスネーフ坑道を抜けて、グラキエスって町にも行ってみようと思います」
「おぉ、良いじゃないか。グラキエスはボレアス島中の名産が出回っているから、きっと面白いと思うぞ」
「わぁ、そうなんですね♪ 楽しみ〜」
ボレアス島中の名産……港町だからか。同じ港町のマルシャンと似てるかな?
そんな想像を巡らせながら、ひとまず鉱業ギルドの建物の前まで行き、ファストトラベルに登録。
そして、ランスロット以外のみんなが大きくなったウルによじ登ると、ウルとランスロットは再びスネーフ坑道を目指すのであった。