四畳半の監獄と二人のクズ
「鷹野 豊」。IQは高いがどこまでも性格が悪く、短気で自己中心的な高校生だ。自分の欲望には忠実だが、周りからは避けられ、まともな人間関係を築いたことがない。そんな豊は、ある日「器物損害」で捕まり、この実験的な 四畳半監獄 に放り込まれることになった。
四畳半の部屋に閉じ込められた豊は、天井を睨みつけながら苛立ちを募らせる。
「クソが……なんでこんなとこにいるんだよ。」
この監獄は普通の刑務所とは違う。「更生」を目的とした実験的な施設だ。囚人たちは各自の四畳半の部屋に閉じ込められ、壁には マジックミラー がはめ込まれている。スイッチを押せば、そのミラーは モニター に変わり、他人の部屋や公共スペースの様子を監視することができる仕組みだ。
だが、それだけではない。この施設ではインターネットを使って稼ぐことが許されている。「自由」と「制限」が紙一重で存在するこの監獄で、生き延びるためには頭を使うしかない。
***
豊が部屋のミラー越しに隣室の様子を確認すると、そこには一人の少女が映っていた。
「篠宮 麗華」。
黒髪を揺らし、静かに座っている彼女は、まるでお人形のように整った美貌を持っていた。透き通るような白い肌に、涼しげな瞳。そして、その薄い唇には、不気味な微笑みが浮かんでいる。
麗華は暴力や精神的支配で家庭を崩壊させた モラハラお嬢様。外見は天使のように美しいが、内面は冷たく他人を見下す性格だ。その瞳は豊をじっと見据え、まるで「自分の玩具」を見つけたかのような輝きを放っていた。
***
次の日、二人は初めて 公共スペース で顔を合わせた。
「あなたが鷹野君?」麗華は微笑みを浮かべ、ゆったりとした仕草で話しかける。「ふーん……なんだか、豚みたいね。」
その言葉に、豊は即座にキレた。
「はぁ!? ふざけんな!」
顔を真っ赤にして怒鳴る豊を前に、麗華は涼しげな笑顔のまま続ける。
「怒らなくてもいいのに。私はただ、あなたの特徴を言っただけよ?」
彼女の言葉には挑発的な意図が込められていた。それが分かっていても、豊は怒りを抑えることができない。だが、彼女の冷たくも柔らかな笑顔には、なぜか不思議な引力があった。
こうして二人の、狂気と依存の物語が始まった。
彼らは監視と制限の中で、互いに利用し合いながら生き延びようとする。そして次第に、お互いに心の奥底にある 「支配欲」 と 「依存欲」 を引き出されていく。二人の関係は、歪んだ愛と狂気の中でねじれていき、出口のない監獄生活が二人を飲み込んでいく──。
「この監獄で生き残りたければ、君も私を使えばいいのよ。」
麗華の甘く冷たい言葉が、豊の心にじわりと染み込んでいった。
これは、四畳半の監獄で始まる 共依存の愛 と 破滅の物語。利用されるのが嫌なら、利用するしかない。狂気と欲望が交差する監獄で、二人はどこまで堕ちていくのか──。