心理戦の檻 〜マジックミラーの向こう側〜
篠宮麗華は、四畳半の部屋の中で落ち着かない様子で歩き回っていました。彼女の長い黒髪が肩で揺れ、白い肌が蛍光灯の下で輝いています。突然、彼女はマジックミラーの前で立ち止まり、自分の姿を確認しました。
「ちょっと、鷹野!」麗華の声が震えています。
「カチカチ」とマジックミラーを爪で叩く音が響きます。
「あんた、ずっと見てたの?私の部屋丸見えじゃないの?」
麗華は怒りと恥ずかしさが入り混じった複雑な表情を浮かべ、顔を真っ赤にしています。彼女の細い指が制服のスカートの裾をぎゅっと握りしめます。
「答えなさいよ!」麗華はさらに興奮し、
「もう、最悪!プライバシーの侵害よ!」
と叫びます。彼女の瞳には怒りの炎が燃えているようでした。実は、鷹野豊は確かに麗華の部屋を見ていました。しかし、彼は冷静を装い、見えていないふりをすることにしました。
「何言ってんだよ」豊は冷たい声で応じます。
「俺には何も見えてねーよ。お前の妄想じゃねーのか?」
麗華は一瞬驚いた表情を見せますが、すぐに怒りを取り戻します。
「嘘つき!絶対に見てたわよ!」
「ドンドン」と今度は拳でマジックミラーを叩き始めます。
「認めなさいよ、今すぐに!」
豊は内心、麗華の反応を楽しんでいましたが、表面上は冷静さを保ちます。
「うるせーな。お前がそんなに見られたいなら、俺が見てたってことでいいだろ」
この言葉に、麗華の顔がさらに赤くなります。
「な、何言ってるのよ!誰があんたなんかに見られたいなんて...」
豊は麗華の動揺を感じ取り、さらに挑発します。
「へえ、じゃあなんでそんなに必死なんだ?もしかして、俺に見られたいのか?」
麗華は言葉につまり、怒りと恥ずかしさで震えています。
「あ、あんた...最低よ!」
***
時代背景
日本は経済政策と移民政策の失敗により、犯罪率が急増し財政破綻。発展途上国に転落して10年が経過した。財政再建を目指し、政府は監獄の一部民営化に踏み切った。多様性と持続可能性を重視した新しい監獄モデルが試験的に導入された。
この実験的施設では、受刑者は4.5畳のマジックミラー付き個室と共用の公共スペースで生活する。個室のマジックミラーは監視用モニターに切り替え可能。トイレは隣室からギリギリ見えない程度の壁で仕切られている。
男女共用の公共スペースがあり、共用スペースには今シャワールームしかない。ただし、過度な行為は首輪から電気ショックで罰せられる。公共スペースの使用は許可制で、受刑者の行動により許可範囲が変動する。
インターネットは制限付きで利用可能で、受刑者は一定の収入を得ることができる。
***
しばらくした後。。。
鷹野豊は公共スペースに立ち、深い溜息をつきました。
「最低なのは...俺か?」と呟き、自問自答する彼の目には複雑な感情が宿っています。
そこへ篠宮麗華が現れました。長い黒髪がさらさらと肩で揺れ、白い肌が蛍光灯の下で輝いています。彼女の大きな瞳が豊をじっと見つめます。
「ねぇ、鷹野くん」麗華の声が甘く響きます。「何を考え込んでるの?」
豊はシャワールームを指差しながら、
「おい、篠宮。お前はあそこで何を考える?」と尋ねました。
麗華は首を傾げ、くすくすと笑います。
「あら、随分とデリケートなことを聞くのね」
「ガチャガチャ」と腕輪が鳴る音とともに、麗華が豊に近づきます。
「私ね、」麗華は囁くように続けます。
「人間の本質を見るの。裸になると、みんな同じだって思わない?」豊は眉をひそめた。
「同じ?冗談じゃねぇ」
「ふふ」麗華は笑みを浮かべます。
「でも、みんな弱さを持ってる。あなたも、私も」彼女の言葉に、豊は一瞬言葉を失います。
彼女は豊の耳元で囁きます。
「最低なのは誰でもないわ。みんなただ、生きてるだけなんだから」