16話 日常の始まり
朝食後、魔力残量を確認したら25%になっていた。84%も使っていたから、9%回復している。ウルの言う通り食べるとちょっとだけ回復するようだ。
昨日依頼品として作成した木のお皿は必要魔力が0%になっていた。多分本当にゼロなんじゃなくて、1%未満ってことだ。
つまり、このくらい小さい物なら今日はまだたくさん作れるから、今日もやっちゃおうかな、納品依頼♪
昨日のうちに女神様が着せてくれてたワンピースは手洗いをして干しておいたんだけど、すっかり乾いていたので島着からワンピースへと着替える。島着も桶でバシャバシャと手洗い。
ただ、もう一着ワンピースが欲しい……! 昨日服屋さんで見たあの2000Cのワンピース、あれが買いたい。
「えっと、昨日のお金の残りは……」
作業台へ目を向けると、460Cとギルドの会員証が無造作に置いてあるのを発見した。
「460Cか……あんま残らなかったな。ってか、お財布作らなくちゃ」
クラフトパネルを開くと“クエの蔦”と“ラソワの実”でポシェットが作れたため、ベージュの質素なポシェットを作成。首に掛けて、460Cと会員証をしまった。
よし、今日は2000C+晩ご飯代を稼ぐのを目標にしよう。
「ルキちゃん、ウル! 商人ギルドに行くよ!」
『はいですにゃ』
『うん!』
ルキちゃんとウルが私の周りに来たのを確認すると、ファストトラベルでマルシャンの商人ギルド前へと飛んだ。
⸺⸺港町マルシャン、商人ギルド⸺⸺
「まぁ、ユノさん、おはようございます。今日も納品依頼の受注ですか?」
クマ耳族のディーナさんが入り口で出迎えてくれる。
「ディーナさん、おはようございます! はい、あっ……もう受付って開いてるかな……」
そう言えば私、時計持ってないんだった……。
「ふふふ。時間を見ないで来たんですね、大丈夫です、ちょうど9時を過ぎたところですよ」
ディーナさんはそう言って壁に掛けてある時計を指し示した。
「おぉ、良かった! あの、依頼って、一度にいつくまで受注出来ますか?」
「依頼は3つまで同時に受けることが出来ますよ♪」
「分かりました! ありがとうございます!」
ペコリとお礼。
「ふふ。頑張ってくださいね」
私は納品依頼のたくさん貼ってある壁へと直行し、どんな依頼があるかを眺めた。ルキちゃんとウルも手分けをして依頼を見てくれている。
「Fから始まる依頼は……と」
低い位置の依頼しか見れないけど、こうして見てみるとFランクの依頼もたくさんあった。
私は1枚の納品依頼書を手に取る。
⸺⸺⸺⸺
納品依頼No.Fー20581
【依頼品】
・木彫りのペンダント×20
・ミサンガ×20
デザインは職人にお任せ(5種類以上)
【納品期限】
残り7日 ○月×日12時まで
【報酬】
4000C
【依頼主】
露店商人ジェイ・ブレッド
⸺⸺⸺⸺
なるほど、露店で売られているアクセサリーはこうやって仕入れているのか。デザインお任せで1つ100Cで買い取りますよーってことよね。よし、これを受注しよう。
昨日受けた依頼は一般の人からだったけど、多分商人ギルドの本来の使い方はこういうことなんだよね。職人さんと商人さんの仲介、それが商人ギルドなんだ。
その依頼書を壁から剥がすと、少し離れたところでルキちゃんとウルが『ワンピースがたくさん買えますにゃ』『お肉もいっぱい食べられるね』と盛り上がっている事に気付いた。
「なになに? 何か良い依頼があったの?」
2匹のもとへと駆け寄る。
「んにゃ♪」
『カフェからの依頼ですにゃ』
「どれどれ……」
⸺⸺⸺⸺
納品依頼No.Fー20603
【依頼品】
・木製プレート皿×30
※直径20cmくらいの物、仕切り無し
・木製の中皿×30
※直径15cmくらいの物
・木製ティースプーン×30
【納品期限】
残り20日 ○月×日12時まで
【報酬】
22000C
【依頼主】
カフェ・マリンキャット
⸺⸺⸺⸺
「やば……」
オープンの準備をしてるってことかぁ。
でも、一般人からの依頼の方が数量が少ない分、依頼品1つ辺りの単価は高めだった。こっちは大量発注でコスト削減的なあれだね。
まぁでも、美味しすぎる依頼であることに変わりはない。納品期限もまだまだあるから、今日中にやる必要もないし。
「よし、この2つを受けることにしよう」
カフェ・マリンキャットの依頼も壁から剥がすと、昨日と同じ端っこの受付にいたイヌ耳族のブランカさんを訪ねた。
「ユノさん、おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ブランカさんおはようございます。今日はこの2つの依頼を受けたいです」
そう言って2枚の依頼書と会員証を提示する。
「かしこまりました。受注手続きを行いますので少々お待ちください」
「はい!」
⸺⸺数分後。
「お待たせ致しました。“納品依頼No.Fー20581”と“Fー20603“の受注処理を行いました。こちら依頼主からの納品用の“魔導圧縮袋”となっておりますので、こちらをお使いください」
ブランカさんはそう言って2枚の麻袋を渡してくれた。
魔導圧縮袋とは何ぞや……!? まぁ、なんとなく想像できるよ。きっとお皿が60枚も入りそうにないこの袋の中に全部収まっちゃうんでしょ。
「はい、ありがとうございます!」
2枚の依頼書をたたみ、会員証と共にポシェットの中へと入れて、麻袋を掴んで商人ギルドを飛び出した。
そっか、お金が欲しくなったらこうやって商人ギルドで依頼を受けて、普段はウルユ島で好きなことをする。これが、私の新しい日常なんだ♪




