19.我が君に忠誠を誓った日【マティアスルート SS】<済>※閲覧注意
今回も前回と同様です
目を覚ますと布か何かで目が覆われていて何も見えなかった。身動きも取れない。蓑虫みたいな状態で地面に転がされているようだ。上着の内ポケットに入っているいつも感じる杖の感触もない。内心舌打ちをする。
暫くの間拘束が緩まないかと身を捩ってみたが無駄であった。
これが馬鹿力のオスカーであれば拘束を無理やり解いただろうし、レオンハルトも同様だろう。魔法に大きく依存している今の自分の戦闘能力はゼロに等しい。
拘束を解くのは諦めたが目隠しはどうにかならないかと、首を動かして床に頭や顔をこすりつけた。暫くしたら、布がずれて視界が開いた。
どこかの狭い部屋のようである。奥の小さな窓から光が差し込んでいる。まだ日中帯みたいである。気を失っていた時間は思っているよりも短かったのかもしれない。
部屋の奥側には同じように手足を拘束されている少女と男の子が転がっていた。自分とは違って目と口は覆われていない。彼らは疲れているのか大人しくしている。
…もしかしたら追っている事件のビンゴかもしれない。状況は最悪ではあるが。
あたしは元々図書館の地下にいて、不穏な会話をしていたリベル伯爵が気になって追いかけてきた。念のために図書館地下にはレオに居場所が分かるよう合図などは残した。彼ならいつになるかは分からないが、間違いなくここに辿り着くだろう。
さぁ、どうしたものかしら。考えあぐねてはいるが実際自分にできる事がこの状況ではない。入口が見えるよう体を動かして大人しくすることにした。
暫くすると扉が開き、ガタイのいい男たちが三人入ってきた。ごろつきみたいである。転がったまま睨みつけていると、男たちはヒューっと口笛を吹いてニヤニヤと笑っている。
「威勢のいい坊ちゃんだ。お陰で目標数達成させてくれて感謝しているぜ」
口髭のある男がそばに来て笑った。リーダー格もしれない。
その男の横に立っている男達は嘗め回すような視線であたしを見ている。下卑た視線に吐き気がする。この視線の意味は知っている。性的に欲情している目だ。
「ひっ、ひっ、ひっ。アニキぃ。今回の商品は命だけで指定がないっすよね?少しくらい遊んでもいいっすか?」
「…おめぇは本当にガキが好きだな」
「このくらいが最高なんっす」「俺も~」
「…夜までだ。好きにしろ。地下を使え」
それだけ言うとリーダー格の男は出て行った。
彼が出て行った後、担がれて扉を出た。目の前に礼拝堂が見える。礼拝堂の真ん中を横に突き進んで向かいの部屋に入って行った。地下へ続く階段が見え、そこを降りていく。
彼らは乱雑に部屋の中央に置かれた石の台の上に転がせた。大人しくやられるつもりもない。殺されないとは分かったから思い切り暴れて抵抗する。
「くそっ、この野郎」
暫く殴られて、蹴られたりした。流石にぐったりとして指一つ動かせなくなる。
下卑た笑みだけが地下に響き渡る。ナイフで切られていく服に、段々と心が冷えていく。絶望感が胸に押し寄せる。奴らを見たくなくて固く目を閉じた。心を無にして全ての刺激を遮断した。
「悪い、遅くなった」
レオの言葉に目を開ける。安心で涙が出てきた。
この日、ふざけて呼んでいた「我が君」が本物の「我が君」へと変わった。
【...to be continued】
性暴力反対!