第十肆話 最終決戦 中編
昨夜の夜襲にて大勝を収めた大和国軍。陣中に満ちる空気は、驚くほど明るく、軽やかである。
それも無理からぬことだった。
かつて手痛い敗北を喫した、あの王丹軍を正面から打ち破ったのである。
兵たちの胸に巣食っていた恐れと悔恨は、夜明けと共に霧散し、代わって確かな自信が芽生えつつあった。
伊佐勢理毘古は、山際より昇る朝陽を静かに見つめながら、大和の国を発ってから今日に至るまでの道程を思い返していた。
海を渡り、針間に上陸し、吉備国へと踏み入った日。
各地の豪族たちとの緊張を孕んだ交渉。
三隋臣との邂逅、そして熊翁らとの別れ――。
振り返れば、容易な道のりなど一つとしてなかった。
だが、それらすべてを乗り越え、糧とし、今ここに立っている。
吉備国に平和を取り戻す戦い、その最大の難所――
温羅の国「備中」平定は、もはや目前であった。
今日、鬼ノ城を落とす。
そして、この無益な争いに終止符を打つのだ。
伊佐勢理毘古は、朝陽を背に受けると、待ちわびる大和の兵たちへと向き直った。
「諸君。我々は今日この地、備中平定を成し遂げるであろう。しかし、これが終わりではない。これは吉備国に平和が訪れる前触れにすぎぬ」
彼の背後で、太陽が一段と高く昇る。
「私の背にある太陽が、天照大御神の御加護が、我らに大いなる力を与えてくださる。さあ、この無益な争いを終わらせに参ろう!」
橙色の温かな光が、大和国軍を包み込む。
兵たちは一斉に声を上げ、士気は最高潮に達した。
こうして大和国軍は、太陽を背負い、鬼ノ城を目指して進軍を開始する。
程なく吉備穴海へと到着した大和国軍。
その名の通り、陸地の中に穿かれた穴状の海。
その中に高く聳える新山。
その様は、まるで海に浮かぶ孤島。
後の世に語り継がれる「鬼ヶ島」の伝承を彷彿とさせる。
そして、その頂にこそ――鬼ノ城はあった。
鬼ノ城は、標高四百メートルにある。
城域の周囲はおよそ二千七百九十メートルにも及び、部分部分に石垣や土塁が巡らされている。
頂上の山肌が露出しているように見える所は、土や岩石を積み上げて築かれた強固な城壁となっている。
城門は四ヶ所。さらに通水口としての水門が六ヶ所設けられている。
鬼ノ城は、海に囲まれており徒歩では近づくこともままらなず、仮に舟で辿り着いたとしても急峻な山を登らねばならない。
まさしく、天然の要害。
大和国軍は、この難攻不落の城をいかにして攻略するのか――。
吉備穴海に到着した伊佐勢理毘古は、軍を二手に分けた。
大和を発った時、一万二千を数えた兵は、今や三千二百。途中で合流した吉備豪族の兵を含めてなお、この数である。
それは、温羅軍の苛烈さを雄弁に物語っていた。
伊佐勢理毘古、稚武彦をそれぞれ将とし、兵を千二百ずつ配置。
残る八百は、温羅および阿曽郷の警護に充てる。
伊佐勢理毘古軍はそのまま東側より、稚武彦軍は北側より攻勢をかける算段だ。
吉備穴海には、多数の舟が用意されていた。
これは、楽楽森彦が事前に吉備の豪族たちへ命じ、周到に準備させていたものである。
「全軍、部隊ごとに乗船。各兵の装備、矢と石礫の確認。その後、指示があるまで待機せよ」
伊佐勢理毘古の命により、各兵は次次と舟へと乗り込んでいく。
待機する兵の顔には、緊張と期待が入り混じった昂ぶりが浮かんでいた。
「大将。此度は、私と留玉媛も共に戦います」
そう言って、楽楽森彦は武器を手に取る。
ここまで来れば後は我々二人が策を巡らす段階でもありますまい」
留玉媛もまた静かに頷き、伊佐勢理毘古と共に舟へ乗り込んだ。
「――よし、全軍出撃! 目指すは、鬼ノ城!」
号令と共に、舟は一斉に新山へ向けて漕ぎ出す。
舟上では強い風が吹き抜け、留玉媛の長い髪が靡くき、伊佐勢理毘古の羽織が激しくはためいていた。
◇
王丹は、その様を鬼ノ城より眼下に見下ろしていた。
山上より望めば、遮るものは何一つない。
遠くには、現在でいう屋島や讃岐富士の端正な山容までもがはっきりと望める。
麓には、海と陸とが複雑に入り組んだ吉備穴海が広がり、大小さまざまな島々が点々と散らばっていた。
その海面を埋め尽くす、大和国軍の舟。
無数の武器と甲冑が太陽を受け、まるで海そのものが燃え上がったかのように、ぎらぎらと眩い光を放っている。
「……、これは凄い光景であるな」
王丹は、感嘆とも嘆息ともつかぬ声を漏らした。
「まさか、鬼ノ城にこの様な日が訪れるとは……」
胸の奥から、言葉にし難い感慨が込み上げてくる。
だが、次の瞬間――迫り来る戦の気配が肌を刺し、その感傷を容赦なく打ち払った。
王丹は大きく息を吐き、気を引き締める。
「ここまで、我の我儘に付き合ってもらったこと、心より感謝しておる」
振り返り、背後に控える配下たちを見渡す。
「もはや、お主たちの怒りも鎮まったのであろう。無闇にここで命を散らす必要などない。止めはせぬ。西門より脱出し、兄者と合流せよ。そして――吉備国の未来を、そこで築くがよい」
一瞬の沈黙。
やがて、一人の兵が声を上げた。
「何をおっしゃるのです」
それに続くように、周囲の兵たちも頷く。
「我らは、最期までお供いたします。憧れ続けた王丹の武――その行き着く先を、どうかこの目で見届けさせてください」
王丹は一瞬、困ったように眉を寄せた。
しかし、すぐにその口元に、不敵な笑みが浮かぶ。
「……そうか。お主たちの気持ち、しかと受け取った」
王丹は兵たちを見渡し、声を張り上げる。
「では、最期まで共に駆けようではないか!
こちらも舟で打って出るぞ! ついて参れ!」
その言葉に応え、王丹兵たちは一斉に駆け出した。
だが、王丹はその中から数十人の名を、大声で呼び止める。
呼ばれた兵たちは慌てて引き返し、何事かと王丹の前に集った。
「お主たちは――戦うことを許さぬ」
「な、何故ですか! 我々も、皆と同じ覚悟です! どうか戦わせてください!」
王丹は、静かに首を振る。
「分かっていよう。この戦に、生き残る道はない。お主たちには、兄者たちと共に避難させた妻子がおろう」
兵たちの顔が、強張る。
「もう帰って、安心させてやるがいい。そして――我らのことを語り継いでくれ。勇敢な戦士たちが、鬼ノ城でいかに戦い、いかに散ったかを」
王丹は、優しく、しかし逃げ場のない声で言った。
「それは、最期まで戦い抜いたお主たちにしか出来ぬことだ。……違うか?」
握りしめていた拳から、次第に力が抜けていく。
兵たちの目から、堪えきれぬ涙が滝のように溢れ落ちた。
「……承知しました」
一人が声を絞り出す。
「もはや異論はございませぬ。こちらのことは、お任せください。王丹様――どうか、御武運を!」
そう言い残し、彼らは振り返ることなく西門へと駆けていった。
その背に目を向けることなく、王丹は歩き出す。
赤い髪は総毛立ち、まるで燃え盛る炎のよう。
その赤い瞳はぎらつき地獄の業火のよう。
恐れも、迷いも、そこにはない。
ただ、嬉々とした笑みを浮かべ――
王丹は、鬼としての最期の戦へと出陣した。
◇
吉備穴海の中央で両軍はついに会敵。
無数の舟が入り乱れ、舟上からは矢と石礫が雨のように飛び交う。
物量では大和国軍が勝っていたが、操舵の巧みさでは王丹軍に一日の長があった。
開戦直後は一進一退の攻防が続き、戦況は拮抗していた。そして、決定打を欠いたまま時間だけが過ぎていく。
その膠着に、業を煮やしたのが共に弓の名手である両軍の大将たち。
伊佐勢理毘古と王丹はほぼ同時に前線へ躍り出た。
互いを視界に捉え、弓を引き絞る。
――次の瞬間。
一際甲高い音が、戦場を裂いた。
カン、ヒューーーーー!
ばきっ! どぼん…
放たれた矢同士が、空中で正確に噛み合い、砕けた矢は音を立てて海へ沈む。
それは一度では終わらなかった。
カン、ヒューーーーー!
ばきっ! どぼん…
カン、ヒューーーーー!
ばきっ! どぼん…
何度射ても、何度挑んでも。
互いの矢は、寸分違わず空で交錯し、すべて海中へと消えていく。
「……王丹め、やりおるな」
伊佐勢理毘古は、思わず唸った。
「この私の矢を、すべて撃ち落とすとは。大和にも、これほどの使い手はおらぬ。敵ながら、天晴れよ」
敵舟の上、王丹もまた驚嘆の色を隠せぬ様子で、こちらを見据えている。
だが、いくら撃ち合っても結果は同じ。矢はすべて海に沈むばかりだった。
(このままでは埒があかぬ。なんとかせねばな…)
戦況を打開するため、伊佐勢理毘古は、瞬時に決断する。
「楽楽森彦、留玉媛! 暫し刻を稼いでくれ。このままでは王丹を討てぬ。少し考える時間が欲しい」
「承知しました!」
二人は即座に応じ、伊佐勢理毘古の前へと出た。
楽楽森彦は大盾部隊に指示を飛ばし、将を守らせる。
「留玉媛よ、我らの腕前もみせてやろうぞ!」
「えぇ。皆んなの度肝を抜いちゃいましょうか」
軽口とは裏腹に、その動きに迷いはない。
留玉媛は弓を構え、一瞬で矢を放つ。
カン、ヒューーーーーーーーー!どん!!
矢は見事に敵兵を射抜く。
楽楽森彦もそれに負けじと続き、大きく腕を振りかぶって石礫を投げ放つ。
ヒュン!どかっ!
ヒュン!どかっ!
次々と、石礫を敵兵や敵舟へとぶつける楽楽森彦。石は敵兵の兜を砕き、舟の舷側を砕く。
石礫というと武器らしくないように感じるが、そんなことはない。
硬い石を、大人が力いっぱい投げるのである。
顔に当たれば刺さったり、陥没するであろう。身体に当たれば怪我もする。
もちろん、木の舟に何度も当たれば破壊もできよう。
石礫は決して侮れる武器ではない、十二分に武器としてその力を大いに発揮する。
その隙に、伊佐勢理毘古は舟上にどっかりと腰を下ろし、目を閉じた。
胸元に忍ばせた、桃の御守りを強く握りしめる。
すると――
御守りが淡く輝き、温かな声が、心の奥に直接響いた。
「大将! お主は弓での無理難題なら大得意じゃろう。十年前も見事やってのけておったわい。もう一度――あの奇跡を、みせてくれい」
伊佐勢理毘古は、はっと目を見開き、叫んだ。
「熊翁!」
その名に、楽楽森彦と留玉媛は驚く。
熊翁はここにはもういない。
伊佐勢理毘古の言葉の真意がわからず困惑する二人。
「大将、熊翁がどうかしましたか? 策は思いついたのですか?」
「あぁ、もちろんだ。熊翁が思い出させてくれたよ」
伊佐勢理毘古の顔には、揺るぎない自信が宿っていた。
(熊翁……、ありがとう。死してなお、心配して見に来てくれたのだな。ご希望通りお見せしよう。再びあの奇跡を!)
伊佐勢理毘古はそう心の中で熊翁に礼を言い、千釣の強弓を構える。
十年前に熊翁に課された賭けの時と同じく、二本の矢を重ねてつがえる。
瞼を閉じて精神を研ぎ澄ます。
すると、再び桃の御守りが輝き出し、立ち昇る光が伊佐勢理毘古を包み込む。
(温かい……、あの時と同じだ)
目を見開き、王丹目掛けて矢を射る伊佐勢理毘古。
同時に、王丹もまた矢を放った。
「ゆくぞ、王丹! 受けてみよ――これが、私と熊翁の絆だ!」
「戯言を! 何度やっても同じことよ!」
カン、ヒューーーーーーーーー! ばきっ!
ヒューーーーーーーーーーーー!どん!!
「なんだと…」
伊佐勢理毘古の放った一矢は、先の矢と噛み合うように飛翔し、虚を衝かれたかのごとく海面へと吸い込まれた。
だが、余す一矢は違った。
弓弦の震えが収まるより早く、その矢は一直線に王丹へと迫り――
鈍い音を立てて、王丹の左眼を貫いた。
王丹は呻き声ひとつ上げぬまま、その場に膝をつく。
裂けた眼窩から血潮が噴き出し、堰を切った流水のように甲板を濡らしていく。
左目を押さえながらも、王丹はなお伊佐勢理毘古を睨み据えた。その片眼に宿るのは、怨嗟ではなく、戦場を知る者の冷静な覚悟であった。
「……一度に二本の矢を射るとはな。恐れ入ったわ」
王丹は低く息を吐き、続ける。
「此度はここまでだ。全軍、鬼ノ城へ一時撤退せよ!」
その号令と同時に、王丹軍は一糸乱れぬ動きで反転した。
巧み極まる操舵により、大和国軍の攻撃をことごとく躱し、波を切り裂くようにして鬼ノ城へと退いていく。
「王丹軍の舟が早すぎて全く捉えられません!」
焦りを帯びた声が上がる。
「絶対に逃がしてはならぬ!」
伊佐勢理毘古は歯を食いしばる。
「ここで逃せば、さらなる血が流れることとなろう。必ず止めねばならぬ!」
大和国軍も必死に追撃を試みるが、操舵の差は歴然としていた。
距離はみるみるうちに開き、王丹軍の船影は遠ざかっていく。
そのとき――
留玉媛が声を上げた。
「伊佐勢理毘古様。どうか、私の独断専行をお許しください」
凛とした声でそう告げると、彼女は続けた。
「皆は、何があってもこのまま鬼ノ城へお進みください。……では!」
言い終わるや否や、留玉媛は伊佐勢理毘古の返事を待つことなく宙へと舞い上がった。
一瞬の光の揺らぎとともに、その姿は風を裂いて飛び立つ。
それを見た伊佐勢理毘古は、即座に悟った。
「全軍全速前進! 王丹の元へ急げ!」
声を張り上げ、叫ぶ。
「あの馬鹿……、単身で王丹の元へ飛びおった。 必ず助けよ!」
ここに至って、兵たちはようやく事態を理解する。
留玉媛が秘術を用い、王丹のもとへ先行し、刻を稼ぎに向かったのだと。
皆ここで漸く事態を把握する。
留玉媛が秘術で王丹の元まで飛び、刻を稼ぎに行ったのだ。
「彼女を死なせるわけにはいかぬ」、その一念を胸に、大和国軍の舟は限界まで速力を上げ、鬼ノ城へと突き進んでいった。
一方その頃、王丹麾下の舟上――
負傷した王丹を中央に据え、兵たちが必死に治療を施しながら、舟団は全速力で鬼ノ城を目指していた。
「吉備穴海において、我々が操舵で負ける事はない。王丹様、もう少しお待ちください。必ず鬼ノ城へとお連れします」
舟は波を裂き、後方の大和国軍との距離は確実に開いていく。
それを見て、王丹軍の兵たちは胸を撫で下ろし、王丹自身もまた、わずかに表情を緩めた――その瞬間であった。
王丹の上空に黒い大きな影が舞う。
「――――?」
次の刹那、その影は風を切って急降下する。
「王丹ーーーーーーッ!」
「何奴ッ!」
叫び声とともに、黒い影――留玉媛が王丹に組みついた。
勢いのまま、二人は舟上を転がり、そのまま海中へと転落する。
「王丹様ーーーーーッ!」
海上に、王丹兵たちの悲鳴が響き渡る。
海中では、二つの影が激しくもみ合っていた。
留玉媛は必死に王丹にしがみつくが、たとえ深手を負っていようとも、相手は王丹。
力の差は歴然であった。留玉媛にはさすがに荷が勝ちすぎた。
強引に引き剥がされ、次の瞬間――
腹部へと重い一撃が叩き込まれる。
留玉媛の身体は海中で弾かれ、視界が白く染まった。
やがて王丹は一人、海面へと浮上する。
「王丹様。早くお乗りください!」
兵たちが手を伸ばす。
「後方より、大和国軍が迫っております!」
留玉媛の命懸けの行動により、王丹は十分に足止めされた。
その間に伊佐勢理毘古の舟団は、すでに間近まで迫っていたのだ。
さらに――
鬼ノ城の方角から、別の舟団が姿を現す。
それは、稚武彦軍であった。
好機と見て、一気に漕ぎ寄せてきたのである。
「王丹様!」
兵が声を上げる。
「前後より大和国軍が接近! 鬼ノ城への退路も塞がれました!」
王丹は一瞬、歯を食いしばり、即座に決断した。
「仕方あるまい。鬼ノ城への帰還は諦め、逃げるのだ。大和国軍は南東の方角が手薄だ。あそこから包囲を突破せよ!」
王丹軍の舟は一斉に旋回し、南東の陸地を目指して突進を開始する。
一方、大和国軍は留玉媛の救出に気を取られ、追撃の初動がわずかに遅れた。
「大将。私が先んじて追います」
楽楽森彦が即座に名乗り出る。
「承知。お任せ致す」
楽楽森彦は別の舟へと飛び移り、舟団を率いて王丹軍を追撃する。
伊佐勢理毘古はその背を見送り、すぐさま留玉媛の捜索へと向かった。
「伊佐勢理毘古様! あちらに――留玉媛様がおられます!」
「でかした! 急ぎ救出せよ!」
海面に浮かぶ留玉媛を見つけ、兵たちは慎重に彼女を引き上げる。
身体は衰弱しきっているが、微かに胸は上下している。
あの王丹に、この細い身で挑んだのだ。
無事でいること自体が奇跡であった。
「留玉媛、礼を言う」
伊佐勢理毘古は静かに告げる。
「そなたのおかげで、王丹を追い詰めることができる。あとは我らに任せよ。後方でゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします…」
留玉媛は微笑み、そう答えると、静かに瞼を閉じた。
「留玉媛⁉︎」
「御安心ください」
従軍の者が即座に答える。
「意識は失いましたが息はあります。急ぎ、陸へあげて治療致します。英雄を死なせはしません」
大和兵たちは慎重に彼女を別の舟へ移し、陸へと引き返していった。
その姿を見届け、伊佐勢理毘古は深く息を吐く。
――そして、再び戦場へと意識を戻した。
「私はこのまま王丹を追う。稚武彦軍はこのまま鬼ノ城を落としてくれ。全軍、進軍開始!」
「承知しました。兄上、御武運を!」
各々の目標に向かい進軍を開始する大和国軍。
逃走する王丹。
それを追う楽楽森彦と伊佐勢理毘古たち。
そして、鬼ノ城を攻める稚武彦たち。
彼らを待ち受けるのは、果たしていかなる結末か――
戦の行方は、なお混沌の只中にあった。




