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魚龍書院/ゆうろんしゅーゆん  作者: 黒森 冬炎


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第四十九話 端午祭の夜 

 一年が過ぎ、端午祭の夜が来た。魚龍川の岸辺には、青々とした柳の枝が揺れている。下流の村では、恒例の賑やかな祭りが開かれる宵だ。魚龍書院の廊下には、月の光が射し込んでいる。禁足地から出てきた桃を、明山雨が出迎えた。


「散仙の一家が端午祭に行こうって呼びに来てるよ。楽兄も舟舟もお祭りに行くって。どうせ刺客が襲って来るから、新しい薬とか陣とか招式とか試したいらしい。阿桃はどうする?」


 桃は以前ほど外を飛び歩かなくなっていた。魚龍書院の禁足地にある、公輸一族の研究施設に篭っている日が多いのだ。十年前の惨劇で命を落としたことになっている散仙一家は、突然の帰還以降、自由に書院を出入りしていた。


「手配書に加えられてないってのが、腹立つよな」


 彼らは書院だけでなく、何処へでも遊びに行っているのだ。雲風天院長と三人の弟子、そして居候の明山雨が、書院にいても外に出ても刺客に襲われ続ける日々を送っているというのに。


「鵲国皇帝も何考えてんのか分かんないよね」

「雨雨、相変わらず呑気だよな」



 一年が経ち、桃の娘ぶりが上がったのは、引きこもりで筋肉が多少落ちたからばかりでもないだろう。引きこもりがちでも鍛錬を怠たらずに続けていた。鵲姐と山奥を飛び回っていた頃に比べれば、運動量が減ったと言うだけだ。深窓の令嬢たちに見られる体型には程遠い。しかし、瑞々しい若さと外面の権力闘争に煩わされる日々が培った忍耐力の融合が、一種神秘的な美しさを生んでいた。


「なんだよ、呑気って」


 一方の明山雨は、一年間の練功により武人の体格になっていた。元々背丈がありがっちりとしてはいたのだが、武功を鍛えた人の外見とは違った。それが一年間魚龍書院で過ごした後には、一角(ひとかど)の高手に見えるようになった。



「はあ。現在皇帝が潰そうと狙ってんのは、二叔(いーしょっ)でもなければ、二婶(いーさん)でもないだろ」

「そうなの?」


 どんぐり眼をパチクリする山雨の肩を、桃は腕を伸ばしてバンバンと叩いた。外見は武人でも、雰囲気は相変わらずの明山雨だ。桃の変化が主に内面に現れたのとは反対に、明山雨はほぼ外見だけが変わっていたようだ。


「え、ちょっと、何すんの」

「や、ごめん、笑いそうになって、くくく」


 桃は尚もバシバシ叩く。


「やめて」

「ごめん、くくく」

「ああもう」


 山雨は鬱陶しそうに桃の手首を掴んだ。桃はぴたりと動きを止めた。ちょっと気まずい雰囲気が流れる。



「いやさ、真面目な話、今皇帝と睨み合ってんのは永明公主と梨花城だろ」


 国公は首都神鵲京にも邸宅を構えている。しかし、本拠地は梨花城だ。代々優れた軍人を輩出し、鵲国総司令官である国公を務める人物も歴史上何人もいる衛一族の故郷である。そこの世継ぎはなかなかの美男子だが、武功に優れた快男児である。永明公主との仲睦まじい姿は、しばしば目撃されていた。


「永明公主が成人式で貰った鉄鱗港は、元々、皇帝からの刺客に狙われる衛梨月が匿われていた場所なんだよ。それを国費で要塞化して皇帝の暗殺部隊を撃退してる、って言うんだから、実の娘だろうと永明公主は排除対象みたいだよ」

「散仙は別に梨花仙人親派でもないから、放置されてるのか」

「放置、うん、そうだね。正直なところ、皇帝が一番手を焼いてるのは自分の長女なんだろうよ。永明公主を相手にするんで手一杯」


 一年前に出回った手配書は、十年前の叛逆事件にかこつけて国公府を潰すのが目的だった。残党狩りは本来の狙いとは少し違う。そのため、故人扱いの散仙と謝照児(せーじういー)をわざわざ手配書に加える手間は省いたようだ。



「それで、どうする?散仙たちと一緒に行く?」

「そうだね。行ってみようかな」


 明山雨は、魚龍川の端午祭に行くのは初めてだ。


「大きな魚の形をした灯籠を泳いでいるように操ったり、龍を型取って五色の縞模様に塗り分けた舟で競争したり、影絵芝居が上演されたり、楽しい出し物や屋台がたくさんあるんだってね」

「あたしも初めて行くんだよ」

「そうだったね」


 桃は世俗と関わらず、修行に明け暮れる日々を送っている。魚龍書院の門下生は、武林大会のようなイベントにも参加しない。それは、叛逆冤罪事件が起きる前からのことだ。明確に禁止されていないのだが、権力闘争に巻き込まれるのを嫌って誰も参加しないのだ。


「五色の糸で編んだ飾り紐を髪に付けるんだって。厄除けになるって聞いたよ。お祭りの屋台で買えるらしい」

「へえ。厄除けか。いいね」


 話しながら書院の前庭に出る。散仙一家五人、雲風天院長、楽と舟、の八人が薄闇の中に立っていた。



 一行は、わいわいと祭りの屋台を覗いて歩く。香り高い粽や色とりどりの干果物が食欲をそそる。髪紐屋台はいくつもあった。シンプルな組紐から、飾りが付いているものまで様々な種類が並んでいた。


「どれにする?」


 明山雨は、幾つか手に取って桃の髪に当ててみる。


「飾り付きも似合うね」

「そうか?」


 照れた桃の笑顔にデレデレする明山雨は、紐の先に小さな金色の鈴が付いている物を勧めた。


「これが良いんじゃない?一番似合ってるよ」

「これ良いね。おじさん、これにするよ」

「あ、待って、僕払う」

「え?いいよ」


 桃がびっくりして山雨を止める。


「見てよ、みんな男の人が女の人にあげてるでしょ」


 その通りだった。飾り紐は若い男性から若い女性への贈り物になっている。


「ほんとだ。そういう習慣なのかな?」

「想い人に渡すんだよ」


 屋台の主が口を挟んだ。桃は赤くなって頬を抑えた。


「えっ」


 固まる桃を脇目に、山雨はさっさと代金を支払った。


「結んであげる」


 明山雨は、心上人(おもいびと)問題は華麗にスルーして、いそいそと髪飾りを桃の髪房に結びつけた。肩まで下がる五色の紐先で、金色の鈴が店先の灯りを反射する。先程から手元に何かが飛んでくるが、袖口の裏に桃が刺繍してくれた防御陣が作動する。


 何事もなかったかのように、今度はお菓子を物色する。魚龍酥(ゆうろんしょう)と呼ばれる、魚の形をした焼き菓子だ。ほろほろの皮が人気の郷土菓子である。中身がわかる屋台もあれば、おみくじのように中身が分からない屋台もあった。


「因縁魚龍酥をふたつください」


 明山雨は、中身が分からないものを手に入れた。桃は別の屋台で、中身が公表されているものを包んでもらっている。胡桃餡、胡麻餡、梅花ペースト、魚に焼豚。全部で五種類だ。


「阿桃、全部の味買ったの?」

「うん。どれも美味しそうだよ。帰ったら分けて食べよう」

「僕ももっと買えばよかったな」


 交換するには数が釣り合わない。明山雨が申し訳なさそうに下げた眉を、 袖擶特有の羽がない短い矢が掠める。


「髪紐のお礼だよ。気にしなくて良いって」


 明山雨が毒消しを眉毛に塗る間に、桃が答えた。


「いや、でも」

「いいったら」


 言いながら、桃は酒を売る屋台に差し掛かる。竹筒に入れた数種類の酒がある。桃が手に取ったのは、「龍児黄(ろんいーうぉん)」と書かれている。龍児シリーズは五色あって、それぞれ味や香りが違うのだ。香りはからりと潔く、喉越しが豪快な辛口の黄色は、主に武人が好む酒だった。


「これ、毎年師父が呑んでるやつだ。ここで買ってたのかあ」

「端午祭限定って書いてあるね」


 二人がラベルを確認していると、すれ違い様に尖った簪を向ける女がいた。二人は「いつもの山歩き」を使った。桃は山雨に歩法を習ったのだ。それを活かして、攻撃を避けると同時に目眩しもして逃げたのだ。料金を手に乗せた店番のおばさんが、キツネにつままれたような顔をしていた。


「ん?みんなは?」


 桃がキョロキョロする。


「あれ、逸れちゃったね」

「そうみたいだな」

「まあ、どうせみんな書院に帰るからいいか」

「そりゃそうだよな」


 二人が落ち着き払って状況を受け流している背中に、粒状の爆弾が投げつけられた。桃も山雨もハンカチを取り出して飛んでくる全ての爆弾を集め、内功で火を消した。



剑网3·侠肝义胆沈剑心

搞笑、遊戯改、武侠、アニメ

原作 剑侠情缘网络版叁 

日本では遊べないMMORPG

2018

監督 周沬

沈剣心 宝木中阳

なんだかんだで侠肝義胆な主人公

中の人は琅琊榜で誉王(黄维德 飾)を担当

だいぶ違う感じです


珍しく毎回、オープニングからエンディングまで飛ばさず観た武侠喜劇アニメ

武侠喜劇でバカ笑いしたい人向け

そういう人は、視聴可能な環境で配信されたら是非!

原作ゲーム知らないというか日本では出来ないんですけど、全く問題なし

二季はそれほどでもない

三季はもはや別物

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