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女帝の黒い噂①

「思ったんだが、今のガーデンは雨天に弱い。晴れの時しか満足に遊べない遊具ばかりだからな」

「確かに。お客さんの数も目に見えて減りますね」


 レイジの指摘にクリスもうなずく。ジェーンは毎朝、正門で見かける園の模型を思い浮かべた。森の迷路や花家はないえの小道散策、ボート乗りなど、屋外施設が目立っている。


「まあウチがガーデンだから当たり前っちゃあ当たり前なんだが。でも俺は思いきって屋内施設を提案しようと思う!」


 いつになく背筋を伸ばして、はっきりと目を開き宣言したレイジに、ジェーンは拍手で賛同する。こんなに覚醒したレイジははじめて見た。


「わー! 楽しそうです! どんな遊具にするんですか?」

「それは今から考える!」


 レイジが堂々とのたまったとたん、クリスの首がガクッと落ちた。重そうな頭を抱え起こして、クリスは引きつった笑みを浮かべる。


「その企画書の提出期限っていつでしたっけ」

「三月末だ。約一ヶ月後だな」

「今から具体案練って試作創って、試行錯誤するとなるとかなりきついですよ。僕には通常業務があるし、ジェーンは……」


 不安げな視線をジェーンに送って、クリスは先の言葉をにごす。

 確かにアナベラに目をつけられ、まともな仕事がないのは褒められた状況ではない。だが好都合とも言えた。


「だいじょうぶです。午後は雑用の合間に抜けてこられると思います」

「いや、それはほどほどにしとけ。女帝はお前が開発に携わってるって知ったら怒り狂うぞ」


 レイジは渋い顔で難色を示す。クリスを見れば同じように固い表情をしていた。

 ふたりの先輩の間には不穏な空気が流れている。それはこれまでアナベラから感じた厳しさや意地悪よりも重く、肌にまとわりつくものだった。

 ジェーンは本能が鳴らす警鐘に戸惑いながら、おそるおそる尋ねる。


「あの、女帝ってアナベラ部長のことですよね? なぜあの人はそこまで私を、その、嫌うのでしょうか……?」


 レイジとクリスは視線を交わした。それにどんな意味があったのか、ジェーンには読み取れない。だが、ふたりの目には迷いが浮かんでいるようだった。

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