22話 ピザパーティー
⸺⸺翌日の商人ギルド帰り。ウルユ島拠点。
「じゃじゃーん♪」
私は島のみんなへ商人ギルドの会員証を見せびらかした。
「見習いのFランク職人から、Eランク職人へ昇格しました♪」
『わーっ! おめでとう!』
と、盛り上がる一同。
大量発注の依頼を受ければ毎日ギルドに通わなくても十分に暮らしていけるし、なんなら依頼をこなす度に新しい服が1着買えるようなレベルのため、ギルドには数日に1回通っていた。
そのため経験値の歩みは緩やかだったけど、この度晴れて昇格を果たしたのであった。
『Eランクになったらどんな依頼が増えたのですか?』
と、ラフちゃん。ラフちゃんは人間の暮らしに興味津々だ。
「うん、Eランクになったらね、私に関係のありそうなもので言うと、ガラス製の納品依頼を受けられるようになったの。早速ガラスのコップとお皿の依頼を受けてきたよ」
『ガラスですか。ガラス製の食器は木製の食器とはまた違った上品さがありますよね』
「そうだね〜。これを機に我が島にもガラス製の食器を導入しようと思います♪ とりあえず今日からお水を飲むコップはガラス製にします」
『はぁ〜い』
と、一同。
「更に、ルキちゃんとウルには首に巻くお揃いのバンダナを。ラフちゃんとゴブくんにはお洋服を買ってきました♪」
私は紙袋からバンダナを取り出すと、ルキちゃんとウルの首に着けてあげた。
『んにゃ。ありがとうですにゃ♪』
『わぁ、これ、僕が大きくなったらはち切れる?』
と、ウル。そんな問いに私はふふんとドヤ顔をした。
「これは、大きさを変える魔物のペット用だから、ウルが大きくなったらバンダナも大きくなります」
『え〜! すご〜い。ありがとうユノ!』
ウルはそう言って大きくなったり小さくなったりしていた。
次にラフちゃんへワンピースを。ラフちゃんの大きさなら小人種の子どもサイズの物が丁度いいんじゃないかと思って買ってきたら、案の定ピッタリだった。
『お洋服……実はとっても憧れていたんです♪ ありがとうございます〜!』
ラフちゃんはわんわんと泣きながらお礼を言っていた。
「あはは。お金はすぐに稼げるから、これからは欲しいものがあったら何でも言ってみてね」
最後にゴブくんへ同じく小人種の子どもサイズの紺色のつなぎを着せてあげて、麦わら帽子を被せた。
もうどこからどう見ても農家だ。漁師にも見える。
『ありがとだべさ♪ この帽子気に入ったべ。ワイ、これからも畑仕事に魚釣り頑張るべな♪』
⸺⸺
そんなこんなで野菜がもう収穫出来るようになっていたため、みんなで収穫をした。
ルキちゃんと小さくなったウルは人参とじゃがいもを掘り掘り。ゴブくんは小麦の刈り取りを。私とラフちゃんで残りの野菜の収穫。
採れた野菜は小麦、たまねぎ、人参、じゃがいも、トマト、レタス、きゅうり、パプリカ、にんにくの9種類。
マルシャンの市場で買い足したチーズ等の食材と合わせて、今日はピザとサラダとスープを作ります♪ レシピはマルシャンの本屋さんでレシピ本を購入。
小麦はなんと脱穀前の採れたての小麦をクラフトすれば、薄力粉、中力粉、強力粉、更にはパスタなどの乾麺を作れることが判明。
これだけで料理の幅がグッと広がる。
今日は薄力粉と強力粉を作成。ウッドデッキのキッチン台へと移動し、マルシャンで買い足したドライイーストやオリーブオイル、塩も使ってピザ生地をこねこね。
ピザ生地を発酵させている間に興味津々にキッチンを覗いていたラフちゃんとゴブくんへ包丁の使い方やスープの作り方をレクチャー。
ラフちゃんはサラダ、ゴブくんはスープの担当になり、私はトマトをベースにピザソース作り。
ルキちゃんとウルはその辺で揉みくちゃになって遊んでいた。
⸺⸺そして、夕暮れ時。
クラフトで作った石窯からチーズの焼ける良い匂いが漂い、お皿に取り出して切り分ける。
真ん中にランタンの置かれたカフェテーブルに、サラダにスープ、そしてピザが並んだ。
『わぁ〜、昨日のお魚の香草焼きと言うのも美味しかったですが、このピザと言うのもとっても美味しそうです♪』
ラフちゃんはそう言って鼻をクンクンとさせた。
「今日の食材はほとんどがウルユ島産だからね。昨日とは一味違うぞ〜。じゃぁ、みんな手を合わせていただきます♪」
『いただきます♪』
「んー、美味しい〜! 日本にいた頃はこんな生地からピザを作ろうなんて考えた事もなかったけど、やってみたら楽しかったし、美味しい♪」
『どうして考えた事もなかったのですか?』
と、ラフちゃん。
「どうしてかな……。疲れてたから、かな……? 今はね、色んなことから解放されて、すごく楽しいよ♪」
『そうでしたか、ヒトの暮らしも楽しいことばかりではないと言うことですね。ウチも、邪気から解放されてすごく楽しいです♪』
「邪気か……魔物も魔物で大変そうだよね……」
『ワイ、腹ぺこだったべ。いくらでも食べられるべ』
そう言いながらガツガツ食べるゴブくん。
「えっ、お腹空くの? ルキちゃんとウルはお腹空かないんだよね?」
うんうんと頷くルキちゃんとウル。
「ラフちゃんは?」
『私はお腹空きますね〜。排泄もトイレを借りていますよ。もふもふ系と人型系で違うのでしょうか?』
「なるほど。あっ、だからトイレットペーパーが減ったような形跡があったのか! 早い段階で知れておいて良かった」
もう、ほとんど人じゃん。
だからラフちゃんは“ヒトの暮らし”って言うものに興味があるんだ。自分も同じような生き物だから、同じように生活したいんだ。
だったら、家も作ってあげなくちゃ。
⸺⸺翌朝。
みんなで朝食を済ませると、ウルに土地を開拓してもらい、私は“小人種用ログハウス”というのを2軒クラフトした。
これならログハウスの半分くらいの魔力でいけたため、私の魔力でも一気に2軒作ることが出来た。
『ウチの家! 最高ですよ〜!』
『ワイにまで……ありがとだべ〜』
今日はもう魔力がほとんど残っていなくて家具を作ってあげることは出来なかったけど、それでも2人はとても喜んでくれて、自分の家で着替えたりと、積極的に使ってくれていた。




