9.呪われた王国の行く末【アルベルトルート/戦争編】〈済〉
グッドエンドがグッドエンドじゃない件について
「全ての罪を洗い流す光の柱、怒りと共に裁き降臨せよ《天裁/ジェネシス》」
虹色の光がプリズムにように辺り一面に広がる。
アリアとアルベルトの目の前に立ちはだかっていたフォンレム帝国、王太子であるヴィンセント・フォンレムが致命傷を負い、そのまま全軍撤退して行った。
撤退して姿が小さくなって行く帝国軍の後ろ姿。
勝ったという余韻に浸りながら、私とアルベルトは横並びでその光景を眺めていた。
思い返せばたくさんの命が失われた。
たくさんの犠牲の上に漸く掴んだ勝利。
「ねぇ、アリア」
ずっと聞きたかった、私を呼ぶ甘い声。
隣を見上げると、微笑むアルベルトと目が合った。その瞳は甘く、熱を帯びていて。
彼の瞳に映る私の瞳もまた、きっと同じ熱を帯びている。
言葉にしなくても、彼の気持ちと私の気持ちが繋がっているというのを感じる。
「愛しているよ、アリア。共にこの国を立て直してくれるかい?」
【▶はい】【いいえ】
私は頬を赤らめて、彼の言葉にすぐに頷いた。
私たちの関係はずっと曖昧で言葉にされた事はなかったから。
それでも彼の私の見る熱を帯びた優しい目、その隠された気持ちを信じてここまできた。
改めて言葉にされると、とても心が満たされていく。
「っ、ゴボッ…」
アルベルトの体が止まったと同時に胸の辺りに貫かれた剣先が見えた。胸を中心にどんどんと血が滲んでいき広がっていく。
アルベルトの体はそのままゆっくり前に倒れた。
「いやあああああああああああああああああああああああ」
私の叫び声が辺りに響き渡った。
いつの間にか彼の後ろにはロバート・グランが立っている。
彼の血走った目はまともな人間の表情ではない。
すぐに駆け寄ってしゃがみこみ、倒れこんだアルベルトの体を起こす。私の膝の上で苦しそうな彼と目が合った。
「ごめん、アリア…君を一生愛している…」
そのまま閉じられた瞳は永遠に開くことが叶わなかった。
【グッド END】