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3話 クラフトって最高

「女神様、私たちの座標がズレちゃったって言ってたもんね」

『言ってましたにゃ』

「つまり……本当は人のいるところに転送しようと思ったけど、ズレて無人島になっちゃった……って、ところかな……」

『そうかもしれないですにゃ……』


 なんてこった。今度こそ終わりじゃない。無人島でサバイバルなんて……そんな第二の人生、あり?

 すると、私のお腹の虫が「ぐるるる〜」と大きな音で鳴り響いた。

「うえーん、お腹空いた……ルキちゃんは?」

『僕はどうやら聖獣になって、お腹が空かなくなったようですにゃ』

「えっ、そうなの? 良いなぁ……」

 聖獣がお腹好かないなら、この狼も大丈夫なのかな? とにかく、それなら私のお腹を満たせるものを何か探さないと……。


『ユノ、あっちの岩場で魚を獲ったら良いですにゃ』

 ルキちゃんはそう言って向こうに見える岩の海岸を指し示した。

「なるほど……でも、どうやって獲ろう……私、泳げないんだよね……」

 いや、この身体になったら泳げるようになってるかもだけど。

『釣り竿とか……作ったらどうですかにゃ?』

「釣り竿を作る……!?」

 木の棒に(つる)を括り付けたような原始的な物を想像する。いよいよサバイバルじゃないか……。

 しかし、その時ふと、野崎さんの付けてもらおうとしていた特典の事を思い出した。

「クラフト……クラフトって、色んな物を作るスキルの事を言うんだよね。それも間違えて私かルキちゃんに付けてもらったりしていないかな?」


⸺⸺私がそう言葉を発した瞬間、私の目の前の空中に女神様が触っていたような光のパネルが出現した。


「わっ、わわ、何、これ……」

 みんなで光るパネルの文字を読んでみると、“クラフト図鑑”と一番上に書かれていて、日用品、武器、防具などのカテゴリーが並んでいた。

「これ、クラフトだ! 私がさっきクラフトって言ったから出てきたんだ」

『やりましたにゃ! 勇者さんには悪いけど、ユノがもらっていて良かったですにゃ。一番下の虫眼鏡のところで検索が出来そうですにゃ』

「うん、そうだね、早速検索してみよう……えっと……文字ってしゃべったらいいのかな……“釣り竿”!」

 そうパネルに向かってしゃべると、虫眼鏡の横に“釣り竿”と入力されて、検索結果にイラスト付きの釣り竿が表示された。


「おぉ、あったあった!」

 早速釣り竿をタップしてみると、必要素材のところに“木の枝”、“糸、または(つる)”、“鉱石”と書かれていた。

「かなりアバウトな材料設定だね……あ、木の枝をタップしたら使える候補がたくさん出てきた」

 (かし)の木の枝やら、樹木の名前がズラーッと出てくる。このどれかに当てはまれば良いって事だ。


「よし、ちょっと森に戻ってそれっぽい物を採ってこよう♪」

『はいですにゃ』

「がう、がう」

 パネルを開きっぱなしにして森へ走ると、パネルも一緒に付いて来る。開きっぱなしで採取したり出来るのか、便利〜。


 そして異様に長い枝をウネウネと伸ばしている木の枝を狼に叩き折ってもらい、ダラダラと伸び放題の何かの(つる)をルキちゃんに噛み切ってもらった。後は鉱石だけど……小石でいっか。

 材料を足元へ置いてもう一度パネルを覗くと、“木の枝”と書かれていたのが“メタの木の枝”に変わり、“糸または蔓”は“テーラの蔓”に、“鉱石”は“小石”に変わって、それぞれの横に緑色のチェックマークが付いた。今拾った枝や蔓ってこんな名前だったんだ……聞いたことないや。

 更に、さっきまでグレーで表示されていた“クラフト”の文字が白く浮かび上がっている。

「これ、出来るってことだよね! よし、やってみよう♪」

 クラフトをポチッと押すと素材がすぐに光に包まれ、その光が収束すると足元に釣り竿が出来上がっていた。

「おぉぉ〜! 釣り竿が出来たー!」

『やりましたにゃー♪』

 出来上がった釣り竿を高らかに掲げて大喜びする私。クラフト、楽しいかも♪


「後はエサだけど……虫は嫌だな……。そうだ、検索マークを押して……釣りエサ!」

 検索欄に釣りエサと入力され、いくつか候補が上がってくる。その内の“木の実の釣りエサ”と書かれているのをタップした。

「ふんふん、“ピスカの実”って言う木の実が釣りエサになるのね……でも、どんな木の実か分かんないな……」

 試しに“ピスカの実”と書かれている部分をポチッと押してみると、グレーの小さな実の画像が表示された。

 更に、画面の右下に“分布”と出てきたのでそれも押してみると、画面が地図に変わり、地図のあちこちで赤く点滅していた。

『これ、この周辺の地図ですにゃぁ』

「ね、このクラフトってスキル、ただクラフトするだけじゃなくてこの世界のこと色々教えてくれるんだね。あっ、指で拡大したり縮小したり出来るんだ……」


 私は地図を思いっ切り縮小してみる。すると、私たちが今いるのは“島”だと言うことが分かった。周辺には海が広がっているばかりで、近くに他の島や大陸はなさそうだった。


「ま、とりあえず今はピスカの実よね……」

 絶望してもしょうがないので再び地図を拡大する。すると、赤く点滅している印の他に、魔法陣の様なマークが所々に付いているのも気になった。これは後で行ってみたほうが良さそうだ。


 ひとまず赤い点滅の所まで行き、画像そっくりのピスカの実を回収。その実から釣りエサをクラフトした。

「出来た、これでバッチリね♪ よし、魚を釣りに行こー♪」

『はいですにゃ!』

「がう、がう!」


 クラフトってスキル、最高なんだけど。これさえあれば、この世界のこと色々勉強出来そうだし、ここでも暮らしていけそう。

 なんだかわくわくしてきた私は、狼に乗って海岸まで戻るのであった。


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