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今更「ゲーム主人公転生」かよ!?  作者: 日之浦 拓


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顔合わせも終わったことだし、新たな冒険に出発だ!

「で? その結果がこれ(・・)だと?」


「まあ、うん。そんな感じかな?」


「そんな感じって……」


 モブローパーティとのメンバー交換二回目を終えた後。改めて全員で集まった場にて、俺はリナに何とも胡散臭げな目を向けられていた。その理由は……


「シュヤク先輩! これからどうするんスか!? 自分、何でもやっちゃうッスよ!」


「お、おぅ。それを今から話し合うところだから、もうちょっと待っててくれ」


「わかったッス! 全力で待つッス!」


「別に全力を出す必要はねーけど……ほどほどにな」


 モブローが、俺に懐いた。スゲーキラキラした目で見られるのが、何ともいたたまれない。


「フフフ、これも貴様の人徳か? まさか相手のリーダーを取り込んでしまうとはな」


「でも、なんで先輩ニャ? シュヤクとモブローは同い年ニャ」


「先輩は先輩ッス! エロの高みにある、一つ上の男ッス!」


「一つ上……確かにシュヤクの教えてくれた戦い方は、一つ上だった」


「そうですね。シュヤク様の立ち回りは、モブロー様に比べると『一つ上』と言ってもよかったと思います」


「へー、一つ上ねぇ……守備力が三くらい下がった?」


「下がんねーよ! 誰に伝わるんだよそんな表現!」


「あら、アンタには伝わったじゃない? それにそっち方面の知識で手懐けたんでしょ? なら自業自得よ」


「……………………」


 ジト目で睨まれ、俺はリナからそっと顔を逸らす。確かに俺は、モブローに「如何に現実が素晴らしいか」を語った。人生一〇年分のアドバンテージを生かし、ゲームでは実現できない、現実だから可能であろうことを色々と教えたのだ。


 その内容に関しては……まあ、うん。モブローが食いつきそうなことだという以上に語るつもりはない。あまりにも食いつきがよかったせいで、ちょっと調子に乗って色々話しすぎた気はしなくもないが……そこはまあ、不可抗力だったと言っておこう。悪くない、俺は悪くないぞ……


「ほら、それはもういいだろ。とにかくこれで、ひとまず戦力問題は解決したんだし」


「あ、誤魔化したわね? まあいいけど。それじゃ今後の活動方針についてだけど……」


「ハイ! 先輩達と自分達で、一緒にダンジョンに潜ったらいいと思うッス! ここが現実なら、一パーティ五人までみたいな縛りなんてないッス! なら皆で潜った方が速くて強くて楽しいッス!」


 元気よく手を上げながら、モブローがそう提案してくる。だがそれはかつて俺も通った、転生者(おれたち)ならではのミスだ。


「あーそれ、駄目なんだよ」


「ダンジョンの魔物は、人間の生命力を感知して襲ってくるんです。ちょっと顔を合わせるくらいなら問題ありませんが、ずっと大人数で固まって行動していると、階層中の魔物が集まってきちゃうんですよ」


「魔物が反応しないギリギリが五人。モブロー、ちゃんと授業聞いてる?」


「うぐっ!? そんな設定あったんスか?」


「あるんだよ。じゃなきゃそもそもパーティメンバーの交換なんて言い出さないだろ?」


 それは現実がゲームの設定に辻褄を合わせた結果。まあ確かにそうでもないなら、ダンジョンなんて軍隊を投入して力業で攻略すりゃいいってことになっちまうからなぁ。


「一応顔が見えない距離まで離れてりゃ別パーティ扱いされるとか、戦闘不能状態だと戦力と見做されないから、全滅した討魔士を担いでダンジョンから脱出するのは大丈夫とか、色々抜け道はあるっぽいけどな。


 とはいえそんなの突っついていきなり仕様が変わったりしたら大事だし、大量の魔物を集めたりすると他の討魔士に迷惑がかかるからな。基本的には今まで通り、二パーティでそれぞれ独立して活動するのでいいと想うぜ」


「そうだな。連携を取るにしても、精々同じ階層を別々に攻略する、くらいまでにしておくのがいいだろう。時間を決めて階段で集合することにでもしておけば、万が一ロネットのポーションで癒やしきれない傷を負った場合でも、階段に退いて待機するだけで癒やし手がくるとわかっているのは、とても心強い」


「お任せ下さい。まだまだ若輩者故、どんな傷でも……とは申しませんが、ポーションが効きづらいような深い傷などでも治してみせますわ!」


「うぅ、うちの開発したポーションの効果が、もっと高ければいいんですけど……」


 その言葉に、ロネットが少しだけしょんぼりする。だが俺が声をかけるより先に、他ならぬセルフィがロネットに近づき、その手をとって優しく声をかける。


「あら、それは違いますわロネット様。確かに私の癒やしの魔法は強力だと自負しておりますが、私は私一人しかおりません。ですがロネット様の開発されているポーションは、いずれ誰もが手に取れ、誰もが使えるようになるものなのでしょう?


 私が生涯を費やしても、癒やして差し上げられる人数はたかが知れています。ですがロネット様のポーションは、この先ずっと数え切れない人を癒やし続けるのです。


 たとえ大怪我を治せなかったとしても、膝をすりむいた子供に気軽に使ってあげられるくらいに安価で安定して供給できれば、一体どれだけの人に癒やしを与えられるでしょうか? その光景を思い浮かべるだけで、私の胸は熱くなりますわ。


 先日シュヤク様が仰っていた通り、大事なのは適材適所。ロネット様はロネット様として、十分に素晴らしい方だと思いますわ」


「ロネットのポーションは凄い。全部同じ品質で毎日補充されるとか、アンデルセン商会の開発部門は国の研究機関に負けてないと思う。自身を持っていい」


「セルフィさん、オーレリアさん……はい、ありがとうございます!」


 セルフィのみならずオーレリアにも声をかけられ、ロネットが嬉しそうに言う。うむうむ、実にいい光景だ。オーレリアは一〇日、セルフィに至ってはたった五日ではあったが、それでもやはり共に戦った間柄というのは仲良くなりやすいようだ。


「尊い……何て尊い光景なの……っ!」


「うぉぉー、自分も間に挟まりたいッス! 三人のヒロインが作り上げたデルタ地帯の中央に潜り込んで深呼吸がしたいッス!」


「ステイだモブロー! ここで焦ると台無しになるぞ?」


「ハッ!? そうだったッス。自重するッス。うぅ……でも絶対いい匂いがするッス……嗅ぎたいッス……」


「そうね。あの隙間の空気缶だったら、五〇〇〇円で買ってもいいわね」


「またリナが訳のわかんないことを言ってるニャー」


「空気……いや、文脈的に匂いに金を払う価値があるということか? なあシュヤク、貴様もあそこの匂いを嗅ぎたいと思うのか?」


「ここでとばっちり!? はいはい、もう終わり! 騒ぎたいなら方針を決めた後にしてくれ!」


 こっちに流れ矢が飛んできそうだったので、俺は慌ててパンパンと手を叩き、話の流れをぶった切った。するとすぐに皆の注目が俺に戻る。


「すみません。楽しくてつい……」


「反省……」


「お待たせして申し訳ありません」


「いいって。で、今後の活動方針なんだが、まずはサクッと二〇階まで攻略しちまおうと思う。で、できれば夏休みまでに三〇階層を抜けたいところだな」


「入学初年度の夏で三〇階層か……貴様と知り合う前の私だったら、馬鹿な妄想をするなと鼻で笑っているところだな」


「あんまり目立ちたくないっていうのは、もういいニャ?」


「よくはねーんだけど……これだけのメンバーが集まっちまったら、それを気にして自重する方が逆に勿体なく思えてさ」


「確かに、明らかに過剰戦力だもんねぇ」


 俺の言葉に、リナがヒロイン達を見回して言う。条件的に無理な六人目を除いた全員が集まったうえに、リナとモブローというイレギュラーなメンバーもいる。


 加えてモブロー達もまた、俺達と同じく短期間でメインダンジョンを駆け上がっている、ちょっとした有名人だ。それが合同するとなると、もう「目立たない」という方針そのものが無理だろう。


「細かいことは都度詰めるけど、とりあえず基本方針はこんな感じだ。皆、何か意見はあるか?」


「私は問題ない。困難に挑むことこそ本懐だからな」


「クロもいいニャ。深いところの方が美味しいサバ缶が手に入るニャ」


「珍しいものが沢山手に入りそうで、今から楽しみです!」


「そっかそっか。モブロー達はどうだ?」


「自分は勿論、オッケーッス!」


「私も平気。どんどん潜れるの、楽しいし」


「私も問題ありませんわ。神の威光を地の底深くまで伝えるのが、神官たる私の使命ですもの」


「ならそういうことで! じゃあ皆、改めて宜しく頼むぜ!」


「「「オー!」」」


 その声かけに、皆もまた答えてくれる。こうして新たなヒロイン二人のみならず、モブローまで仲間に、友になり、俺達は新たな冒険の一歩を踏み出すのだった。

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