11話 頑張ったごほうび
⸺⸺港町マルシャン、中央通り⸺⸺
『お金、落としちゃうよ?』
と、ウル。はっ、本当だ。嬉しすぎて握りしめたままだった。
「ありがとう、ポケットに入れておこう」
ワンピースのポケットにガサッとしまう。後でお財布作らなくちゃ。
『ねぇねぇ、ユノ。さっきの納品依頼で職人経験値はいくつ入ったのですかにゃ?』
「あっ、そうだね。会員証見たら依頼書みたいに勝手に数字が変わっていたりするのかな……」
ポケットから会員証を取り出してみると、案の定『次のランクまで10』だったのが『9』に減っていた。
「あはは、経験値は1だったみたい」
『と言うことは次のランクまであと9個依頼をこなさなきゃと言うことですにゃ』
「うん、9個なんてすぐだよ。それに別に急いでないからのんびりやるよ」
「んにゃ♪」
さて、この1440Cで何を買おうかな〜。この中央通りはお店がたくさん並んでいて、ウィンドウショッピングだけでも楽しめた。
子供用・小人用のお洋服屋さんを見つける。あのワンピース可愛い……でも、2000Cだ、買えない……! 服はしばらくクラフトで我慢だな。
本屋さん。異世界の本ってどんなのがあるのかめちゃくちゃ気になる。素材図鑑とか、地味に欲しいかもしれない。
本屋さんへと入ってみると、まず目に入ったのが“魔法書コーナー”だった。すごい、流石魔法のある世界……!
お目当ての素材図鑑もあれば、魔物図鑑や装備図鑑、魔導具図鑑など興味のそそる図鑑をたくさん見つけた。しかし1冊8000C……いつか全部の図鑑そろえた〜い!
通りを歩いていると途中から食材ばかりが売っているゾーンへ突入した。
野菜に果物、お肉、調味料……。
「よし、今日の晩御飯を買おう!」
「にゃ♪」
「わぉん♪」
頑張ったごほうび。今日はBBQだ!
牛バラ肉200g、400C。豚ロース肉80g、100C。塩、胡椒それぞれ50C。人参1本50C、ピーマン1個20C、ナス1本50C、玉ねぎ1個30C。ロールパン3個40C。イチゴジャム1ビン100C。卵1個10C。
計980C、チャリン。
「お嬢ちゃん小さいのにおつかいかい? 偉いね〜! ほら、りんごを1つオマケだ」
と、お店のおじさんにちびっこ特権でりんごを1つサービスしてもらっちゃった。ラッキー♪
明日の朝ご飯も買えた。お肉はルキちゃんとウルにあげる分も。
お米が欲しかったけど売ってなかった……! 炭で焼いて塩、胡椒なんて白米が無限に進むやつなのに……飯ごうで炊きたかった。他の町には売っているのだろうか。まぁ、少しずつ分かっていけば良いよね、この世界のこと。
買った食材の入っている紙袋を覗いて思わずニヤニヤとはにかむ。無人島にいるのになんて贅沢な晩御飯なんだろう。大丈夫、私、この世界でやっていけそう♪
「あっ、ビール買うの忘れた……」
『お酒はダメですにゃ。まだ5歳ですにゃ』
「あ〜、そうだった〜! でも、無人島は法律なんてないんだから……」
『そう言う問題じゃないのですにゃ。ダメですにゃ』
「はい、そうよね……」
ピチピチベビーフェイスの唯一の欠点。でも、それを差し引いても5歳児最高!
さぁ、帰ろう私たちの島に。暗くなるまでにある程度の準備はしちゃいたいんだ。
ファストトラベルを開いて、ウルユ島の拠点へと帰還した。