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今更「ゲーム主人公転生」かよ!?  作者: 日之浦 拓


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最短で答えを出すのが、常に正解ってわけじゃねーんだよ

「……お、おいおい姉ちゃん、何言ってんだ? オデの話、ちゃんと聞いてたのか?」


 ジャガイモ顔の大男が、その巨体に似合わない戸惑った声をあげる。だがそれを聞いてなお、リナの言葉も止まらない。


「勿論聞いてたわよ。そのうえで興味ないって言ってんの!」


「最強武器だぞ!? そいつがあれば、お前達は間違いなく世界で一番強くなれるんだぞ!?」


「知らないわよそんなの。いいから早く石どけて! 自分のやったことくらい、自分で後始末しなさいよね!」


「……に、兄ちゃん。それに他の姉ちゃん達も、本当にそれでいいのか?」


 リナには話が通じないと判断したのだろう。俺達の方に問いかけてくる大男に、俺はアリサ達と顔を見合わせる。


「うーん? 俺的には割と興味あるけど……」


「私もだ。最強を豪語するなら気にはなる。が……」


「リナがああなったらクロ達の言うことなんて絶対聞かないニャ」


「ですよね」


「はぁ!? おいふざけんな! そんな女のご機嫌一つで、最強武器を投げ捨てるってのか!?」


 顔を見合わせ苦笑する俺達に、大男が悲鳴のような声をあげる。するとそこにとどめとばかりに、リナの言葉が突き刺さった。


「そうよ! みず……み……アタシ達皆の絆は、アンタなんかにどうこう言われるようなもんじゃないの! でかい図体でいつまでもグダグダ言ってないで、まずはやることやりなさいよ!」


「ぐ、ぐぅぅ…………わかった。ならまあ、石はどかしてやる」


 猛烈に悔しげな表情をしながら、大男がでかい石をヒョイヒョイと片付けていく。それだけ見ると発泡スチロールに色を塗った張りぼてみたいな感じなんだが、放り投げられた石がドスンと重い音を立てるため、単に大男の力が規格外に強いってだけなんだろう。


「……ほら、これでいいか?」


「何よ、やればできるじゃない! じゃ、アンタの出番は終わりだから、もう帰っていいわよ」


「……その、本当にいいのか? 今ならまだ、オデと一緒に――」


「くどい! やることやったらさっさと帰る! しつこい男は嫌われるわよ! ハリーハリー!」


「クソッ、何なんだこの女!? お前ら、絶対後悔するからな!」


 リナに追い立てられ、大男が這々の体で去っていく……そういえば名前すら聞いてなかったことに今気づいたんだが……まあいいか。


「ふぅ、ようやく落ち着いたわね」


「あの、本当によかったんですか? 私の方はそこまで急ぎというわけでもないですから、後回しでも構わなかったんですが……」


「あー、いいのいいの! それにヘンダーソンさんがよくても、アタシがよくないしね! それよりこの遺跡だけど……」


 恐縮するヘンダーソンさんに軽い口調でそう言うと、リナがぽっかりと開いた穴に視線を向ける。釣られて俺達もそうすると、そこには奥の見えない黒い穴が存在していた。


 暗いのではない、黒いのだ。これとよく似たものを、俺達は日常的に目にしている。


「これはまさか、ダンジョンになっているのか?」


「クロ達は遺跡調査って聞いてたニャ! なのにおっちゃんは嘘ついたニャ?」


「いやいや、違いますよ! ここは本当に古代遺跡なんです! いえ、正確には遺跡だった(・・・)と言うべきでしょうが……」


 責めるようなクロエの視線に、ヘンダーソンさんが汗をふきふき話を続ける。


「最初に私がここを見つけた時、奥にあったのは石造りの家屋のような空間でした。おそらくは長い年月で上部に土が積もり、埋もれてしまった建造物なのでしょう。ただそのおかげで日光が遮られ、内部には劣化の少ない貴重な資料が沢山あったんです。


 勿論私はすぐにそれを調べようと思ったのですが、その手の遺物は運び出すにも相応の準備が必要になります。不用意に動かしたり外に持ち出したりすると、それだけで崩れてしまうことがありますからね。


 なので色々準備を整えて戻ってくると……」


「入り口がこうなってたってわけか」


 俺の言葉に、ヘンダーソンさんが渋い表情で頷く。


「はい。軽く頭を突っ込んでみましたが、中には通路が伸びており、明らかに空間が拡張していました。であれば間違いなくダンジョンで……そうなると内部には魔物や罠が出現している可能性が高く、私ではどうにもならなかったんです。


 なので皆さんにお願いしたわけでして……」


「なるほど……確かに変異直後のダンジョンなら、まだその元になった部分が多く残っているはずだ。一緒に取り込まれた遺物もダンジョン内部にあるだろうから、それを調べるというのなら『遺跡調査』という名目も決して嘘ではあるまい。


 とは言えダンジョンはダンジョンだ。勝手に住み着いた野生の魔物の駆除と無限に魔物が湧き出し罠が出現したダンジョンの攻略では難易度が大きく違うのは、そちらも理解しているだろう?」


「それは……はい」


 真面目な表情のアリサに、ヘンダーソンさんがしょんぼりと肩を落とす。しかしその姿を前に、アリサはフッと笑みを浮かべる。


「だがまあ、そのくらいの方がやり甲斐がある。だろう?」


「そうだニャ! ただの遺跡よりダンジョンの方がお宝が一杯ありそうだニャ!」


「一応確認ですけど、『遺跡内部で見つかった金銭的価値の高いものの所有権を全て譲渡する』という条件に変更はありませんよね?」


「勿論! え、じゃあ引き受けていただけるんですか……?」


「当然よ! ね、シュヤク?」


「ま、最初からそのつもりだしな」


「皆さん……ありがとうございます!」


 重要情報を後出しされてなお引き受けた俺達に、ヘンダーソンさんが深く頭を下げて言う。まあ俺やリナは最初からそうだとわかっていたし、アリサ達にもその旨事前に伝えてあったので、この一連のやりとりは茶番ではある。


 だがそれでも、ちゃんと本人の口から聞いたうえで引き受けるという流れは必要だったし、あの場で問い詰めることはできなかった。何故ならゲームにおけるこのサブクエの流れがそうだったからだ。


 無論知っているのだから最初に指摘することもできたが、その場合流れがわり、最悪サブクエ自体が消える可能性だってある。加えて真相を知っている俺達側には何の問題も生じないので、この形に落ち着いたってところだな。


「それじゃ、俺達はこのまま中に入ります。ヘンダーソンさんはひとまずここに待機してもらっていいですか? ある程度魔物や罠を片付けたら、改めて呼びますので」


「わかりました! では野営の準備を整えてお待ちしてます!」


「了解です。じゃ、皆行こうぜ」


「うむ!」「ニャー!」「はい!」「行きましょ」


「行ってらっしゃい! お気をつけて!」


 俺の呼びかけに皆が答えて、ヘンダーソンさんに見送られながら俺達は遺跡ダンジョンへと足を踏み入れる。するとそこに広がっていたのは、苔生した石壁が通路となった、オーソドックスなダンジョンの風景であった。


「ふむ? こうして見る限りでは、ごく普通のダンジョンだな?」


「だな。ただ遺跡型のダンジョンは罠の数が多いから、下手に進むとヤバいんだ。ってことで、クロエ、出番だぞ」


「わかったニャ!」


「あー、ちなみに魔物は多分ゴーレム系が出ると思うから、気配を感じたら無理しないで戻ってきてね。クロちゃんだと相性悪いだろうし」


「そっちもわかったニャ!」


 俺とリナの言葉に返事をしつつ、クロエが慎重に進みながら罠を探り、解除していく。今はまだ迂闊に動けないのでそれを静かに見守っていると、不意にアリサがリナに声をかけてきた。


「それでリナ。さっきの男は何者だったのだ?」


「え? 何者って?」


「……? お前のことだから、何か心当たりがあったのだろう? あの男の話を聞き入れるとマズいことがあるから、あれほど強固に断ったんだと思ったんだが?」


「……あっ! あー! そ、そうね! その通りよ!」


 アリサの指摘に、リナが猛烈に目を泳がせる。するとそれを見たアリサが、怪訝な視線をリナに向ける。


「リナ? まさか何も考えずに拒否したのか?」


「そんなわけないじゃない! いいわ、ならアタシの考えたことを説明するわね」


 微妙に強がっているように見えなくもないが……それでもリナは胸を張って、然も最初からわかってましたと言わんばかりに話を始めた。

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