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13. お茶会は戦場だったみたいです①

 お兄様の手に引かれてガーデンパーティー会場に着くと、既にたくさんの人たちがいた。

 大きめのパラソルが設置されたテーブルが六つ置かれている。既にまばらなグループになっており、立ち話しているものもテーブルに着いているものも様々であった。割と自由形式みたいである。


「二人はどこかしら?」

 まずは主役に挨拶でもするべきよね。そう思ったけどどこにいるかよく分からない。

「アルはあそこだよ。あの人だかりだね」

「え?」

 お兄様が指さす先を見る。確かにたくさんの令嬢たちが集まるグループが見えた。よく見るとアルが囲まれている。

「…す、すごいわ。さすが主役だわ。大人気ね」

 これは多分挨拶するのは無理だろう。あの集団をかき分けて挨拶する勇気を私は持ち合わせていない。


 一番大きな人だかりの正体がアルベルトだとはわかった。ということは、二番目に多い人だかりがレオンハルトなのかしら?

 二番目に多い集団の中心にいる少年を見ると黒髪ではなかった。

 よく見てみると、ホワイトブロンドの短髪に、キリッとした吊り目でルビーのような赤い綺麗な瞳の少年。あれは…

「あれはオスカーだよ。ナイト公爵家の長男だね。アルの側近になるのが決まった子だよ」

 私の視線に気づき、お兄様が教えてくれた。



 オスカー・ナイト。

 ナイト公爵家は王家の門番と言われていて、優秀な騎士を排出する騎士の名門の家系である。当主である父親は軍務大臣である。王国の騎士団管理を任されていて、騎士団自体は実力主義なので入団する平民も多い。ちなみに彼は三人兄弟の長男である。

 第一王子の側近にして、高位貴族とは思えない砕けた口調のワイルドイケメンで、唯一のまともな恋愛観の持ち主でめちゃくちゃ人気は高かった。

 ただし、彼は攻略対象者でない。本当に何故彼を対象にしてくれなかったのか…運営に悪意すら感じる。

 彼は空回っていたが婚約者ラブで、すれ違いで本人たちにとってはよくなかっただろうが、周りからはヤキモキしつつもその可愛らしいCPはゲームの中の癒し枠でもあった。

 ちなみにオスカーの騎士としての強さはレオに次いで強く、戦闘狂で剣術も大技魔法も得意である。


 彼は15歳の事件時にたまたまそばに居なかった。彼がいたらきっと変わっていただろうが…ゲームでのヒロインは彼がサブキャラであったから好感度を上げる事ができなかった。ただし、彼は絶対に重要な人物になるだろう。ぜひとも仲良くならないといけない。いざという時の武力枠として。



「オスカー様ですか…あら、お兄様は何故ご存知なのですか?」

 ゲーム知識で、アルベルトの側近はオスカー・ナイトであるのは知っていたが、まさかロバートが事前に知っているとは思わなかった。

「僕にも打診があったからね」

 サラリと答えるお兄様に、やはりかと納得する。

 筆頭公爵家であるのに何故側近をしていないのか、ゲームで少し疑問だったが本人から断ったみたいである。

 あれ?でも断れるものなのね…

「断られたのですか?」

「まあね。派閥と見られても困るからね。陛下もまだハッキリ決められないみたいだし、偏っても困るみたいだからちょうどよかったんじゃないかな」

「あぁ、それでですか」

 やはり貴族間では二人の王子の立ち位置でかなり揉めているみたいである。膠着状態の今、グラン家が動けば決定的になるのは間違いないだろう。


 少し歩くとお兄様は子息、令嬢たちと一緒に来ていた彼らのご両親である大人たちの集団に捕まり、挨拶に行ってしまった。

 とりあえず一人でレオ探しを続行する。

 暫くキョロキョロしていたら、ポツンと離れた所に姿を見つけた。ピンクゴールドの長い髪の少年と一緒の姿を。

「マティアス…」

 思わず小さく呟いてしまった。



 マティアス・ベイリー。

 外交を得意として、謀略のベイリー家と陰で言われている公爵家の長男。当主である父親は外務大臣である。

 ゲームでは腰よりも長いピンクゴールドの色の髪をゆるく結んでいたが、今はまだ胸元くらいまでの長さしかない。

 長いまつげに縁取られたアメジストを思わせる紫の瞳に、中世的な美しい容姿。ドレスを着ていたら間違いなくこの場で一番の美少女だろう。着こなしているスーツ姿であっても、そこらの少女たちよりはよっぽど美しいが。妖しげなまでの美しさと色気は十歳とは思えない。美の女神のようである。

 さすが、ゲーム上で屈指の美貌を誇る人気キャラ。そう、彼は攻略対象者の一人であり、今日一番のお目当ての人物である。


 彼こそが5年後の私の運命を握っている人物でもあるのだから。



 二人の近くにはチラチラとチャンスを窺っている令嬢たちもいるみたいだが、なかなか割り込めないみたいである。

 それもそのはずだ。何故かマティアスはレオンハルトの腕を取っていて、パッと見はカップルであった。あそこに入り込める勇者はなかなかいないだろう。

 どういう状況なのかは不明だが、他の令嬢たち同様に私もあの中に割いる勇気はない。仕方なくお兄様を探してみると既に令嬢たちに取り囲まれていた。


 …そうよね。

 お兄様もめちゃくちゃイケメンだものね。改めて人気の高さを認識する。

 度の過ぎたシスコンさえ目を瞑れば、家柄も容姿も能力も性格もトップクラスだろう。



 困ったわね…特に仲のいい友達もいないしボッチ確定だわ。

 仕方なく、誰も座っていないテーブルの席についた。すぐに給仕がお茶を入れてくれる。

 テーブルの上には色とりどりの美味しそうなお菓子が置かれている。適当に気になるお菓子をいくつ取り分けてみて、一つ口の中に運んでみた。

「美味しい〜っ」

 思わず声が出た。

 お口の中が幸せすぎる。甘すぎない丁度いい甘さに、ふわふわサクサクで…やっぱ王家のお抱えのパティシエはレベル高いわ…


 ニコニコと上機嫌に食べていると誰かが近づいてくる気配がした。すぐに目の前の椅子が引かれ、前に座ったのはマティアス・ベイリーであった。


「あら失礼、随分美味しそうに食べているじゃない」

 まさかお目当ての人物から声をかけられるとは思ってもみなかったが好機である。

 しかももうこの時点でオネエ言葉なのね…近くで見ると想像以上に顔が綺麗すぎるし、口調のお陰でむしろ一周回って親しみやすいわ。


「初めまして。グラン公爵家の長女、リアーナと申します」

 落ち着いて優雅に微笑んで挨拶をした。

「お初にお目にかかるわね。ベイリー公爵家の長男、マティアスよ。幻のドール姫と話させるなんて光栄よ」

「え?幻のドール姫?」

 聞きなれないワードに思わずオウム返しに聞き返してしまった。

 何それ?ゲーム上でも聞いた事ないんですけど。


「ふふ、あんたほとんど社交会に現れないじゃない。令嬢たちの間で出会えたら幸せになるってジンクスが流行っているみたいよ」

 引きこもり令嬢極めすぎじゃないかしら…そういえば陛下にも幻と言われていたなと思い出す。比喩でも何でもなく実際そういう評価であったみたいである。


「それは知らなかったわ。今後はそのあだ名を払拭できるようにもう少し参加しようかしら。宜しければマティアス様がお誘いして下さる?」

「あら、あたしで良ければぜひ。ふふ、やっぱり腐っても筆頭公爵家の令嬢なのね。あたしの言葉遣い、普通の令嬢だったらビックリすると思うけど普通なのね」


 マティアスがオネエ言葉を使うのは、男女問わず魅了してしまい、未遂ではあるが何度も襲われていた事が起因している。彼は他人と線を引くためにわざと道化を演じて、自らの価値を下げているのだ。

 実際にそれはこの世界では成功をしている。彼の独特な言葉遣いを前になかなか恋愛対象に見る事や話しにくさを感じて、周りは少し腫物にでも触れるように彼に接している。



「マティアス様であればどのような言葉遣いでも素敵だと思いますわよ」

「っぶ。やだ、あんたそれ本気で言っているの?」

「普通の方であれば下品にも捉えかねられませんけど…マティアス様は美しいですから。それくらい分かりやすく線引きされた方が虫もあまり寄らなくて便利なのではなくて?」

「へぇ、さすが我が君のお気に入りだけあるわ」

「え?お気に入り?」

 思わずまたオウム返しに聞き返してしまった。

 ゲーム上でマティアスが我が君と呼ぶのは一人だけである。でも…

「誰がだ」

 突然後ろから声がして振り向くとレオンハルトが立っていた。


 そう、マティアスが我が君と呼ぶのはレオンハルトだけであった。何故ならマティアスがレオンハルトの側近であるからである。

「あら、だって我が君が珍しく令嬢の家に立ち寄るから」

 家にレオが来たのはあの一度きりで、正門からでなく庭の裏からの侵入であったが何故だかマティアスは把握しているみたいである。


 レオンハルトは少し不機嫌そうにマティアスの隣に座った。そのせいで先程から感じる周りからの視線が更に厳しくなっていく。

 そりゃこんなイケメン二人も揃えばお近づきになりたいものよね…

うっとりする笑顔で笑うマティアスと、無表情だけど整っているレオンハルト、こんなにも絵になる二人は他にいないだろう。



「何で知っているんだ…ってマティに言っても無駄か。別にたまたま通り道だから寄っただけだよ」

「ふーん…まぁ、今日はそういう事にしておいてあげるわ。それにしてもこの子本当に面白いわね。あたしも気に入っちゃったわ」

 顔の横で手をひらひらと振って、艶やかに私に向かって微笑むマティアスは美しすぎる。男とか女とかそんなのどうでもよくなるくらいには、性別の壁を突き抜けられるその美しい顔で真っ直ぐ見つめられると流石に少し照れてしまう。

「…物珍しいだけでしょうし、あまりからかわないで下さいませ。遅れたけどレオ、お誕生日おめでとう。受付で渡したプレゼント気に入るか分からないけど良かったら使って」

 

 今日の誕生日の為にそれぞれに誕生日プレゼントを用意した。

 正直十歳の子供に贈る物なんてよくわからなかったが、お兄様の勧めで呼び寄せた商人から二人の瞳の色とお揃いのガラスペンをそれぞれ購入した。

 今回購入のガラスペンはただのガラスペンでなく、魔道具の方のガラスペンである。ガラスペンなので見た目がガラスで美しいのは勿論だが、魔法陣が彫られている為インク不要なので持ち運びもできる優れものである。リアタタール王国ではテーレ共和国と違って魔道具師がまだまだ少ないので、それなりにお高い商品ではある。


「そうか、あとで見てみる」

「ふーん」

 また少しニヤニヤと笑うマティアスに、レオンハルトは舌打ちをして軽く睨む。


 なんだか微笑ましい光景である。ゲーム上でのマティアスとレオンハルトの仲はここまで気さくなものではなかった。マティアスはレオンハルトに心酔しており、仲のいい友人というよりは忠実な従者であり信者であった。

 

 …今はこうでも三年後の学園では変わるという事なのかしら…?レオを孤独にしない為にもマティアスの存在は重要だろう。

 二人の仲がこのままの気さくな仲のままでいるのはどうすればいいのかしら?



「ねぇ、あんた」

「リアーナですわ」

 反射的に訂正した私に、マティアスは少し眉を下げて呆れたような表情で見る。

「知っているわよ、お馬鹿ね。レオには呼び捨てで敬語もつけないならあたしにもそうして?マティって 呼んでもいいわよ。よろしくね」

「分かったわ。マティ、此方こそよろしくね」

 友達の友達=友達論状態ではあるが。仲良くなりたかったんだし、何故気に入られたかはよく分からないけどラッキーである。


 ゲームでもリアーナはマティなんて呼んだ事なかったけど…シナリオが早速変わって良い兆候だわと思えばいいのかしら。



「やぁ、リア」

 考え込んでいると声がした。

 振り向くと大勢の令嬢を引き連れたアルベルトが立っていた。どの令嬢たちも笑顔であるのに、その笑顔がとても怖い。中には隠すこともなく不機嫌そうに睨みつけている令嬢もいる。

「…ごきげんよう、アル。挨拶が遅れて申し訳なかったわ。お誕生日おめでとう」

「ありがとう。来てくれて嬉しいよ。レオたちも…って」

 そのまますぐに席を外してしまうレオンハルトに、アルベルトは少しだけ寂しそうにため息をついた。

「あら、アル。お誕生日おめでとう。レオが行っちゃったしあたしも失礼するわね。それじゃ、またね~」

 レオンハルトを追うようにマティアスも去って行ってしまった。


「話し中だったのに邪魔したかな?」

「もう終わっていたところだから大丈夫よ。どうぞ」

 にこやかにアルに椅子を勧めた。

 アルベルトが座った途端、他の令嬢たちも恐らく高位順に次々と座り始めた。先程までガラガラだった席は満席どころか、立ったままの令嬢もいるほどの人気のテーブルに生まれ変わった。


「みんなに紹介するよ。グラン公爵家のリアーナだ」

「皆様、ごきげんよう。ご紹介に預かりましたグラン公爵家のリアーナと申します。お恥ずかしながらあまりお茶会など出た事がなくて…これを機に仲良くして頂けたら嬉しいですわ」

 優雅に微笑んでみせたが、内心心臓バクバクである。ここまでアウェーな状況は初めての経験である。


「リアーナ様、初めまして。ブラック公爵家のマリアンヌと申しますわ。叔母様が王妃だったから幼い時からアルたちとは仲良しなの。よろしくね」

 アルの隣に座りにこやかに微笑んで、最初に挨拶してきたのはマリアンヌであった。

要約すれば『私の方が昔から知っていて仲良しよ』アピールだろう。分かりやすすぎる牽制である。



 マリアンヌ・ブラック。

 ブラック公爵家の令嬢で、一つ上に兄がいる。父親は魔法大臣。特殊魔法の創作や、魔法研究で有名な家系である。攻略対象者のルカの親戚筋でもある。

 そして彼女が王子たちのルート上での悪役令嬢である。彼女ももちろん有力な婚約者候補の一人ではあるが、一つ下であるので学園では二学年になってから会う事になる。

 ストレートロングの黒髪に前髪ぱっつんにきつい釣り気味で細い紫の瞳、9歳にてこの貫禄は大物である。アルがいなければきっと遠慮なく睨みつけてきていただろう。



「…ごきげんよう。先程はお兄様とお話をしていたわね。わたくしは妹のグレース・ベイリーですわ」

 次に口を開いたのはベイリー公爵家の令嬢であり、マティアスの妹であるグレースであった。此方は不機嫌さを全く隠そうとしない態度である。



 グレース・ベイリー。

 マティアスの妹で、彼のルートの最大重要人物であり、王子たちのルートでの悪役令嬢の一人でもある。彼女も一つ下であり、マリアンヌとは仲の良い友人でよく共に行動をしている。

 銀髪のドリルのような縦ロールのツインテールに、灰色の大きな瞳。マティアスとは全く似ていないが、父親であるベイリー公爵にはそっくりである。ちなみにマティアスは亡くなった夫人にそっくりである。

 マティアスルートの最重要キーパーソンであると同時に、暴走事件時の首謀者に近い立ち位置である。

彼女とはマティアスの仲は必ず取り持たないといけない。



 この後も次々と令嬢たちが名乗っていく。みんな敵意を隠さないせいで、とても混沌としたお茶会になっている。

 既に飲んでいるお茶の味もきっと美味しいのだろうがもうよくわからない。

 一通りの自己紹介が終わると、自分の領地や最近買ったものの自慢大会へと移って行った。それをニコニコと相槌を打って聞いているアルの優しさに感動しつつも、あまりに興味のない話題に眠気が襲ってくる。日差しも心地よいし、ある程度の満腹感で仕方ないといえば仕方ない。


 欠伸をかみ殺して涙目になっていると、それに気づいたアルと目が合った。クスっといたずらっ子のように目を細めている。

 そんな私たちの様子に気づき、令嬢たちが更にイライラしている。

「あ」

 お茶を飲んでいた手が当たり、眠かったせいで反応も遅れてカップが落としてしまった。スカートの上に置いていたハンカチに少しだけ飛沫がかかってしまっている。

「リア、大丈夫?」

「ええ、大丈夫だけど…ちょっとハンカチを汚したから洗ってくるわ」

 ちょうどよかったと思いつつ、席を立った。あのままあそこにいたら眠ってしまいそうだし…



 眠気を覚まそうと思い、少し裏の方に向かって歩いて行った。


やっと他のヒーローキャラも出せたー。

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