31話 クラフトパネルの便利機能
⸺⸺長老がウルユ島の住人になってから数日経ったある日のこと。
私は自分のお家のクラフト台の上にクラフトパネルを広げて悩んでいた。
「う〜ん……“氷の魔石”ってどこにあるのかな……これさえあれば冷蔵庫も冷凍庫も冷蔵室も色んな魔導具が作れるのになぁ……」
“魔導冷蔵庫”のクラフト画面を開いて“氷の魔石”の分布を見るけれど、ウルユ島のどこにもない……はず。
ファストトラベルのリストと同期しているらしく、マルシャンやラカノンの周辺も確認出来るけれど、氷の魔石は見当たらない。
私は癒やしを求めてクラフト台で昼寝をしている長老のお腹をもふもふした。
「あ〜、長老、癒やされるわ〜」
長老のもふもふなお腹にボフッと顔面を埋める。きめ細やかな羽毛がピチピチフェイスをふわっと包み込み、顔面から全身の隅々まで幸せが広がっていった。
「ほっほー……」
『……ウルユ島の各地に散らばる謎の紋様に一つ、怪しい光有り』
「えっ!?」
長老が意味深な事を呟いたため、思わず顔を上げてクラフトパネルに目を向けた。
クラフトパネルは氷の魔石の分布画面で止まっている。
「謎の紋様……転送魔法陣のことかな……あっ!?」
分布図に散らばる転送魔法陣を確認すると、一つだけ赤く点滅しているマークを見つけた。
「これってまさか……この転送魔法陣の先に氷の魔石があるって事!? 長老すごいよ、ありがとう! これも鑑定眼の力……!?」
『……否、クラフトパネルなるものは実に興味深く、注意深く見ていただけじゃ』
「ほっほー……」
「あ、そうなんだ……それでも、ありがとう。おかげで冷蔵庫が作れそうだよ」
長老はここの住人になってからよくクラフト台の上で寝ているけど、クラフトパネルを見るのが面白くてここにいるんだ。
長老はあまり多くを語らないから初めて知ったよ。
『その先へ、向かうのかのう?』
「うん、まだ午前中だし、今から行って来ちゃおうかな」
『……ユノよ、もふもふを抱け』
少年よ大志を抱け、みたいなセリフ飛んできた……。
「もう十分吸ったよ?」
長老のお腹をすーはー、したもん。
『氷の魔石が自然発生すると言うことは、寒い土地と言うことじゃ』
「あっ、暖かい格好をして行きなさいって事!?」
『……左様』
長老、微妙に分かりづらいんだよ……。あっ、もしかして、私が“もふもふ”って言ってばかりいるから、それにレベルを合わせてくれたのか……!
なんだか若者言葉を無理して使って使いこなせていないおじいちゃんみたいだよ……。
でも、心配してくれているのはありがたい。
「ありがとう長老。転送した瞬間凍り付くのは嫌だもんね」
じゃぁ、この赤く光る転送魔法陣の先へ行くメンバーを募って、クラフトで防寒具を作成しようかな。
それにしても、まさかクラフトパネルの分布機能が女神様の配置してくれた転送魔法陣にも対応していたなんて……。
あ、でもよく考えてみればクラフトのスキルも女神様からもらったものだから、そう考えるとありえない話じゃないのか。
もしかしたら他の属性の魔石も他の転送魔法陣の先にあるのかも?
長老のおかげでこのウルユ島の暮らしもまた一気に快適になりそうだ。
さて、みんなに相談しなくちゃ。
私はクラフトパネルを閉じてウッドデッキから集合をかけた。




