27話 農業ギルド
「農業ギルドって、何をするところ?」
私はとりあえずそう尋ねてみる。
「早い話が『食材を納品するところ』やで。ほら、毎日収穫出来るんやろ? せやったら、もっと植える量増やして余分な分は農業ギルドに納品したらええよ。依頼もあるし、ギルドに直接売ることも出来るから、毎日採れた野菜が無駄になることもあらへんよ」
「何それ最高じゃん……。ラフちゃんとゴブくんはどう思う?」
『や、やりたいです……! 農業ギルド……!』
『ワイもやってみたいだべ♪』
ラフちゃんは頭のお花をふるふるさせて興奮しており、ゴブくんはマッタリと微笑んでいた。
『でも……ウチら、言葉が伝えられません。それでも良いのでしょうか?』
と、ラフちゃん。
「あっ、確かに。ねぇ、ブランカさん。ラフちゃんもゴブくんも言葉が伝えられないけど、それでも良いの?」
「うん。文字も理解出来て、言葉も理解出来るんやろ? せやったら大丈夫や。その代わり、“ユノちゃんの使い魔、もしくは従魔”ってゆう登録の仕方になってまう。ユノちゃんが保護者みたいなもんってことやね」
つまり、未成年の登録に保護者の同意がいる、みたいなものか……。
「それでもいい? 2人とも」
私がラフちゃんとゴブくんに話を振ると、2人は元気にうんうんと頷いた。
『問題ありません!』
『だべだべ』
「分かったよ。じゃぁ、料理食べちゃって登録に行こうか♪」
『やったー!』
「キュゥ♪」
「フゴッ♪」
⸺⸺
お腹がいっぱいになったところでブランカさんのかーちゃんにたくさんお礼を言って、黒山羊亭を後に。
そして、ディーナさんとルキちゃんとウルは牧場の動物を見に行った。なんかディーナさんにペットの面倒任せちゃう感じになった……。
私とラフちゃんとゴブくんはブランカさんに案内されて農業ギルド本部の建物へ。木造の一際大きな建物がそびえ立っていた。
⸺⸺農業ギルド本部⸺⸺
ブランカさんにはソファで待っててもらって、3人でカウンターへと向かった。
「こんにちは。本日はどうされましたか?」
カウンターのイヌ耳のお姉さんがそう対応をしてくれる。
「あの、この子たちをギルドに登録したいんですけど、出来ますか……?」
「ヒトの言葉が理解出来れば、ギルド活動も可能ですよ♪」
「大丈夫です。話せませんけど、字も読めるし、言葉も分かります」
「それでしたら問題ありません。こちらにご記入をお願いします」
お姉さんは2通の“使い魔・従魔用農家登録届”を渡してくれた。
せっせと自分の情報と2人の情報を書き、お姉さんへと提出して、会員証の発行を待った。
⸺⸺そして。
「キュゥゥゥゥ〜!」
「フゴゴ〜!」
ラフちゃんとゴブくんは『ユノ・カグラ従魔ラフちゃん』と書かれた会員証と『ユノ・カグラ従魔ゴブくん』と書かれた会員証を高らかに掲げた。
「良かったね、おめでとう2人とも!」
「頑張るんやで♪」
パチパチと拍手を送る私とブランカさん。ちなみにラフちゃんとゴブくんは“パーティ”を組んで活動をすることになり、報酬や経験値は共有されるとのこと。それからお財布は全ウルユ島民で共有なので、報酬は私の銀行口座へと振り込まれる。
まだ納品出来るほど畑が広くないので、今日のところは会員証の発行だけで終わった。
⸺⸺
“農業ギルド本部前”をファストトラベルに登録をすると、種売り場へと向かう。ナスやピーマンにキャベツ。それに染色に使えるカラフルなお花の種も売っていたので、今後の私のクラフトのためにも、たくさんの色のお花の種を買っておいた。
「白菜とかはないんだね……?」
後、大根とかほうれん草もないなぁ。
「あぁ、寒い地方でしか育たへん野菜やな。その種をこの温かい土地で売っても需要がないから、売ってないんやね」
と、ブランカさん。
「そっかぁ。だからマルシャンの町でも白菜めっちゃ高かったんだ」
「そそ。それに、売ってる数も少なかったやろ。だから、もし今後寒い土地に行って白菜とかの種を手に入れられて育てられたら、ギルドでも他の野菜よりも高く買い取ってくれるから、試してみるんやで」
「分かった!」
種を買い終えると牧場にいたディーナさんたちと合流。
ラフちゃんとゴブくんが畑を拡大したくてウズウズしていたため、ディーナさんとブランカさんをマルシャンの町まで送ると、私たちもウルユ島へと帰宅した。
ブランカさんの故郷のラカノンはのんびりした空気の流れるとっても良い町だった。
それに、今後お肉とか乳製品を買うときは“ラカノン牧場”で買おうかな♪
ブランカさんの実家の酒場も美味しかったし、今日は外食しよーって時は、あそこで決まりだね♪




