第四十七話 燕辰江の漂流者
武林高手の闘いは、普通の捕頭が介入できるレベルではない。川沿いの住人や通行人が通報したところで、役人たちが駆けつける頃には、もう見えない場所まで移動していた。
「こりゃ我々の手には余るな」
「門衛に期待するしかない」
「仕方ない。帰るか」
「そうだな。諦めよう」
身の丈に余る傘を華麗に操り、降り注ぐ暗器を跳ね返す子供。揺れる小舟の内外を自在に飛び回る男が二人。子供の後ろに立って、全方位からの攻撃に対応する老人。神鵲京の南北を割って東西に走る燕辰江の流れに乗って、騒ぎは東門へと進む。
神鵲京の東口にあたる海神門は、水上通路と陸上通路を併設している唯一の城門だ。ここの門衛は、水陸共に対応出来る精鋭が担当している。
「止まれ!」
「止めろ!」
門衛たちが口々に制止の言葉を叫ぶ。壊れそうな小舟は勢いをつけて突き進む。城門を抜ける時、追手は高く飛び上がった。軽功で城壁を飛び越えたのである。城門の上に並んでいた衛兵たちが弓を引く。しかし、間に合わなかった。小舟の二人と、乗ったり降りたりしながら攻撃を仕掛けている二人は、あっという間に郊外へと去って行った。
下流でも所々に舟が停まっていた。今乗っている古い舟より遥かに頑丈そうである。側に人はいないが、きちんと管理されている川船かも知れない。
「ふんっ!」
袁海が江水を抱えて跳ぶと同時に、乗っていた舟を内功で砕いた。
「暗中冰雹!」
一見出鱈目のような動きで、江水は砕かれた木片を傘の縁で弾いた。欠片は弾丸のように西狼スパイ二人組を襲う。
「暗闇で急に雹が降ってきて、慌てふためいた人の動き」
「ぐわあっ」
袁海と江水の内力が乗せられた木片が、毒を塗られた飛鏢を捉えて持ち主の元へと戻る。追手の身体に触れた時、木片は軽い爆発を起こした。その隙に袁海と江水は、川辺の舟に乗り移った。持ち主がいるかも知れないが、命の方が大事だ。舟は後で返せばよい。
「逃すか!」
老人と子供の反撃は激しい。全身に傷を負いながら、追手の二人は遅れずに続く。
「やあああっ!」
左右から飛びかかる追手が、鎖を投げて袁海を舟の外に引きずり下ろした。
「おじいちゃん!」
「構わず行けっ!」
袁海は上半身を鎖で巻かれている。そのまま水上を軽功で走りながら、追手と脚でやりあっていた。
「でもっ」
高手の闘いで迷いは命取りだ。隙ありと見た追手たちが、すかさず江水に毒功を放ってきた。
「桃花落水!」
江水は海老反りしながら開いた傘を回す。そのまま垂直に跳ね上がり、内功を込めた傘を飛ばして毒功を中和した。
「満開の桃の花を見上げて、川辺でうっかり足を踏み外した人の動き」
飛ばされた傘は追手の頭を襲った。
「あっ」
追手は思わず頭を押さえた。追手の髷は綺麗に切り取られ、頭頂部は剃り上げたように丸い無毛地帯が出来上がっていた。
「ガキ!」
怒りに任せて、追手は袁海を川に沈めた。体を捻って江水が舟に着地する。その手に傘が戻って来た。
「おじいちゃんっ!」
江水が川を覗き込む。すると、鎖の端を掴んでいた二人組が下から引っ張られるようにして、水の中へと姿を消した。
「おじいちゃん」
呟きながら見ていると、何かが水中を突き進んでいるように川面が波だった。江水は慌てて内功を使って舟を進めた。
水面に出来る縦の線が、下流へと向かう。しばらく江水が追いかけて行くと、突然水飛沫が上がった。広範囲の水を巻き込んで飛び出して来た袁海は、水の翼を広げる仙人のようであった。袁海を追いかけるように水から出て来た二人は、動きを揃えて毒手を構えた。
「逃げろ!」
鎖を引きちぎり血を滲ませた袁海が、掠れた声で江水に叫ぶ。
「おじいちゃんもっ!」
江水は袁海から奇毒教の男二人を引き離そうと内功を放った。
「小癪な」
二人も傷だらけであるが、子供と老人に抵抗されている屈辱が怒りとなって猛攻を仕掛けてきた。激しい攻防を続け、川舟は矢のように下ってゆく。
何度目かの大技が来た時、袁海は全力で小舟を押し流した。
「先に行って待ってなさい!」
「おじいちゃーん!」
「やっ!」
毒功を混ぜた水が降りかかるが、小舟は猛スピードで走り出す。ニ対一の激戦がどんどん遠ざかった。
「おじいちゃん」
江水は傘で防ぎきれなかった毒霧で、目が霞んできた。やがて意識も遠のいてしまった。
語り終えた舟は、優雅な仕草で水を一口飲んだ。
「三師弟は、魚龍渓谷の河原に流れ着いたんすよね?」
魚龍川は、魚龍渓谷から流れ出て、燕辰江の下流に合流し、鉄鱗港へと向かう。舟が神鵲京から燕辰江を下って来たならば、魚龍渓谷に辿り着くためには、合流地点から遡らなければならない。
「おそらく、魚龍川との合流地点で陣が誤作動したんだろう。邪教の毒功と袁家鎮の秘功と、毒で乱れて暴走した舟の内力とがいちどきに陣に流れて、川船を上流へと送ったんだと思う」
「へーえ、なるほど」
桃は感心して頷いた。スパイの証拠品も片付けられたので、一同はテーブルへと戻って来た。
「それもまたご縁でございます」
「そうだねえ」
楽はにこやかに同意した。
「僕の場合は、魚龍川の水源地帯から流されて来ただけだったけどね」
「それだって縁なんじゃないすか?岸辺に打ち上げられず、海まで流されちまったかもしれんすよ」
「言われてみれば、確かにそうだねえ」
「わたくしどもは、やはり、皆この魚龍書院にご縁があって流れ着いたのでございますね」
「そうだなあ」
院長も感慨深そうであった。
「三師弟、袁海公公とは、その後会えたのか?」
桃が思い出したように聞いた。
「はい。今は永明公主となった一皇女殿下を頼って、鉄鱗港で暮らしております」
「舟よ」
「はい、何でございましょうか、師父」
「ここに留まるならば、掟は守って欲しい」
院長は厳しく舟に告げた。舟は悲しそうに目を伏せた。
「ええ、充分理解致しております。朝廷とは無関係であるよう心がけます。鉄鱗港は永明公主殿下の要塞ですから、なるべく近づかないように気をつけておりますよ」
袁海と共に暮らすなら、書院を出て行くことになる。祖父同然の袁海と離れているのは、さぞかし心配なことだろう。
「永明公主自身にも気をつけた方がいい」
「師父、どうしてすか?もしかして皇族ってだけじゃ無いんすか?丐幫少主ってのは、書院にとっちゃなんともないすよね?」
桃は理由を知らないようだ。
「永明公主は鵲国皇帝が排除したい梨花仙人の一派と繋がってるからな。また書院が叛逆罪に巻き込まれるのはごめんだ」
「え、師父、もう巻き込まれてんじゃねっすか?」
桃がキョトンとして尋いた。明山雨もその気持ちには大いに共感した。
「今はまだ冤罪だろう?お前さんが国公府の小僧を助けたのは偶然なんだからな」
「そりゃまあ、そっすね」
「本格的に巻き込まれて、書院が利用されたら困る」
「敵も増えちゃいそうだよねえ」
楽が穏やかに付け加えた。
「問題児だった小娘が、たったの三年でただの貿易港を港湾要塞都市に仕上げたってこと自体、巻き込まれたらまずい相手だって宣伝してるようなもんだろう」
雲風天院長が指摘する。
「西狼のスパイから逃げてる元公公まで匿ってるとなれば、国内だけじゃなくて外国にまで敵が増えてしまいますよ」
舟が嘆いた。
「しかも、スパイの背後には古代の邪教がいるんですよ?そんなの敵に回したら、一から研究して対策たてなければならなくなりますよ」
「三師弟のいうとおりだね」
楽は請け合った。桃は真面目な顔で肯首した。
「どのみち対策はしなきゃなんね。舟のこともどこまで知られてるか解らないんだから、スパイや邪教に入り込まれないような陣と宝具を開発しなくちゃな」
笑林小子
Shaolin Popey
旋风小子、卜派小子、乌龙小子
1994
喜劇 愛情
武侠喜劇を現代学園ドラマに融合させた、見る人を選ぶアイドルドラマ
後半突然、少林寺の小坊主の内弟子となる
ストーリー展開は青春武侠のテンプレを序盤から辿る
武侠特有の奇縁により師父を得る流れも踏襲
監督 朱延平
四毛 林志颖
小飛侠=黃飛龍=成龍担当
林志類、1993年の飛天猫に続き武侠喜劇に出演
小飛侠呼びはこの時の役も元ネタのひとつ
小皮 郝劭文
四毛の弟
周星馳担当
小沙弥 释小龙
少林寺の小坊主
李连杰担当
朱安妮 徐若瑄ビビアン・スー
マドンナ。
シリーズニ作品目からは、全く別の作品となる
林志類は出てない
2は台湾の人気漫画「烏龍院」を舞台に取り入れた現代武侠喜劇
笑林小子2のラストバトルはごった煮の武打シーンで、小龍が成龍のモノマネをしていたりする
3、4は観てない
2018年の四作目では小龍が登場せず、笑林小子之も取れている
なお、1984年の少林小子/少林寺2は、21歳ジェット・リー主演の正劇
小龍中の人は今
2018年、林志穎と再会
小龍よりむしろ林志穎の若々しさが話題になり宇宙人疑惑が
來源網址 : 曾合拍笑林小子-釋小龍24年後再遇林志穎 | 星島頭條
https://www.stheadline.com/realtime-entertainment/1775811/
2024年、栄養ドリンク呑んでる写真が流出
https://www.worldjournal.com/wj/story/121233/8377928
幼少時は本当に少林寺で武芸を学んでいたとのことですが、その後アクションスターにも武術家にも僧侶にもならなかったようです




