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お買い物にいこう!②

 ロンが着替えを入れてくれた紙袋はまだ大活躍していた。洗い替え用の服をいくつかゆずってくれたり、かばんを貸そうとしてくれたりと、なにかと気にかけてくれていたカレンはハタと合点がいった顔をする。


「そっか、今日は給料日! ジェーンもついにお給料もらえたのね!」

「はい! 給料明細もらいました。これでもうみんなの手をわずらわせることはありません!」


 ジェーンはしおり代わりにしていた水色と茶色の封筒を掲げてみせる。水色が給料明細で、茶色は本採用を結んだ契約書が入っている。

 先週の休みにシェアハウスを訪れたロンから本採用の話をされ、その足で銀行に口座を開きにいってきた。記憶喪失となってはじめて自由にできるお金が、すでに振り込まれているはずだ。

 ルークが笑顔と拍手でお祝いしてくれる。


「よかったっス! これで安心できるっスね。特にあの独創性あふれる弁当を食べなくていいという意味で」

「味は悪くなかったわよ、うん。見た目がね……」

「なんかすみません。私のせいで……」


 三者三様、開けてびっくりディノ弁当を振り返り、しばし遠い目をする。何度も文句を言うのは気が引けて、遠慮したみんなの態度を好評と受け取ったのか、ディノの缶詰めシリーズは最後までつづいた。


「なんだ、あんたら。全員黙りこくって固まって」


 その時、ダイニングに入ってきたのはディノだった。ジェーンは我に返り、扉に目をやったが慌てて逸らす。

 ディノは半裸だった。風呂に入ってきたらしく、濡れた黒髪にタオルを引っかけハーフパンツ姿でキッチンに向かう。

 一瞬だったが、隆起した二の腕と引き締まった腰を見てしまった。やたら熱くなる頬をジェーンは手で押さえる。こんな時に限って、ゴミ袋からかばってくれた力強さやぬくもり、間近で感じた体格差がよみがえってきた。


「ディノの弁当が食べられなくなるから残念って話をしてたんスよ」


 ルークは半裸には触れず、へらりと笑って嫌みを飛ばす。

 ルームシェア生活をしていれば男性陣の上裸など見慣れるということか。カレンも平然としていた。だんだん意識している自分が恥ずかしくなってきて、ジェーンは思いきって顔を上げた。

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